2018年7月6日、東京で「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative:JCI)」が発足しました。これは、地球温暖化防止に向けた新しい世界の約束「パリ協定」が、2015年に成立したことを受け、日本の企業や自治体、NGO(民間団体)がネットワークをつくり、自主的にその協定の実現を目指す意思を示したものです。アメリカではすでに、トランプ政権のパリ協定離脱方針を受け、同様のネットワーク組織「We Are Still In」が誕生。日本でも今後、こうした国家政府以外の主体が、国際社会の中で温暖化の防止に向け、どのような役割を果たしてゆくのかが、注目されています。
「パリ協定」の実現に向けて
地球温暖化による深刻な影響を回避するため、世界の平均気温上昇を2度未満(できれば1.5度未満)」に抑えること。そして、21世紀後半には、世界全体で、人間活動による温室効果ガスの排出を実質的にゼロにしていくことを掲げた「パリ協定」。 しかし、その合意が実現したのも束の間、アメリカ合衆国で成立したトランプ政権は、パリ協定からの離脱を表明しました。 しかし、アメリカ国内ではこの連邦政府の動きに対し、企業や州政府や市町村などの自治体、大学などの学術機関、環境保全などに取り組むNGO(民間団体)は、2017年、ネットワーク組織「We Are Still In」を設立。 地方自治体や民間の立場から、自主的に「パリ協定」の実現を目指す強い意思を示しました。 こうした動きを受け、各国でも同様に、国家政府以外の多様なアクター(非国家アクター)による横断的な組織が設立されようとしています。 そして、国際的なその動きの先陣をきる形で、2018年7月6日、日本で「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative:JCI)」が発足しました。 これは、「設立宣言」に賛同する企業、自治体など100を超える主体が構成するネットワーク組織で、脱炭素化をめざす世界の動きに日本からも参加し、行動する意思を示すものです。
環境問題から社会・経済の問題への拡大を受けて
この「気候変動イニシアティブ」に、業界の壁を越えて、国内の大手企業を含む多くの企業が参加の意思を示した背景には、地球温暖化の進行がビジネスの世界にもすでに大きな影響を及ぼし始めている現状があります。 また一方で、「パリ協定」がめざす化石燃料に頼らない脱炭素社会への転換が、新たな成長と発展の機会を生み出す、という認識が確かなものになりつつあることも、大きな理由の一つです。 2018年7月6日に東京の日本プレスセンタービルで開催された設立記者会見では、その発起人や参加企業から、より多くの国内企業・自治体などの参加を呼び掛けるメッセージが発せられ、ネットワークの拡大を目指すことを発表。 さらに環境省と外務省からも政府として、パリ協定の実現に向けた民間の協力と取り組みが必須であること、そこに向けた期待が述べられました。
今後の取り組みについて
「気候変動イニシアティブ」では、今後の活動として、2018年9月にアメリカのサンフランシスコで開催される、企業、自治体、NGOなどによる世界的なサミット「グローバルクライメートアクションサミット(GCAS)」への参加を予定。 さらに10月12日には、東京で「日本気候変動アクションサミット」を開催し、日本国内でも多様な主体が「パリ協定」の実現に向けた取り組みを活性化していけるように、活動を行なってゆきます。 このネットワークの設立に参画したWWFジャパンでは今後、CDPジャパン、公益財団法人自然エネルギー財団と共に、日本国内における地球温暖化防止の取り組みの一環として、事務局の運営を担い、活動を支援してゆきます。