私は昨年末に初めての子供を授かりました。実は妊娠が分かった時から決めていたことがありました。それは出産したら育児休暇をとるということです。
日本全体で男性の育児休暇取得率は1.89%(※1)と、極めて低い割合です。スウェーデンやノルウェーなどの福祉先進国では取得率が75%を超えている(※2)とのことなので、日本の男性がどれだけ育児参加できていないかが分かります。
しかしながら、日本では男性が育児休暇が取りにくいという歴然とした現実があります。そもそも「育休取りたいんですけど......」と言い出すことすらしにくい雰囲気があり、ひどい会社では仕事のラインから外し、窓際に追い込もうとするところもあるそうです。
育児休暇は「取得できるならしたいけど、現実的にできない」、それが大方の日本人男性の感じることかと思います。
これからの話は、私自身の3カ月間毎日午前勤務のみという育児休暇を取得した経験からの気付きですので、これから育児休暇を取得しようと考えていて、仕事との両立が可能か悩んでいる人のために読んでもらいたいと思っております。
正直、育児休暇を取るか取らないかはその人の、その家庭の考え方なのでどちらでも幸せであれば良いと思います。育児休暇を取らない男性なんてありえない!などと思っているわけではないのでご理解ください。
■ 育休中に自宅で仕事をするための5つの工夫
家庭での育児と仕事と両立させるためには、一定の生活リズム作り、少ない時間を効果的に活用するためにオンとオフを素早く切り変えるスイッチを整えておくことが大事だと思います。
(1)1日のリズムを作り、特定の時間が仕事の時間になるようにする
まずは作業時間を確保すること。子供が0~1歳のうちは基本的に子供のペースを優先します。その子供のペースを前提として自分のリズムを作ることが必要です。なぜなら、子供をあやしたり、寝かせたり、おむつ交換をしたりと、育児をしながら仕事をしようとすると子供が怒りだし、かえって時間がかかってしまうからです。
1日のリズムは子供と一緒に作っていくので、ちょっと時間がかかりますが、必ずすべきことです。
我が家の場合は6:00に起床し3時間おきに授乳、18:00お風呂、お風呂あがり後授乳し19:00に就寝、24:00まで爆睡した後、夜中の授乳、3:00に授乳で6:00に起床......。このサイクルが1.5カ月で出来上がり、そのリズムに沿ってまとまった仕事の時間を作れるようになりました。私の場合は18:30-19:30と21:30-24:00までが育休中の自宅での仕事時間として割り当てています。
下記の図1)、図2)は、私が育休を取得する前と育休中の1日のスケジュールになります。育休中でも会社(6時間)と自宅(3.5時間)で合計9.5時間の業務時間を確保できています。
図1)育休前の1日の平均的スケジュール
図2)育休中の1日の平均的スケジュール
(2)食事やプライベートと仕事時で「座る位置」を変える
在宅勤務のように自宅で仕事をする場合は、仕事の空間を物理的に分けることが望ましいと言われています。しかしながら、自宅に業務用のデスクを置き、仕事のみができる空間を用意できる人がどのくらいいるでしょうか。少なくとも東京都内在住の人でそんな余分なスペースを抱えている家庭は少ないでしょう。私の家も都内の1LDKで自宅業務専用のスペースなど用意できません。
そこで、私が実践している方法は「座る位置を変える」という非常にシンプルな方法です。私の家には4人掛けの大きめなダイニングテーブルがあり、その右側をプレイベート用、左側を仕事用と分けて使っています。
場所を変えることで脳のスイッチが切り替わり、一瞬で仕事モードに入ることができます。座る位置を変えることがそんなに重要なのかと思う方も多いと思いますが、意外なほどに効果がある方法です。
(3)タスクの緊急度よりも重要度を意識し、まず「手を付けておくこと」を心掛ける
育児中は、当然ながら全ての業務をじっくりと行うことはできません。1日10時間の労働時間があるとして、育休中で3時間少ないから単純に7時間使えると思ったら大間違いです。業務時間は細切れになればなるほど「密度の濃い時間」は少なくなります。したがって、育休前のやり方だと「高品質アウトプット」を出すのは難しくなります。育児中は、まさにそのような状況になります。
ですので、品質を保つもしくは向上させるためには「品質に直結させるための時間以外の時間」の使い方を効率化させなければなりません。品質に直結する時間はそのまま業務に取り組んでいる時間となりますが、それ以外の部分で最小化するのが、「始めるまでの時間」です。
結構見落としがちですが、実際に作業に取り掛かるまでの時間というのは1日作業に近いくらいの時間を消耗しているものです。作るべき資料、スケジュール、タスクリスト、トークシナリオなど、どんな業務タスクでもやるべき業務にちょっとだけ手を付けておくことで、次に本作業に取り掛かる時のアクセルの掛かり方がスムーズになります。これだけのことでも、業務効率は劇的に向上します。
(4)業務時間は90分刻みで設定。半端な時はメールやスケジューリングなどの業務を。
育児中の細切れ時間はとにかく「細切れ」になります。まとまった時間は確保しにくくなります。まずは、それでもまとまった時間を確保できるようリズムを作ることが重要ですが、それでも難しいのが現実です。そんな場合、業務時間の1単位時間を決めておくと効果的です。もし、単位時間が1時間の場合は1日10時間の仕事時間として1日10セットとなるし、45分の場合には13セットになります。これも「密度の濃い時間」をつくるための工夫です。
私の場合は90分を1単位時間としています。理由は簡単で自分自身の高い集中力が継続する限界が90分だからです。たぶん大学院時代の講義が90分単位だったからということに起因しているのだと思います。人それぞれ最適な単位時間があるはずなので、ぜひ探してみてください。
(5)設定した時間以外は仕事はしない。
仕事が大好きな人間(私もその1人ですが)は、ついつい決めた時間を忘れたり、あえて無視して仕事を続けたりしてしまいます。しかし育児との両立を保つためには設定した時間になったら、中途半端でも仕事をやめた方がいいと思っています。
有限な時間の中で、設定した以上の時間を使うということは、育児の時間か睡眠時間を減らすことになり、育児と仕事を両立するという目的においては持続性を邪魔してしまい本末転倒となります。
なるべく効率的に、効果的に仕事をしたいですが、それには限度があります。いくら効率的にしても1/2の時間で4倍の成果は出せません。育児休暇を取らない場合と比べて想定していた作業が完了できないことは素直に認め、完成までの日数を多めに取るようにスケジュールの方を修正しましょう。
■ とは言え子供の生活リズムは定期的に変化する
しかしながら、せっかく作り上げた生活リズムも子供の成長によって定期的に変化するらしいです(私も未経験の領域なので確信はありません)。リズムが変わるとこれまで効率的に進めてきたスケジュールも壊れるわけですが、それはもう仕方のないことです。新しいリズムに合わせ再度自分のスケジュールを調整するしかありません。でも先にお話したコツはそのまま活かせるので、上手く活用し育児と仕事の両立を図っていただきたいと思います。
一つだけ私が気を付けていることは、子供自身が納得するようにリズムが出来るのを待っているということです。親の都合を押しつけると必ず反発しますし、作り上げたリズムも長続きしませんので。
■妻との協働で仕事ができるライフスタイルを実現する
これまで育休中に自宅で仕事をするためのコツを紹介してきましたが、実は最も大きな要素があります。それは妻との協働です。この育児と仕事を両立するという生活を持続させるためには、寝不足等でリズムがくるってしまうことが最も大きなリスクとなります。日中の業務や翌日の自宅での仕事もできなくなってしまうので、あくまで継続できることが大切になります。
そのために私は妻に協力してもらい仕事の時間と設定している時間の間は子供の対応を一人でしてもらっています。また、夜3時の授乳と寝かしつけの時も私は寝続けられるようにしてもらっています。
その分、私はその他の時間のおむつ交換やお風呂、夕食作り等を積極的にやっています。
このようにして、適切な仕事時間を確保するために、妻の協力は欠かせないものだと思います。
ちゃんと話し合い、どのようにしていきたいのか? そのために自分は何を協力できるのか? 事前に話し合っておくことが大切だと思います。
育児休暇を取得しようと考えていた方からみれば小さな話ばかりだったかもしれません。しかし、裏を返せば小さな工夫で何とかなるということなのではないかとも思います。ぜひ一人でも多くの男性が育児に参加してみようというきっかけになり、実際に育児に関わることで子供との大切な思い出を作ってもらいたいと思っています。