アメリカ中央情報局(CIA)のジョン・ブレナン前長官が5月23日、下院情報特別委員会でロシア政府が大統領選に干渉した疑惑をめぐる調査に関する公聴会で証言し、トランプ陣営がロシア政府関係者と接触していた「十分な根拠」があると認めた。
ブレナン氏によると、トランプ陣営とロシア政府当局者のやり取りを示す、機密情報を目にしたことがあるという。そのためアメリカ連邦捜査局(FBI)が現在進めている、トランプ陣営とロシアの共謀の有無についての調査が必要だと、強く思うに至ったという。
「ロシア政府当局者と、トランプ選挙陣営関係者のアメリカ人が接触し連絡し合っていたという、様々な情報・機密情報を知ることとなった」と、ブレナン氏は証言した。ブレナン氏は1月20日にCIA長官を退任するより以前の段階で、アメリカ側が意識していたのかはともかく、ロシア側の「思うとおりに操られて」いたのか「白黒をつける必要がある」と考えるようになったという。
トランプ陣営がロシア政府と共謀していた疑惑に関してブレナン氏は、真偽は明らかではないと前置きした上で「様々な情報・機密情報から判断すると、FBIがさらに捜査する必要があると見なすのに十分な根拠があった。アメリカ国民が積極的にロシア政府当局者と共謀していたのかをはっきりさせるためだ」と証言した。
ブレナン長官が下院情報特別委員会で証言したのは、共和党議員の要請を受けたことによる。トランプ陣営がロシア政府と共謀して、トランプ候補が2016年の大統領選挙で勝利する可能性を高めたという「証拠」を出すよう求められた。ブレナン氏は、慎重に言葉を選びながら、CIAのトップとして自分が扱ったのは証拠ではなく機密情報で、機密情報から判断すると、さらに調査する必要があると考える十分な理由があるとの結論に至ったと述べた。
トランプ陣営とロシア政府当局者との不自然なやり取りについてブレナン氏が証言した内容は、一連の報道内容と一致している。カーター・ペイジ、ロジャー・ストーン、ポール・マナフォート、マイケル・フリン各氏など、元トランプ陣営の人物を集中的に扱う報道が相次いでいる。ブレナン氏は、機密レベルの高さを理由に、ロシア政府当局者との接触があったトランプ陣営関係者の名前を公表することは拒んだ。
アメリカの各情報機関が協力して調査報告書を出すにあたって、ブレナン氏はCIA長官を退任する前、主要な役割を果たした。ロシア政府がトランプ候補を勝たせるため、昨年の大統領選挙に干渉したと非難する内容だった。1月、トランプ大統領が就任する数日前に調査報告書の公開版が発表されたが、トランプ陣営とロシアとの共謀の有無については一切触れられていない。複数の情報機関のトップがトランプ大統領に調査結果の概要を説明したが、ブレナン前長官もその1人だった。CIA、国家情報長官室、FBIの同意を得たものだ。さらに、俗に「8人のギャング達」といわれる、極秘情報にアクセスする権限を持つ議員たちに対しても、ブレナン前長官は概要説明をした。
またブレナン氏は2016年夏、大統領選挙に介入しようとするロシアの動きを初めて知ったとき、ロシア連邦保安局(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ長官に抗議したと述べた。さらにボルトニコフ長官に対して、ロシアの動きはアメリカとの関係を改善する機会を損なうものだと警告したという。「この件でロシア側に揺さぶりをかけたのは、アメリカ政府高官としては私が最初だったはずです」とブレナン前長官は、2016年夏のボルトニコフ長官との電話会談を引き合いに出し下院で証言した。ボルトニコフFSB長官は、「疑惑は真実でないと答えたが、警告内容をロシアのウラジミール・プーチン大統領に伝える」と返答したという。
CIAで25年勤務したブレナン氏は、トランプ氏を厳しく批判する人物の1人として知られる。トランプ氏が情報機関をナチス・ドイツになぞらえたとき、CIA長官在任時に「不愉快だ」と発言している。トランプ氏は1月20日の就任翌日にCIA本部を訪れ、前日の就任式に多くの出席者が集まったと自慢した。ニック・シャピロ前CIA副長官によると、ブレナン氏はその日の訓示の中で、トランプ大統領は「自らの自己顕示欲の高さを恥じるべきだ」と語ったという。
23日の聴聞会は下院情報委員会が進めている、ロシアの選挙介入とトランプ陣営との共謀疑惑についての調査の一環だ。上院とFBIもそれぞれ調査を進めている。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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