◇ 昨年4Qの実質GDP成長率は前年比+6.8%と、前期(同+6.8%)並みだった。通年では同+6.9%と2010年以来7年ぶりに前年の成長率を上回った。
◇ 17年は外需の寄与度が前年比+0.6%と前年(同-0.7%)と様変わりのプラス寄与に転じたため、これが主因となって成長率が前年を若干上回った。
◇ 本年上期は固定資産投資全体の伸び率が緩やかな鈍化傾向を辿るとの見方が多い。ただし、年後半に製造業の設備投資および不動産開発投資の回復の勢いが強まれば、固定資産投資全体の伸びが緩やかな回復に転じる可能性も指摘されている。
◇ 第19回党大会の習近平主席のスピーチ(17年10月)および中央経済工作会議(17年12月)において、生産力の拡大を重視する従来の政策運営から経済の不均衡是正、質の向上、効率改善に政策運営の力点を移す方針が明確に示された。このため、成長率目標達成のために財政面の景気刺激策として実施されるインフラ建設投資拡大の必要が低下している。このため、これまでであれば主要人事が動く党大会の翌年はインフラ建設が増加したが、本年はそうした動きにはならないと見られている。
◇ 17年4Qおよび17年12月の消費関連統計データの下落は特殊要因によるもので、消費の実勢には変化がなく、引き続き堅調を維持しており、先行きも当面堅調が続くとの見方でほぼ一致していた。
◇ 各コンポーネントとも引き続き安定保持が確認され、雇用、物価も長期にわたって安定しているなど、改革開放が始まった1978年以降最高の安定状態にある。
◇ 中央経済工作会議で最重要課題として掲げられた、金融リスクの防止、貧困からの脱却、環境汚染の防止の3大目標は、第19回党大会の要求に基づいて今後3年間に小康社会を全面的に建設するための重点施策として位置付けられている。
◇ 金融リスク防止が重要政策課題として掲げられたのは、経済が安定し、財政面からの景気刺激の必要が低下しているためである。今であれば地方政府債務の管理強化等により財政収入が多少減少しても経済の安定を保持することが可能である。
◇ 中国政府は一人っ子政策を廃止したにもかかわらず、出生率の引き上げが難しいという深刻な課題に直面している。これは少子高齢化が急速に進む可能性が高まったことを意味しており、2020年代後半以降の大きなリスク要因となることが懸念される。
全文はキヤノングローバル戦略研究所のHPよりご覧ください。
(2018年2月23日 キヤノングローバル戦略研究所「中国マクロ経済は1978年の改革開放開始以降最も安定した状態を保持 ~第19回党大会における習近平主席スピーチに基づいた政策運営が始動~<北京・成都・上海出張報告(2018年1月21日~2月3日)>」より転載)