中国経済は安定を持続しているが、地方財政の回復が予想比下振れ~日中関係改善が進む中、日本企業の悩みはメディア報道の中国経済悲観論~<北京・広州・上海出張報告>

本年10月以降、日中関係改善が加速し、日本企業のビジネスチャンスは一段と拡大しようとしているが…

◇ 第3四半期の実質成長率は前年比+6.9%と、成長率の緩やかな減速傾向が持続。GDP成長率の中味をコンポーネント別にみると、外需、固定資産投資が弱いながら、そのマイナス要因を消費の堅調が支える形で、経済の安定を保っている。

◇ 輸出の減少傾向の要因は、第1に、日米欧、アジア等主要輸出先相手国の内需の弱さ、第2に、人民元高による輸出競争力の低下と見られている。

◇ 人民元の実質実効為替レートを見れば、昨年の6月から本年6月までの1年間で15%強の元高になった。本年8月の人民元レート基準値算定方式の変更以降、元安になったが、その元安幅は1%程度に過ぎず、ごくわずかな変動にとどまっている。

◇ 固定資産投資の伸び率低下傾向が続いている要因は、第1に、過剰設備の削減や不良債権化した不動産投資の処理の継続であり、第2に地方財政の回復の遅れである。

◇ 地方政府で地方プロジェクトを推進しても、以前のような不正ルートからの収入増のメリットがなくなり、腐敗嫌疑リスクまで伴うため、たとえ資金調達難が解消しても、以前のような積極的な姿勢で地方政府関連プロジェクトを推進するインセンティブは生まれてこない構造が定着した。このため、今後は地方財政支出拡大による経済成長率押し上げの寄与度がこれまでの期待に比べて下振れすることが予想されている。

◇ GDPに占める製造業のウェイトが低下しても、サービス産業の急速な拡大が、都市部における雇用を創出し、所得を増大させ、消費の堅調な拡大を支えている。

◇ 消費全体の10%を占めるeコマースは前年比40%増で急拡大している。これは個人間の零細な取引を多く含むため、統計上の把握が極めて難しく、現時点では半分程度しか捕捉できていないと見られていることから、消費の実勢は統計以上に強い。

◇ 今年は中国の株価暴落や為替市場の混乱もあって、中国経済に関する日本のメディア報道が一段と悲観的になっているため、現地と本社の間の認識ギャップが拡大している。本年10月以降、日中関係改善が加速し、日本企業のビジネスチャンスが一段と拡大しようとしている現在、積極的に中国事業を展開したいと考えている日本企業の中国現地幹部にとって最大の悩みはメディア報道問題である。

◇ 8月に発表された国有企業改革に関する政府の基本方針は、党の指導の堅持、経営に対する政府の管理強化を強調している。これはあるべき改革の方向とは逆の方向に向かっていると受け止められ、エコノミスト、専門家の評価は「失望」で一致した。

全文はキヤノングローバル戦略研究所のHPよりご覧ください。