ウイグル独立運動とアルカイダを結ぶ点と線。中東問題に引きずり出される中国
中国・北京の自動車爆破事件をきっかけに、中国はパキスタンとの対テロ連携の強化を模索している。事件後、パキスタンの軍幹部が中国を訪問し、イスラム系武装勢力への対応策について協議を行った。
その背景には、新疆ウイグル自治区の独立運動が国際テロ組織アルカイダとの連携を深めているという現実がある。これは中東というやっかいな国際問題に中国が引きずり出されていることを意味しており、今後、国際政治にも大きく影響してくる可能性がある。
パキスタンはこれまで常に国際社会とテロ組織の板挟みにあってきた。パキスタン政府は米国と連携し、テロとの戦いを進める方針を明らかにしている。
だがパキスタン国内は、イスラム系国際テロ組織アルカイダの拠点となっており、パキスタン政府も手を出すことができない。パキスタン国内に対する米国の無人機攻撃という、国家主権を無視する行為についてパキスタン政府が黙認しているのはそのような事情があるからだ。
中国は表向き、パキスタンもテロの被害者であるとの立場を取っているが、今回の協議では、中国と国境を接する山岳地帯における監視を強化するよう、パキスタン政府に強く求めたものと考えられる。
実際、中国の新疆ウイグル自治区の反政府活動家がパキスタンやアフガニスタンで訓練を受けるというケースは増加している。またシリアの反政府勢力の中にアルカイダ系のグループが多数存在していることはよく知られているが、最近は新疆ウイグル自治区からやってきた兵士も増えているという。
新疆ウイグル自治区の独立運動がアルカイダと深く連携しているという事実が広がってきたことは、国際社会における大きな転換点となる可能性がある。それは、中東問題とは無縁であった中国の立ち位置の変化である。
これまで新疆ウイグル自治区の独立運動は、中国の人権弾圧に抗議する悲劇のヒーローという位置付けであった。だが彼等がアルカイダの一員ということになると、西側各国の対応は変わってくる可能性が高い。中国もテロ撲滅というお墨付きが得られれば、より徹底的な弾圧を加えることになるだろう。
だが一方で、独立運動がアルカイダとの連携を深めれば、中国も完全に国際テロの標的になってしまう。新疆ウイグル自治区の反政府勢力が、アルカイダの支援を受けて高度に武装する可能性も秘めている。そうなってしまうと、ロシアのように軍事力を使って徹底的に弾圧するという行為に進まざるを得なくなるが、多数の国内問題を抱える中国にとってその選択肢は何としても避けたいところである。
オバマ政権は、本音では中東問題からは手を引きたいと考えているが、中東問題を政治的駆け引きの材料に使いたい欧州各国の意向や、国内における中東利権を持つ勢力の影響などから、これらの問題に関与せざるを得ない状況が続いている。中国がこの問題に絡んでくることになれば、国際政治の力学はさらに複雑なものになってくるだろう。
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