2歳4か月になったうちの娘は最近、くまの人形のお世話をするのにハマっている。
家にいるときは四六時中くまの人形を抱き、ことあるごとに話しかけたり、世話を焼いたりしている。
彼女はこのくまのことを「ちいさいくましゃん」と呼んでいる。
朝、目が覚めてすぐ、私に向かって「おはよー」と言ったあと、となりで一緒に眠っていたくましゃんに向かって、「くましゃん、おはよー」と挨拶をする。
くましゃん「娘ちゃん、おはよー!よく寝れた?」
娘「うん。よく、ねれたー!」
くましゃんを抱き、リビングへと移動する。
そして自分が着替えを済ませたあと、「くましゃんも、おきがえー」といって着替えさせるフリをする。
「くましゃん、ボタン、あるー」
くましゃんの洋服についた『ボタン』について言及するのが日課である。
私「そうだね、くまさんボタンついてるねー。」
娘
くましゃんに話しかけたつもりなのに、私が返事をするとこのように怒られる。
私「(ちっ…。)」
くましゃん「そうだよーボタンがついてるの~。可愛いでしょ。」
娘「かわいーねー。」
その後、私がバタバタと保育園に出発する準備をする間、彼女はくましゃんのお世話をしてやっている。
娘「くましゃん、おてて、あらおうねー」
娘「くましゃん、ねむいー?」
娘「おなかすいたのー?」
娘「くましゃーん?」
娘
くましゃん「…え!うんうん、お腹すいた~!」
くまが応答するまでしつこく話しかける。
私の準備が済むと、自転車に乗って保育園に出かける。
その途中。
「あっ!」
娘が声を上げた。
私「どうした?」
娘
まあ落ち着け。くまひょんがどうした。
娘「くましゃん、ばいばいしてない〜!」
ああそうか。バタバタと出てきてしまったから、くましゃんに『行ってきます』をするのを忘れたのか。
私「そうだねぇ、ばいばいしてなかったねぇ。じゃあ帰ったら『ただいま』しよっか〜。」
娘「うん。」
その場は納得した様子を見せたが、その後、娘は何度も「くましゃん、くましゃん」と言ってはくましゃんのことを気にかけていた。
**
保育園の帰り道。
娘「ママ~…じゃない。おかーさん。」
最近の娘は私のことを『おかーさん』と呼ぶのにハマっている。
私「なあに?」
娘「おうちで、くましゃんと、『あるこう』みるの~!」
『あるこう』とは『となりのトトロ』のことである。
私「そうだね~くまさんと一緒に観ようか~。」
家に着くと、彼女は一目散にくましゃんの元に走っていった。
娘「くましゃん!ただいま~!」
くましゃん「娘ちゃん、おかえり~!」
娘「娘ちゃん、ほいくえん、いってきたの~!」
くましゃん「そうなんだー!楽しかった?」
娘「うん!ボールと、ぺったんこ(スタンプ)、したのよー」
お姉さん口調になっている。
くましゃん「そうなんだ!ボールとぺったんこして遊んだんだね~!」
娘「そうよー」
娘「ママ~…じゃない、おかーさん~」
娘が『となりのトトロ』のDVDを持ってきたので再生してやった。
すると娘は、「くましゃん、どこする?ここ?」と言って、くましゃんが座る場所を作ってやっている。
私はそんな光景を微笑ましく思いながら、夕食の準備にとりかかった。
私が調理をするあいだも、リビングからは娘がくましゃんに話しかける声が聞こえる。
娘「くましゃん、おふろはいろーねー。」
どうやらDVDに飽きたので、くまのお世話を始めたようだ。
どれどれ、と振り返って見てみると、確かにくまは風呂らしきものに入っていた。
心なしか困って(くまって)いるように見える。
娘はそんなことなどお構いなしで、「あたま、じゃーするよー」と言って世話を続けている。
しばらくすると、「くましゃん、ねむいのー?じゃあ、ねんねしよっかー」という声が聞こえたので、再度振り返ってみると、くましゃんは布団のようなものに寝かせられていた。
私にはくましゃんがまたもや困って(くまって)いるように見えた。
娘はやはりそんなことはお構いなしで、「とんとん、するのー」と言って、胸のあたりをトントンしながらくましゃんを寝かしつけている。
夕飯が出来上がると、娘と二人で食べた。
その間もずっと娘はくましゃんに向かって、「くましゃん~、娘ちゃん、はっぱたべてるよ~」といった調子で話しかけるので、「くまさんとのお喋りは食べ終わってからにしなー」と毎回注意している。
夕食を食べ終わると、すぐにくましゃんのところに行って、「くましゃん、娘ちゃん、ぜんぶたべたの~」と自慢している。
全然全部食べてないんですけど。
娘「くましゃんも、たべたかったー?」
くましゃん「…。」
娘「くましゃんー?」
くましゃん「…。」
娘
くましゃん「え?なに?どうしたの?」
そろそろくましゃんも疲れてきたようだ。
その後は私と娘と二人で風呂に入る。
これは余談だが、以前、イヤイヤ期についての記事を書いたころ、娘は風呂を嫌がってなかなか入らなかったのだが、最近は嫌がらずに入るようになった。
風呂からでたら、歯磨きをする。
娘はいつも歯磨きを嫌がるので、ここではくまの存在が欠かせないのだ。
私「娘ちゃん、歯磨くよ~」
娘「…。」←無言で逃げる
くましゃん「娘ちゃん、歯磨きしようよ~!歯磨きするとこ、見せて~!」
くましゃんにイイ所を見せたい娘は、しぶしぶ歯磨きに応じる。
くましゃん「娘ちゃん、上手に歯磨きできてるね~!」
くましゃんの褒めごろし作戦だ。
娘「そうなのー」
娘もまんざらではない様子。
こうして無事、歯磨きという難関を突破した私たちは、ベッドへ行き、寝る準備をする。
私「じゃあ、絵本を選んでおいで~」
寝る前に読む本を娘に選ばせる。
娘が持ってきた絵本を開くと、私のひざの上に娘がちょこんと座り、娘のひざの上にくましゃんがちょこんと座る体制となる。
『しろくまちゃんのほっとけーき、はじまりはじまり〜』
~
『おいしいね、これ、しろくまちゃんがつくったの?そうよ、おかあさんといっしょに、つくったの』
ホットケーキを食べるシーンでは、娘も一緒に食べる真似をする。
私「くまさんにもあげたら?」
娘「くましゃん、だめー!」
私「なんで?」
くましゃん「食べたいよ〜え〜ん(泣)」
娘「いいよ!」
くましゃん「わあい!ありがとうー!」
娘「くましゃん、だめー!」
くましゃん&私「えっ」
娘「いいよー!」
このやりとりがしばらく続く。
絵本を読み終わってこちょこちょ祭りを開催したら、おやすみの時間だ。
「ママの、かぴしゃん、あるよー!」
娘は私の嫁入り道具であるカピバラさんのぬいぐるみを渡してくれる。
「娘ちゃん、くましゃんー!」
娘はもちろん、くましゃんを抱いて寝る。
くましゃん「娘ちゃん、おやすみー!ぐがーぐがー!」
私「くまさんもう寝ちゃったね!早いね!」
娘「ぎゃはははははは!」
なぜかこのくだりでいつも爆笑する。
私「さあ、もう寝よっか。」
娘「ねよっか。」
こうして、わが家の1日は終わる。
**
私は娘とくましゃんの会話を聞いていると、とても心がなごみ、優しい気持ちになる。
しかしながら、なんだか私の喉が日に日に枯れてきているのは気のせいだろうか?
いや、きっと気のせいだ。
くましゃん「娘ちゃん、、おはよー!」
おしまい。
(2014年9月23日「はなこのブログ」より転載)