こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
9月議会の登壇に向けて、質問の内容の選定に入っています。
なにせ、持ち時間が10分程度しかないのでね...
本日も社会的養護について関係者と意見交換を行っていたのですが、
話題に出てきたのは児童相談所の規模・権限について。
社会的養護・児童養護についての過去記事はこちら↓
「里親措置・特別養子縁組までまったく手が回っていない」
「対応が後手後手で、一時保護所の滞在期間が長期化している」
「全般的に、要保護児童に対する対応が迅速に行われない」
などと批判をされがちな児童相談所ですが、
その実は強大な権限を持つことも同時に指摘されています。
「児童相談所」でグーグル検索をすると、
「拉致」「連れ去り」などの予測変換が多く出てきます。
虐待などの相談・対応が後手に回っているという批判の一方で、
「あらぬ虐待の疑いをかけられて、子どもを強制的に保護されてしまった」
という事例もまた多く報告されているようです。
確かに児童福祉法第三十三条によって、児童相談所の所長は
必要であれば保護者の同意なく児童を保護することができます。
これは警察が令状なしで(現行犯以外の)逮捕を乱発できるようなもので、
適切に使われれば大きな実行力とスピードが期待される反面、
濫用されてしまえば極めて大きなリスクが生じます。
しかもその後、児童相談所の裁量によって
保護者への面会を禁じ、年単位で交流をさせないことも可能なのです。
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「適切な保護」と「(保護者の意に反した)強制的な連れ去り」の判断は、
当然のことながら極めて難しいものです。虐待の事実を保護者が認めないケースで、
児童相談所による保護を拒否することができてしまえば、命が失われる事態も発生しかねません。
しかし日本の児童相談所は、先進諸国と比べて問題が多いことも事実と言えます。
例えばオランダなどでは、
「保護者や学校からの虐待相談に応じる部門」
「実際に強制保護・一時保護を決断して実行する部門」
「その一時保護が適切なものであったのかどうか、判断・検証する部門」
がすべて独立して存在しています。
そのためチェック&バランスが働き、どこかに不適切な対応があれば
指摘を受けやすい、発覚しやすい仕組みになっているわけです。
ところが我が国の児童相談所は、その内部に上記機能のほぼすべてを抱え込んでいます。
組織が自浄作用を働かせて、自ら過ちを見つけるのは極めて難しいのは言うまでもありません。
(各自治体に設置されるチェック機関「児童福祉審議会」も、形骸化が強く指摘されている)
また、相談窓口と実務部隊・権限者がすべて一緒になっていることも問題で、
本来であれば
「子どもとうまく向き合うことができない」
「育児ノイローゼになりそうで困っている」
「心に余裕がなく、子どもに手をあげそうになってしまう」
などの相談を(ある種気軽に)できるはずが、
「そんな内容の相談を児童相談所にしようものなら、
虐待の疑いをかけられて子どもが連れ去られてしまう!」
と、悩みを抱え込んでしまう保護者が発生する可能性も指摘されています。
そして実際に一時保護となってしまった後のケースについては、
時折私のような議員事務所にも相談・連絡が入ることがあります。
その際、
「絶対に自分の名前を(児童相談所に)知られたくない」
「児童相談所が知れば、余計に子どもを返してもらえなくなる」
とおっしゃるケースが非常に多いです。
しかし児童相談所しか、この問題にアプローチできる機関は存在しません。
この場合議員としては残念ながら、双方の事情を聴取して判断しなければ
問題解決に動けないため、あくまで匿名を希望される方の相談には
対応できないというのが現状です...。
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アメリカでは、日本の児童相談所にあたる行政機関は
8つのセクターに分かれているとも言われています。
実際に何度も指摘しているように、児童相談所の職員たちは
増え続ける事例に完全にキャパオーバー化していますから、上記の問題も含めて、
役割ごとの分化と機能強化を検討していくべきでしょう。
児童相談所の権限規定まで行くと国政マターになってしまいますけど、
適切な第三者機関が存在しないと言われている現状においては、
議会・議員がしっかりとチェック機能を果たしていかなければなりません。
個別のケースには複雑なものが多く、力になれないこともありますが、
しかるべきエビデンスを集めながら最終的には公的な監視機関の設立、
そして児童相談所の分割が実施される提言につなげていきたいと思います。
それでは、また明日。
(2015年9月7日「おときた駿ブログ」より転載)