中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は9月13日、遼寧省選出の代表選挙において票の買収行為があったとして、代表45人の当選無効とすると決定した。この問題をめぐって、遼寧省の人民代表大会(省人代、省の議会)の省代表(議員)617人のうち454人が不正に関与したとして、代表資格を失った。18日、BBC中国語版などが伝えた。
新華社通信によると、全人代の常任委員会は13日、2013年の代表選挙において賄賂で票を獲得したとして遼寧省選出の代表45人の当選無効を宣言。李建国副委員長は「新中国(中華人民共和国)の歴史上なかったことだ」と、汚職の深刻さを強調した。
遼寧省に割り当てられた全人代代表の定員は102人。このうち8人は全人代常務委員会の指定枠。残り94人は省人代の代表による投票で選出される。今回の贈収賄事件によって、その半数近くが代表資格を剥奪されたことになる。
遼寧省の代表選出をめぐっては、省人代の議員のうち523人が一連の不正に関与したとされる。このうち454人が辞職するなどして資格を失った。
この454人の中には江瑞・副省長など、遼寧省の副省長級の幹部6人も含まれている。買収行為にどう関与したかは伝えられていないが、省人代が全人代の代表を選ぶ際、45人から賄賂を受け取ったとされている。
今回の処分決定後、全人代の張徳江・常務委員長は「建国以来、初めて省レベルで起きた重大案件だ」と述べた。ただ、省以下の選挙ではこれまでにも選挙違反が発覚しており、今回も「氷山の一角」という声もあるようだ。
■遼寧省の汚職摘発、背景には共産党内の権力闘争?
李克強首相(左)と習近平・国家主席
今回の汚職摘発劇をめぐっては、共産党指導部内の権力闘争と関連しているのではと指摘する声も出ている。中国東北部の遼寧省は、李克強首相がかつての省のトップを務めた地。李氏は経済政策などをめぐり、最高権力者の習近平・国家主席と対立しているとされる。
一方で習氏が進める「反腐敗」政策の中で、これまでに遼寧省では多くの幹部を摘発された。汚職案件を担当する党中央規律検査委員会も、遼寧省に調査チームを14年、16年と続けて派遣している。
また、遼寧省の16年1~3月期の経済成長率は、前年同期比でマイナス1.3%。全国の省・自治区で唯一のマイナス成長だった。こうした低迷する省経済の背景には省幹部の腐敗があるとみて、中央政府が刷新を図ったとみられる。朝日新聞デジタルによると、摘発された幹部らには、李氏が遼寧省トップだった2004年~07年に、省や省都の瀋陽市で幹部を務めていた人物が多いという。
2017年の秋には中国共産党の指導部が入れ替わる5年に一度の党大会を控えている。習氏が李氏の周辺に打撃を与えることで、党内での影響力を低下させようとしているとの見方も出ている。