首相へ子ども庁を提案、官邸に要望書を提出しました

首相官邸へ赴き、子ども庁創設を骨子とする「社会擁護及び障がい者福祉に関する要望書」を、世耕官房副長官経由で安倍首相、菅官房長官へ提出をいたしました。

去る2月19日(金)首相官邸へ赴き、子ども庁創設を骨子とする「社会擁護及び障がい者福祉に関する要望書」を、世耕官房副長官経由で安倍首相、菅官房長官へ提出をいたしました。

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(写真は、世耕内閣官房副長官であり、主に下記の内容について膝を交えて説明をし、官邸主導による関係部署への指揮の重要性を訴えているところです)

  • どんな境遇の子供もスクスク健やかに育ってほしいと「こども庁(仮称)」の創設、及び家庭養護を主体とした「家庭養護・里親基本法」の制定
  • 障がい者の自立、雇用支援及び医療施設の充実、移動、住居等の支援

特に「こども庁(仮称)」の創設の必要性を訴えるに至った理由は、児童虐待が増加の一途を辿っているのが背景です。児童虐待は、年間約60件、つまり週に1人の命が奪われている計算です。しかもこの数値は、事件として判明している件数ですから、実はこの数より多い可能性もあります。

更に児童虐待の問題は、家庭内の閉鎖的な人間関係で発生しています。関係機関が児童虐待に関わる兆候を的確に認識し、適時に他の関係機関と連携を取らなければ、助かる命が見落とされてしまう危険があります。

今年1月埼玉県狭山市で3歳の女児が遺体で見つかった虐待事件は、まだ記憶にも新しいですが、実は、この事件でも警察と児童相談所の情報伝達、連携ができていれば守ることのできた命である可能性が高いのです。

この事件は、昨年7月に「子供が外に出されている」ため、虐待を疑った近隣住民から通報があり、狭山署員が現場に駆け付けていました。しかもその3週間前の同6月にも虐待を疑う通報がありました。しかし、狭山署としては「虐待はない」と判断し、児童相談所に連携していなかったのです。

更に、子どもを取り巻く深刻な問題も明らかになってきました。国が平成26年11月13日に公表した「居住実態が把握できない児童に関する調査」です。この調査では、なんと全国で141名の子どもが現在行方不明であり、所在が分からない状況にあります。

行方不明を防止するとともに、適時に把握し対応を取るには、学校だけ、児童相談所だけ、市役所だけ、警察だけでは困難です。居所不明児童の行方については、やはり各機関が連携をし、早急に見つけ出さなくてはなりません。

この様に児童虐待は、事象が複雑に絡み合うことから、一つの機関だけでは対応できないケースがとても多く、「情報をつないでおけば命が助かったのに」という事があります。しかし後悔だけでは、子どもたちの命は守れないのです。

私は、6省庁を呼び「国として、いったいどこの部署がこの児童虐待を総合的に扱っているのか。」何度も何度も詰め寄りました。

しかし、内閣府、文科省、総務省、厚労省、法務省、警察庁それぞれの担当部署については、残念ながらどちらの部署も断片的に児童虐待や子どもの問題を扱っていて、結局のところ総合的に情報を集めリーダシップを取ってまとめあげる省庁は、なかったのです。

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私は、「この状況を放置することはできない」と今年1月19日に開かれた参議院予算委員会で菅官房長官へ質疑を行い、総合的に児童虐待を取り扱う機関をつくるべきだと質疑を行いました。

実は、その私の質疑が功を奏し、今年4月から担当部署間で連携をする体制が始められることになりました。政府もやっと課題を認識し少しだけ動き出したのです。ただし、政府が4月から始める連携体制は、まだ不十分であるため、今回虐待を始め総合的に子どもの問題を評価する「子ども庁(仮称)」の提案をしました。

①子どもの虐待、②子どもの貧困、③子どもの機会の平等・教育の質の向上、④待機児童と言った子どもに関する社会問題を総合的に解決することを目的とした「子ども庁(仮称)」の創設です。「子ども庁(仮称)」の下に、児童相談所、保育所、幼稚園、学校、福祉事務所、医療機関、里親、児童福祉施設、地方公共団体の窓口、警察の窓口、裁判所が各省庁連携できる仕組みを早急に構築し、情報共有を図る体制を提案しています。

更に、政府の体制だけでなく、実際に実の親と暮らせない子ども達が置かれている生活環境も変えていかなくてはなりません。まずその糸口として「家庭養護・里親基本法」の推進を行います。

残念ながら日本では、里親など家庭養護の形で保護されている児童の割合は、全体の16.5%(平成26年度末)だけであり、ほとんどの児童が施設で保護されています。しかし、先進諸外国では、里親等の家庭養護による保護の割合が約50~70%であり、施設はむしろ補完的な場所となっているのです。

特に乳児期に特定の保護者に見守られない子供の愛着障がいの影響は、重大であり、その後の人間形成に大きく影響してしまうことが明らかになっています。0歳児から3歳児を対象とする乳児院は、早急に見直す必要があります。

ところが、これまでの日本では施設中心の養護が大勢になっていて、なかなか改善がされていません。家庭養護、里親を原則として、施設は、その補完とすべきです。子どもの事を第一に考えれば、時代に適合した新しい役割に早急に変えていくべきです。

家庭養護・里親基本法の推進を行い、この法律をもとに5年以内に家庭養護、里親の割合を欧米並みの水準まで、改善することを目指します。

野党の立場でも、熱心に変革を求めることで政府も動き出した児童養護問題、障がい者問題。今回届けさせて頂いた社会養護及び障がい者の関係者の皆さんが現場で苦心している声を、これからも粘り強く政府に訴え、結果を求めていく所存です。引き続きご支援を宜しくお願い致します。

(2016年3月17日「参議院議員 山田太郎 公式webサイト」より転載)

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