新型コロナウイルスによる感染症が広がる中国では、外出が制限されている地域も多い。数億人が急に家に閉じこもって仕事をするようになり、リモートワークや学校の遠隔授業システムが注目されるようになったが、また別の分野で需要が生まれている。散髪だ。
■“街の理髪店全て休業”
国営新華社は「普段ならなんてことない散髪が、非常事態のせいで多くの中国人を困らせている」などとする文章を掲載。街の理髪店が全て臨時休業になり困ったという吉林省の男性の声などを紹介している。
しかし、こうしたピンチをチャンスに変えようとするのが中国の逞しいところ。中国はTikTokが生まれた国ということもあり、数十秒程度のショート動画が若い世代を中心に大流行しているが『自分で髪を切る方法』を紹介する動画が次々に投稿されている。
試しに筆者が中国のTikTok(抖音=ドウインという)で検索してみたところ、男女やそれぞれの年代別に向けた切り方の動画が数多く見つかった。なかには、理髪店を名乗るアカウントが櫛とバリカンを使った簡単な切り方を紹介しているものもあった。市販の薬剤を使って髪を染める方法をレクチャーするものもある。
こうした動画のおかげで「自分もいけるかも」と思った時に、欲しくなるのが専用の道具だ。新華社によると、中国の大手通販サイトではバリカンやカラーリング剤の売り上げが上昇しているという。
中国最大の通販プラットフォーム「天猫」でバリカンを探してみると、月の売り上げが数千台に及ぶ商品も目につく。
筆者が見た限り特に人気なのは69元(約1070円)の家庭用モデルで、月間15万台という売れ行きだ。購買者の口コミには「こういう時期なので早く送ってくれて助かる」「昨日注文して今日来てくれた、高評価」など、品質はもとより一刻も早く手に入れたいという感情がにじんでいる。
未だに終息時期の見えない新型コロナウイルスの感染拡大は、中国経済に深刻なダメージを与えるとみられる。一方で今回のように、多くの人が家に長く留まるという状況を逆手にとって、新たな商機をつかむ動きも生まれている。