「永遠の5歳児」演じ続けて26年。ワンワンに飽きない理由は?【いないいないばあっ!】

64歳のチョーさんが「永遠の5歳児」ワンワンをどんな思いで演じているのか。聞いてみました。
Open Image Modal
東京・渋谷のNHK放送センターで取材に応じるチョーさん(2022年5月20日撮影)
安藤健二・ハフポスト日本版

「これはやってみないとわかんないんですよね〜〜。心のスイッチが変わるんです」

目の前の初老の男性は、イタズラっぽい笑みを浮かべて少年のように笑いました。NHK Eテレの赤ちゃん向け番組『いないいないばあっ!』で、放送開始から26年にわたってワンワンを演じる俳優・チョーさんです。ワンワンを演じる上での「奥深い」面白さが何かを聞いたところ、返ってきたのがこの言葉でした。

コロナ禍で苦労しながら育児をする保護者へのメッセージ」を聞いたインタビュー前編に続いて、64歳のチョーさんが「永遠の5歳児」であるワンワンをどんな思いで演じているか。いつまで演じていきたいか。単刀直入に聞いてみました。

 

■「キャラクターを膨らませていったら26年経った」

――0〜2歳児を対象とした赤ちゃん向け番組って、それまで日本では例がなかったそうですが、ワンワンを演じる上で最初は模索してましたか?

 いや、僕自身はそんなに模索はしなかったですね。いろんなことで遊べばいい。で、やっていくうちに、「こういうことやったらもっと面白いですよね」「こういうのもやりたいんですけど」ってスタッフの皆さんにも言うと、「じゃあそれもやってみようか」と取り入れてくださるんですよ。

だから、それはすごく楽しいですね。与えられたものを遊ぶだけじゃなく、自分も一緒になって「こういうのやったらどうですか?」とか、「こういう歌つくったらどうですか?」とか、アイデアを一緒になって膨らましていく。ワンワンのキャラクターを膨らませていったら26年経ったって感じですね。

――さまざまな遊びを考えて膨らませていった結果、どんどんワンワンの派生キャラが生まれたと?

 そうです。だから、パクパクさんとパク子さんもそう。ワンワンもいろんなキャラクターになりました。スーパーワン、犬山ワン太郎、旅がらすワン太郎……。いろんなキャラクターのワンワンがいる。場合によって、違ったワンワンになって遊んでるんです。

いろんなシチュエーションの中で、キャラクターを膨らませて遊びができる。ロケに行ってもいろんなパターンでいろいろ遊べる。「じゃあ今度はこういうふうにやってみようか」とかいう話も膨らんでいく。そういうのが楽しいですね。

――なるほど。チョーさんご自身が遊びながら番組を楽しんで演じている。それがいい番組につながっていくんですね。

そうですね。だからこそ26年やっていても飽きない。

 

■「5歳児のように何かをしなきゃいけない」とか縛りがあるわけじゃない

Open Image Modal
取材に応じるチョーさん(2022年5月20日撮影)
安藤健二・ハフポスト日本版

――チョーさんの中で26年前の最初のころのワンワンと今では、だいぶキャラクターが違ってますか?

自分が臨んでいるスタンスは全然変わってないと思います。「ひたすら遊ぶ」っていうイメージがあったんで。子どもと一緒になって遊ぶ。

――ワンワンを見ていて、お茶目な近所のおじいさんみたいな印象を受けるという声もありました。

近所のおじいさん(笑)。ワンワンは永遠の5歳ですよ。

 ――ワンワンのキャラ設定はカッチリ決まってるんでしょうか?

モヤッとしてるんですよ。そこがいいんです。型にはめちゃうと、もう演じる幅が決まっちゃうじゃないですか。決まらないところが僕は好きなんです。5歳児設定っていうふうに言われたら、それはそれでいいんですよ。でも「5歳児のように何かをしなきゃいけない」とか縛りがあるわけじゃないんです。

――ワンワンのキャラクターがカチッと決まってないからこそ自由にできる。

いわゆる「ワンワン人」ですね(笑)。犬だけど、ワンワンという種族。年齢もよくわからない。一緒になって子どもたちやパパやママと遊ぶ人「ワンワンです」っていう感じです。

 

■「演らせていただけるなら、一生続けていきたい」

――現在、チョーさんは64歳ですが「チョーさんにずっとワンワンを演じて欲しいけどいつまで続けてくれるんだろう?」と心配する声も耳にします。

 それ、毎年のように言われます(笑) 心配してくださって、本当に嬉しいです。

――チョーさんご自身としては、まだ全然続けていきたい? 

はい。演らせていただけるなら、一生続けていきたい想いです。もう絶対自分から「辞めます」とか言うのはやめようと思ってます。「チョーさん引退してください」って言われたら、もう仕方がないと思うだけで。

 ――『いないいないばあっ!』でのチョーさんは、『たんけんぼくのまち』とは違う形での出演ですが、寂しく思うことはないですか?

それはないですね。やること自体は、自分を表現するっていうことは同じなんで、寂しく思ってないです。顔を出さなくても、それはそれでもう全然OKです。これはすごく楽しいですよ。「ぜひやってください」って言いたいです、本当に。すんごい楽しい。「やってみないとわからないよ」っていうぐらい。ワンワンを演じるときは、体力的にはきついんですけども、きつくてもそれ以上に奥深いところがある。面白いですよ。

――どのへんが面白いんですか?

これはやってみないとわかんないんですよね〜〜。心のスイッチが変わるんです。

■「ワンワンとしては本当は、お宅に行って遊びたいぐらい」

Open Image Modal
取材に応じるチョーさん(2022年5月20日撮影)
安藤健二・ハフポスト日本版

 

――番組の視聴者の反応は、お便り以外ではなかなかつかみにくいかと思いますが、どんなところで分かるんでしょうか?

それが分かるのは、やっぱり(ステージ公演の)「ワンワンわんだーらんど」ですね。その瞬間のパパさん、ママさんの家族の反応を見ながらやってるので。こんな感じでのってくるなとか。このときの表情とか。中にはコスプレしていらっしゃる子もいてね。

「ジャンジャン人気あるじゃん」とか「みんな家族になってコロバウの格好してくるんだ。かわいいな」とか。パパさんやママさんが自分で衣装を作ってくるわけですからね。そういう一体感の中で「みんなで遊びにこよう」っていう熱量を感じるわけですよ。

 

――我が家もそうなのですが、育児中で家事やテレワークで忙しいときに「ちょっと『いないいないばあっ!』見てて」というケースはあると思います。コロナ禍で在宅ワークの方が増えたから、育児における『いないいないばあっ!』の必要性って前よりもさらに高まっているのでは? 

いや、もう本当は、パパさん、ママさんと一緒になって、親子で触れあいながら番組を見ていただきたいんですけどね。だけど、それで家事や仕事が助かっているんだったら、どういう形でもお子さんと一緒に、精一杯遊びますよ。

ワンワンとしては本当は、お宅に行って遊びたいぐらいなんです。家まで行って、一緒に遊びたいんだけど、それができないから、テレビの中から「一緒に遊ぼうね」と呼びかけて精一杯に遊ぶ。それだけです。