最近の人民元と今後の展開(2018年2月号)~対韓国ウォン割安感縮小で元高圧力は低下:基礎研レター

一方、世界の外為市場の動きを見ると米ドルがほぼ全面安の展開となった。

1――1月の人民元の動き

1月の人民元の対米ドルレート(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は、米国では景気好調を背景に長期金利が上昇しドル高要因となったものの、中国で景気悪化懸念が後退したことや基準値設定方法が再変更されたこと、それにドイツ連銀が外貨準備に人民元を加えると発表したことなどが元高要因となり、1月末は前月末比3.4%上昇の同6.2935元で取引を終えた(図表-1)。

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17年10月に党大会を終えた中国では、その後の景気悪化懸念が根強かったが、18日に公表された10-12月期の国内総生産(GDP)が前年同期比6.8%増と好調だったことを受けて懸念は後退した。

また、基準値設定方法の再変更も元高要因となった。党大会開催を控えた17年5月、中国は基準値設定方法を変更し、「カウンターシクリカル要因」という相場安定装置を導入、ユーロや韓国ウォンが上昇する中で人民元は小幅な上昇に留まった(図表-2)。

しかし、党大会を終えた1月、中国は再び基準値設定方法を変更、以前の方法に戻すこととなった。そして、「最近の人民元と今後の展開(2018年1月号)」で指摘した「ユーロ高に加えて韓国ウォンなどアジア通貨が上昇して上限を突破するリスク」が現実のものとなった。

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一方、世界の外為市場の動きを見ると米ドルがほぼ全面安の展開となった。米国のセーフガード発動やムニューシン財務長官のドル安容認発言などを受けて保護主義懸念が高まったことが背景にある。

主要通貨ではユーロが前月末比3.7%上昇、日本円も同3.2%上昇した。新興国通貨を見ても、12月まで急伸していた韓国(ウォン)は同0.3%の小幅な上昇に留まったものの、ブラジル(レアル)が同4.7%上昇、タイ(バーツ)が同4.1%上昇、マレーシア(リンギット)が同3.8%上昇した(図表-3)。

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なお、1月は日本円が米ドルに対して上昇したものの、人民元はそれ以上に上昇したため、日本円に対する人民元レートは100日本円=5.76855元(1元=17.335円)と前月末比0.3%の元高・円安となった(図表-4)。

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2――今後の展開

さて、18年3月末までの予想期間内を考えると、米国では2月にFRB議長の議会証言や予算教書があり、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)では追加利上げが見込まれる。また、中国では、2月の春節(旧正月)連休を経て3月5日には18年の成長率目標などが決定される全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催される。

また、米中の経済金融環境を見ると、米国では景気拡大が持続しており、今後も段階的な追加利上げが見込まれることから米長期金利はじわじわ上昇してきている(図表-5)。

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他方、中国では17年10-12月期の国内総生産(GDP)が前年同期比6.8%増と好調を維持したものの、中国政府(含む中国人民銀行)が16年秋以降、住宅価格上昇の抑制に乗り出したため、住宅販売の伸びは鈍化し始めている(図表-6)。

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また、中国政府は党大会後、金融リスク抑制に本腰を入れ始めており、2月の消費者物価(3月9日公表)は前年の反動もあって3%前後まで上昇する可能性が高いことから、中国の長期金利は高止まりすると予想している(図表-5)。従って、米中の長期金利差は小幅な縮小に留まると見ている。

18年3月末に向けての見通しとしては、3月の全人代で決定される18年の成長率目標は「6.5%前後」に設定されると予想、中国政府は金融リスク抑制を重視してその「6.5%前後」に向けて景気は緩やかに減速して行くと見ていることに加えて、前述のとおり1月の人民元の上昇で韓国ウォンとの間にあった割安感が縮小したことから、当面の人民元レートは1米ドル=6.2元前後の上値をトライする可能性が残るものの、米国で追加利上げが実施された後の3月末には小緩む展開を予想している。なお、想定レンジは1米ドル=6.2~6.8元(1元=16.8~17.5円)とした。

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(2018年2月2日「基礎研レター」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

経済研究部 上席研究員