小学6年生の子供が蹴ったサッカーボールを避けようとして転倒し、後に死亡した男性(当時85歳)の遺族が、ボールを蹴った少年の両親に損害賠償を求めた裁判で、最高裁第一小法廷(山浦善樹裁判長)は4月9日、両親の監督責任を否定する判断を下した。「通常は危険でない行為でたまたま人を死傷させた場合、親は賠償責任を負わない」として、両親に賠償を命じた2審判決を破棄。両親側の逆転勝訴が確定した。産経ニュースなどが報じた。
同小法廷は、今回の子供の行為について「ゴールに向かってボールを蹴る通常の行為で、道路に向けて蹴ったなどの事情はうかがわれない」と指摘。両親が普通のしつけをしていたことなども考慮し、今回の事故を「予測できたとはいえない」として、監督義務を尽くしており、賠償責任は負わないと判断した。
(ボールよけ転倒死、男性の遺族が逆転敗訴 親の子供への責任「被害の予見可能性で線引き」 最高裁初判断 - 産経ニュースより 2015/04/09 15:48)
産経ニュースによると、事故は2004年に愛媛県今治市の公立小学校脇で起きた。当時11歳だった男性(23)が、放課後に校庭で友人らとサッカーをしていた際、ゴールに向けて蹴ったボールが外の道路に飛び出した。そこにバイクで走ってきた85歳の男性が、ボールをよけようとして転倒。足を骨折した。直後に認知症の症状が出て、事故から約1年半後に肺炎で死亡。遺族は2007年に裁判を起こし、少年とその両親に損害賠償を求めた。
1審の大阪地裁は、少年の過失を認めた上で、両親にも監督責任があるとして約1500万円の賠償を命じた。2審の大阪高裁も、減額したものの両親の監督責任を認め、約1100万円の支払いを命じた。
3月19日のNHKニュースによると、遺族側は上告審で「6年生であればボールが道路に飛び出す危険性を認識できたはずなのに、両親の教育が不十分だったため事故が起きた」と主張。これに対し両親側は、「一般家庭並みの教育やしつけはしていた。親として必要な監督義務は果たしており、責任を免除されるべきだ」と反論していた。少年の父親は朝日新聞の取材に対し、「サッカーをするなと注意のしようもない。こんなことにまで親が責任を負わされるのは納得できない」と話したという。
民法では、子供が事故を起こした場合、親などが監督責任を怠っていれば代わりに賠償責任を負うと定めている。これまで類似の訴訟では、被害者を救済する観点から、ほぼ無条件に親の監督責任が認められてきた。キャッチボールをしていた小学生のボールが、近くで遊んでいた別の小学生の胸に当たり死亡させた事故、小学生男児が自転車で女性に衝突し、寝たきりにさせた事故などで、児童の親に賠償金の支払いが命じられる判決が出た。
今回の最高裁の判断は親の責任を限定するもので、同様の争いに今後影響を与えるとみられる。
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