2016年の中国経済は安定を保持しながら緩やかに減速

成長率の3分の2が消費によって支えられる、消費主導の成長モデルへと転換が進んだ。
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◇ 2015年の実質GDP成長率は前年比+6.9%と、前年(同+7.3%)に比べて0.4%ポイントの下落となった。四半期別の推移を見ると、緩やかな減速傾向が続いている。実質成長率6.9%のコンポーネント別寄与度をみると、外需が-0.2%、投資が+2.5%にとどまっており、残りの4.6%は消費が支えた。成長率の3分の2が消費によって支えられる、消費主導の成長モデルへと転換が進んだ。

◇ 輸出は、2010年以降、長期的に伸び率鈍化・減少傾向が続いている。人民元の実質実効レートを見ると、8月の基準値変更以降も殆ど元安にはならず、今も過去最高の元高水準圏内とどまっている。これが中国の輸出競争力の低下をもたらしている。

◇ 固定資産投資は伸び率の鈍化傾向が続いている。その背景は、中央政府が「新常態」=ニューノーマルの基本方針を堅持し、過剰設備の削減と不良債権化している不動産開発投資案件の処理を推進し続けていることが主因である。

◇ 消費堅調の要因は経済のサービス化である。昨年のGDPに占めるサービス産業のウェイトは初めて5割を上回った。サービス産業の発展は、雇用創出と賃金上昇を通じて所得を押し上げ、消費を支える。これが現在の中国の成長の原動力である。15年の名目GDP成長率の寄与率を見ると、サービス産業が全体の約9割を占めた。

◇ 中国人民銀行が昨年10月24日に預金金利自由化の完成に合わせて預金・貸出基準金利と預金準備率を同時に引き下げたことを契機に元安期待が再燃した。人民銀行は根強い人民元売り圧力に対して、巨額の元買いドル売り介入を続けて立ち向かっているが、元売り圧力が衰える兆しは見られていない。外貨準備は11月以降3か月連続で月間約1千億ドルずつ減少し、本年1月末は3.23兆ドルまで減少している。

◇ 人民元レートの先行きを展望すれば、今後のリスク要因はドル高と輸出の減少である。今後、ドル高、輸出減少の持続、外貨準備の3兆ドル割れといったリスク要因がすべて揃う最悪ケースに陥れば、元売り圧力が一段と高まる可能性が高い。

◇ 大幅な元安を容認する場合には、現在の管理フロート制の下で大幅な元安に誘導するか、変動相場制に移行し、市場取引の中で人民元レートを決定する方法がある。大幅な元安は周辺国への悪影響が懸念される。

◇ 農民の都市住民化に伴う住宅需要の持続的増大という実需を考慮すれば、現在不動産の過剰在庫を抱える3~4級都市でも3~5年後には需給バランスが徐々に改善に向かう可能性が高く、数年以内にかなりの過剰在庫が消化されると見られている。

全文はキヤノングローバル戦略研究所のHPよりご覧ください。