前回記事「小学生が"原宿の街"を変えたい!と区長に提言 全5日間壮大なワークショップ密着ルポ【前編】」では、Social Kids Action Project(以下SKAP)の1〜3日目の活動をレポートしました。
自分たちの住む原宿という街を改めて見つめ直し、「原宿で暮らす人」「原宿を訪れる人」両方の視点で街を取材。さらには、街ゆく人にもインタビューするなど、3日間であらゆる大人の意見を吸収してきた小学生たち。
後半はいよいよグループでのビジョン作成&個人アイデアの構築、最終日には原宿が位置する渋谷区長・協力してくれた企業や街の方々総勢100人以上の大人を前に、大プレゼン大会です。さて、どんなフィナーレを迎えたのでしょうか?
Day4:グループでビジョン&個人でアイデアを作成
4日目、まずはこれまでのフィールドワークを振り返りからスタート。突撃レポートの報告では「もっと多くの人に意見を聞きたかった!」との声が多数。子どもたちの"当事者"としての意識が日に日に高まっています。
続いて、渋谷区がどんな街づくりを目指しているのか、渋谷区子ども家庭部子ども青少年課の関藤さんのゲストスピーチです。『ちがいを力に変える街』渋谷区基本構想では「みんな違ってそれでいいのです。みんなが先生になれる、みんなから学べる街を目指しています」とのお話。
まさに今回のSKAPにも通じる話に、勇気をもらった様子でした。実際の区が考えている街づくりをここで再確認する、という流れも大切ですね。
その後はいよいよこのプログラムの佳境。「自分たちは原宿をどんな街にしたい?」というビジョン&アイデア作成です。実際にグループごとに1つのビジョンを立てる議論が始まりました。10分ごとに交代で司会を務め、30分後に一枚の紙にまとめます。
イメージしやすい言葉とイラストでわかりやすく表現したいのですが...... 各チーム迷走しながらも答えなき解に向かって、白熱する姿が見られました。
相反する意見を尊重しつつ、ひとつの答えを導き出す難しさ
「素敵な街は?」という意見に対して「素敵なって例えばどんな?」など一つずつ言葉を確認しあっているグループもあれば、「とりあえず描いてみよう」と、最初から画用紙に書き始めるグループも。
あるグループは「自然がいっぱい」というフレーズを入れたいけど「ファッション」的要素も入れたい。この2要素をうまく組み込むには......
ここで頭を悩ませ多数決になりかけたりしながら議論を戦わせていくと、一人のメンバーから「季節感溢れるってどう? それなら両方入れられるよ!」最後の最後に名案が飛び出し「いいね〜!」と思わず拍手! 言葉の大切さをわかっている子どもたち。
ここでは大人は一切口を挟めませんので、見守っているこちらもホッと安堵した瞬間でした。
大人たちが思わず唸る様な、素敵なフレーズもたくさん出て来ました。
最初はビルをイメージしてイラストを描いていたところ「これってパンケーキみたいじゃない?」「優しさが積み重なってるもんね!」「上に乗せて溶けるバターは安全で包み込むイメージかな?」アイデア豊かな子が膨らませ、国語が大好きな子が言葉を紡ぎ、絵が得意な子が形にします。一人の力では到達できない着地点にみんなの力で到達する、そんな喜びに満ちていました。
今回のプロジェクトで自分と違う考えを持っている友達の意見を尊重しながら、答えを導き出す難しさに初めて直面した子も多いでしょう。しかし、手探りの中みんなで一つの答えがまとまった時の喜ぶ姿を見ていると、真剣さが本当に伝わって来ます。子どもが真剣に"自分事として"考えている事に対して、"子どもの意見"と軽く捉えては絶対にダメだ、と改めて気付かされました。
今回のプロジェクトのように子どもの頃に「自分たちが真剣に考え伝えると、大人も真剣に聞いてくれて人を動かすことができる」という成功体験があれば、何ごとも建設的に考え、将来、困難なことにもチャレンジできるのではないでしょうか。これからの時代に生き抜く力の大切な要素だと思います。それには大人の対応力が問われているのだと、痛感させられました。
午後は考えたビジョンに向けて、自分のアイデアをどう変えるかなど具体案を検討します。それぞれを発表した後、友達のアイデアをもっと良くするためにアドバイスをし合い、さらにブラッシュアップ。
「誰に何をお願いするか」「自分は何をするか」まで現実的に考えます。ここまで提案することで、実現に向けての意識がグンと上がります。さぁ、最終日は資料作成&発表会です!
Day 5:自分のアイデアを資料にまとめて、いよいよプレゼン!
いよいよ最終日。午前中はプレゼンに向けて、資料の作り方や発表の仕方を練習します。単にノウハウを教えられる訳ではなく、自分が一度聞く側の立場に立って「聴きたくなるプレゼントとは」を考えます。お互いに試行錯誤しながら練習するのも、より自信につながりますね。最終的には1時間ほどで資料を書き上げました。
渋谷区長をはじめ行政と企業、地域の人々に保護者、マスコミ各社、総勢100名以上の大人を前にしてのプレゼン大会が始まります。子どもたちといったら......
いつもとほぼ変わらない姿、というより、なんだか自信たっぷりな面持ち。ここまで準備してきたから早く発表したい!という感じなのでしょう。
まずグループでのビジョンを説明してから、それぞれの各アイデアについて発表します。これまで足で稼いで得た人々の声を元に、自分の作りたい街をそれぞれ説明し、そのために『自分がすること』、『誰かにお願いしたいこと』を一緒に提言します。ここまで想定させることが、夢物語で終わらせない、実現への一歩を踏み出す大切なポイントなのです。
12人12色のアイデアは、大胆で自由な発想ばかり!
では実際にどんなアイデアが飛び出したのでしょうか? いくつかご紹介したいと思います。
- 「らくがきデパート」 警察で取材した時にらくがきが絶えなくて困っているという話を聞く一方で、観光に来られた方がアートとして捉えていて原宿らしい一面もあるので、らくがきができる大きな壁を持った施設を作りたい。
- 「ソーラーパネルを使ったキレイなけやきパーク」 保育園では子どもたちにとって遊び場が少ないと聞いたので公園を作りたい。欅は表参道の大切な存在なのでたくさん植えて、子どもたちが遊んだ時の動力(ローラー滑り台の回転とかで)で発電できる様なシステムを導入したい。
- 「交流しようよ! イベントで」 郵便局で欅並木の落ち葉拾いが大変と聞いたのと、6%DOKIDOKIで歩行者天国を復活したいと聞いたので表参道に歩行者天国を復活させて四季に合わせたイベントを開催し、いろいろな世代が交流できる空間を作る。
大胆で自由な発想ですが、きちんと拾って来た声に基づいているので、説得力がありますし「自分が人を集めますので、区長さん許可をください」「欅会さん、一緒に手伝ってください」なんて指名されると、大人も協力したくなります。(SKAPのHPには全員分のアイデアが掲載されていますので、気になる方はそちらもチェックしてください。)
長谷部渋谷区長はじめ、大人からも即レスポンス
各プレゼンの後、手伝って欲しいとお願いされた企業や、お名前が上がった団体の方がいらっしゃれば、その場で感想を述べ、意見をしたり質問をしたりすることができます。
長谷部区長からは全員のアイデアに対してコメントがありました。「川を作るアイデア、実はこれずっとやりたいんだよね〜」「四季折々の祭りを整理するとわかりやすいかもしれないね。
ただ、代々木公園は東京都の持ち物なので...... 小池都知事に言いに行こう!」なんてどんどん夢は膨らみます。また、季節感溢れるファッションのイベントをしたい、という子にはラフォーレ原宿の荒川社長自らが名刺を渡し、握手するシーンも! このすぐに当人からの生声でレスポンスされるのも素晴らしい経験です。こうした発表と子どもたちからのお願い、そして大人たちからの返事をそれぞれ受け取って、それぞれ実現フェーズに向かうところまで橋渡しをして閉幕しました。
実際に体験した子どもたち、親たちはどう思った?
では5日間のプログラムを無事終えた子どもたちはどう感じたのでしょうか? 感想をそれぞれ聞いてみました。
- 今までは教科書やインターネットで調べるぐらいしかしなかったけど、こうして自分で活動して区長に提案できるのがすごいと思った。
- 普段会えない大人にも会えたし、いろいろなお仕事を見られて楽しかった。来年もまた参加したいです!
- 積極的に意見を発表して認め合えたのが良かった。意見がまとまらない時は大変だったけど、やりがいがあった。
- いろいろな人の悩みを聞いて、解決策を考えるのが楽しかった。ビジョンを考えるのが難しかったけど、アイデアとビジョンの違いもわかった。
見守り続けた親御さんたちはどの様に感じたのでしょうか?
- 家ではあまり自分のことを話さない子なので、プログラム中の姿に本当に感激しました。家でも食を大切に考えているので、娘がそのことを考えてくれたこともとても嬉しかったです。
- 自分でやりたい!と言って応募しましたが、最初は活動の内容も想像できず不安は多かったみたいです。結果、何かの目標に向けて結果を出すことができたことはとても良い経験になりました。子どもなりに学校のお友達にもしっかりと説明できると思います。
- 4年生になって親との時間より外での関わりを求める様になり、人と話すのが好きな子なので「向いてるかな?」と思って応募しました。毎日、とても楽しそうで家で夏休みの宿題なんて全然手がつかないのに、ここでの活動はとても積極的(苦笑)。何より原宿に一人で電車で出かけるなんて経験なかったのに、毎日楽しく通って行くなんて! それも大きな成長でした。
5日間かけていろいろな大人に会い、自分の言葉で話して聞いて考えて。自ら問題点を見出し友達と議論し、やっとたどり着いた最後のプレゼン。もう我が子を見守る心境でしたね(笑)
「みんな花マル!」というポジティブに見守る基本姿勢が、こんなにも子どもたちの発想を昇華させていくのですね。大胆な発想ってなかなか大人はできませんし「子どもだから」と言って大人も捉えない方が良いと気づかされました。
子どもたちのパワーは計り知れませんし、その成長を見守るこちらも一緒に成長させられました。子どもの本気の気持ちに大人も本気で応える、この関係性がとにかく理想的だと思います。世の中、本当に変えられるかもしれません。このプロジェクト、日本各地に広がることを切に願います!
ワーママを、楽しく。LAXIC
取材・文:飯田りえ
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