中国で豪華な葬儀を行うことが禁止された。背景にある理由は何か――。
中国共産党と中央政府は党員に対し、豪華な葬式や墓を禁止する通知を出した。葬儀の規模や、お墓の規模に制限がかかることになる。党員が、死後に臓器を提供することも奨励する。時事ドットコムが報じた。
通知は「少数の党員や幹部が盛大な葬儀を利用して財物を集めたり、豪華な墓を建てたりして、党や政府のイメージを損なっている」と指摘。浪費のまん延を戒めた。
(時事ドットコム「死後は臓器提供を=党幹部に簡素な葬儀促す-中国」より 2013/12/20-06:16)
中国の新華社通信は、豪華な葬式を行うことが富を誇示する指標になっていると指摘。参列者からお金を集め高価な墓をたてることに、国民は不満を持っていると報じている。
特にひどい葬儀の例として、1万人が参列し、600万元(約100万ドル=約1億円)が使われた葬儀や、マーチング・バンドや車なども使って行われた3kmにわたる行列で交通渋滞を引き起こした葬儀などが報じられている。
なかには、香典の額によって、弔問者をランキングしていた葬儀もあるという。
メディアの調査により、会葬する人々に飲料水を提供していたのが商工業局の公用車であったことや、弔問者からの香典を金額によって“ランク付け”していた事実。さらには商工業局の下部組織に“香典を渡す時間帯と場所”を事前に告知していたことが次々と明らかになり、人民を呆れさせている。関係者の話によると、“香典の徴収”は同局局長の特権であり、商工業局の伝統として、以前から公然と行われていたらしい。
(サーチナ「【中国人民VS官僚】公私混同、母の葬式で“香典ランキング”」より 2009/05/27 06:58)
多額の香典を包むことは、中国の慣習の一つのようだ。シンガポールの日本語メディア、アジアエックスによると、中国では遺族に多額の香典を渡すことで「情がある人」だと思われるのだという。
習近平国家主席は就任以来、汚職摘発を強化。12月20日にも、汚職疑惑などで公安次官の取り調べが行われたと報じられた。
中国が摘発を強化するのは、汚職によって軍事費以上に「治安維持費」がかさんでいるためだとされる。筑波大学名誉教授の遠藤誉氏は、治安を維持するための組織の汚職がひどいため、中国国内で年間18万件もの暴動が起きていると指摘する。
「公安、検察、司法」を司る中共中央政法委員会は、治安維持を名目に長いこと「腐敗の温床」となってきた。たとえば2012年4月に北京にあるアメリカ大使館に逃亡した盲目の民主活動家・陳光誠の場合、彼一人を監視するために1年で6000万元(約9億円)の「治安維持費」が中央から出るので、「陳光誠経済圏」が公安側に出来上がるほどだった。もちろんそれらは全て公安のポケットの中に入っていく。
軍事費を上回る治安維持費は、こうして「腐敗の源流」となって取り締り関係者の財布を潤わせているのである。治安を維持するはずの「公安・検察・司法」による横暴と腐敗ゆえに、年間18万件もの暴動が起きている。本末転倒だ。そしてその暴動は中国共産党統治の根幹を揺るがせようとしているのである。
(レコードチャイナ「<遠藤誉が斬る>周永康の外堀いよいよ狭まる」より 2013/12/21 08:34)
このような汚職が進んだ現状を打破するために、習国家主席は「腐敗を根絶しなければ国が滅ぶ」として汚職撲滅キャンペーンを掲げた。
人口ピラミッドに従い、死亡者数が増えていることも、葬儀費用の上昇に拍車をかけ、中国国民の不満の1つにもなっている。
豪華すぎる葬儀の禁止が、腐敗防止にどのぐらい効果があるのか。トランスペアレンシー・インターナショナルが3日に公開した2013年度版の「世界腐敗認識指数」ランキングによると、中国のクリーンさは日本の14位に対し、80位と低くなっている。来年以降、中国の状況がどのように評価されるのかに注目したい。
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