中国共産党の序列9位という最高幹部だった周永康・前共産党中央政治局常務委員(71)が、汚職容疑で立件されることになった。習近平政権の反腐敗運動によって「常務委員経験者は汚職で摘発されない」という不文律が破られた形だ。周氏とはどんな人物なのか。
周氏は江蘇省出身。北京石油学院を卒業し、国内の油田の石油技師などを務めた後、1985年に党中央に引き上げられた。1996年に巨大国有企業、中国石油天然ガス集団(CNPC)の前身である中国石油天然ガス総公司の社長となり、「石油閥」の中心的存在として巨大な利権を握った。党中央政法委員会書記として中国の治安・司法部門の頂点にも立つなど、絶大な権力を手にしていた。
「上海閥」を率いる江沢民元国家主席に近く、石油業界で培った利権と人脈も背景に党中央で存在感を増していった。四川省トップの党委員会書記を経て、2002年に党政治局員に選出。公安相を兼務し、警察組織や国家安全省などへの影響力を確保した。
胡錦濤政権後期の07年党1中総会では、政治局常務委員(序列9位)に選ばれ最高指導部入り。警察、検察、裁判所を統括する党中央政法委員会書記を兼務し、司法部門トップにのし上がった。異例の昇進に関しては「石油マネーをばらまき出世に利用した」との声もささやかれ続けた。
(MSN産経ニュース「治安・司法部門に君臨、失脚の周永康氏 技術者から出世、薄氏とも親密」より 2014/07/30 09:56)
■汚職腐敗追放か、権力闘争か
暗雲が垂れ込めたのは、収賄罪などで無期懲役が確定した薄熙来・元重慶市党委書記の失脚だ。薄氏は、党の高級幹部の子弟グループ、いわゆる「太子党」の代表格の1人で、一時は最高指導部入りの可能性も指摘された。周氏は薄氏の失脚に猛反対し、胡錦濤・前国家主席や習国家主席の反発を招いた。周氏と薄氏は、2012年の習指導部発足を前に共謀し、クーデターを画策した疑惑も指摘されている。
中国では深刻化する党・政府幹部の汚職に対する国民の不満が高まっている。習指導部が周氏摘発に踏み切ったのは、「虎もハエも一網打尽にする」との公約を実行して「反腐敗」への強い決意を誇示しなければ、国内に不満が募り、権力基盤が揺るぎかねないという判断もあったとみられる。
(毎日新聞「中国:周永康氏を立件へ 保守派の重鎮、汚職容疑で」より 2014/07/29 21:54)
習指導部が周氏の捜査に踏み切ったのは反腐敗運動の一環だが、MSN産経ニュースは「周氏失脚劇は、汚職腐敗追放という名分の下、政敵を追い落とした権力闘争の色彩も濃い。これにより習主席への権力集中が進み、その対外強硬路線がさらに強化されることが案じられてならない」と報じている。
習指導部は、周氏を党籍剥奪といった厳しい処分にすることを検討しているという。
2007年、胡錦濤指導部が並んだ写真。周氏は一番左にいる Chinese communist party's new leadership team Hu Jintao (C) waves while others (L to R) Zhou Yongkang, Li Keqing, Li Changchun, Wen Jiabao, Wu Bangguo, Jia Qinglin, Xi Jinping and He Guoqiang applause as they meet with the press at the Great Hall of the People in Beijing, 22 October 2007. Chinese President Hu Jintao was named as head of the ruling Communist Party for a second term, an endorsement for him to lead the country for five more years. AFP PHOTO/TEH ENG KOON (Photo credit should read TEH ENG KOON/AFP/Getty Images)
■当局、周氏と家族から1兆5千億円相当の財産押収か
周氏は、国有企業トップを務めた経歴を利用して不正蓄財を重ねていったとされる。中国当局は、周氏本人と家族から900億元(約1兆5千億円)相当という莫大な財産を押収している模様だ。また、周氏の親族や側近ら300人以上が拘束されたという。
中国メディアによると、周氏の家族は、周氏の政治的な影響力を背景に石油、不動産、金融などの分野で事業を展開、巨額の利益を得ていた。周氏の息子は「違法経営」の疑いで逮捕が決まっており、周氏は収賄などの犯罪に問われる可能性がある。
(47NEWS「中国、1兆円相当の財産押収か 周氏家族から」より 2014/07/30 12:24)
周氏の実家は江蘇省無錫(ウーシー)にある。中国の高官が3月、周氏の疑惑について公の場で初めて言及して以来、その豪華な建物が話題となり、観光名所のようになっている。
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