中国では、1970年代から集団生活する人々の衛生に対する意識の強化、生活レベルの向上及び衛生インフラが徐々に改善した。その結果、法的に報告される甲、乙類の伝染病発病率は著しく低下し、伝染病とされる疾病の全体像も全くと言って良いほど根本的に変化した。かつ、以前は頻度の高かった疾病の発病率も明らかに下がり、一部は完全に根絶された疾病もある。しかし、時間経過に伴い、新しいタイプの伝染病が現れている。
1949年以前は、伝染病は死亡の主因であり、総死亡人口の15%は伝染病が原因だった。しかし、中国で持続的に報告されていた18種の法定伝染病の年間発病率は、1970年から急速な低下傾向を示すようになった。全体的な調査や治療、予防法や予防接種等一連の措置が普及することにより、マラリア、麻疹、百日咳や赤痢等の伝染病はいずれも効果的にコントロールされるようになった。但し1990年以降は、報告された伝染病の年間発病率は変動傾向を見せている(リンク先の表1)。
ここ数年では、法定伝染病のうち、大多数の発病と死亡例はいずれも数種の主要な伝染病に集約され、報告数が比較的多い伝染病は結核、B型肝炎、梅毒、淋病等であった。中国で肺結核の報告発病率は全体的に上昇傾向を示し、1997~2002年の上昇率は緩やかであるが、2003年以降は一定の勢いで上昇し、2005年にピークに達し、現在に至ってもなお比較的高い水準を維持している。
また、中国は肝炎大国で、A、B、C、D、E5種のそれぞれの肝炎はいずれも流行しており、そのうちB型肝炎の患者が最も多い。B型肝炎ワクチンの推進・普及と衛生意識の強化に伴い、新しくB型肝炎に罹患する集団は低下し続けている。それでも毎年が感染している。2013年を見ると、B型肝炎の発病は125万例余りで、739人が死亡した。性感染症は中国でなお大きな社会問題の一つとなっており、急速な増加傾向をたどっている。
1970年代までに、性感染症は中国ですでにほぼ撲滅されていた。しかし、社会経済改革の進捗過程に伴って、また大量の流動人口から、性感染症は再び活発化し、かつ急速に増加している。今日では、淋病と梅毒はすでに中国法定報告伝染病のトップ5に入っている。中国で流行する寄生虫疾患も比較的多く、その流行の歴史は長い。ただし、1949年以降、住血吸虫症とマラリアの流行状況はある程度コントロールできるものとなった。
広東省は中国でのデング熱多発地区であり、発症例は中国の約80%以上をも占める。1990年~2010年まで、発症例は合計13,539例が報告されている。さらに2014年に広東省でデング熱の発症が突発的に再燃し、報告されたデング熱発症例は累計38,753例、そのうち重症例が20例、死亡例が6例あった。
中国は1985年にHIV感染の第一例が出現した後、流行が始まり、現在では中国31の省、市、自治区でいずれもHIV感染者が同定されている。2008年末まで、報告されたHIV感染者/エイズ患者の累計は276,335人、そのうちエイズ患者は82,322例あり、死亡は38,150例であった。その死亡率は比較的高く、報告死亡者数は中国のトップ5を占める。2008年から手足口病が法定上のC型伝染病に分類され、2010年までの3年間で、341万例余りの発病例が報告されており、そのうち死亡は1,384例あった。
21世紀でも、伝染病は依然として公衆衛生業務の重点課題であり、中国はウイルス性肝炎(特にB型)、肺結核、下痢、手足口病、エイズ等を伝染病防止・予防の重点疾患とするべきである。疫病状況のコントロールや監視を強化し、予防を中心に、治療をも心掛ける必要がある。
(2015年2月13日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)