NEXCO東日本によると、外環道の三郷南ICから高谷JCTが2018年6月2日に開通するとのことです。区間としては15キロほどなのですが、1969年に計画発表されてから半世紀近く掛かった大事業の一部がようやく完成までこぎつけました。
沿道に住む方や関係者の方が様々な面で尽力されたことによって、今回の開通に結びついたと考えられます。NEXCO東日本のHPによると、この外環道の開通によって東京ディズニーリゾートと茨城県つくば市が18分の短縮、同埼玉県川越市までが7分短縮と首都圏がより短時間で結ばれます。
何よりもルートが増えることで渋滞の発生が抑えられると考えられるため、車での移動時間がより読みやすくなる効果が期待されます。
東京区間についてはまだ事業実施中とのことですが、ひとまず関越道の大泉JCTから東関東道の高谷JCTまでがつながることで、都心を通らずに広域が結ばれるます。
と、道路状況の変化を分析するのは専門家にお任せし、本稿では交通状況の変化によって企業にもたらされる外部環境の変化を、どのように考える必要があるかについて述べたいと思います。
■千葉、埼玉地区の競争環境の前提が変わる
大きな道ができると人の流れが変わることは異論がないと思います。先に述べた通り、広域での時間短縮効果が出て来るため、なかなか行けなかった場所が気軽にアクセスできる場所に変わりします。
物流も大きく変わり、今まで倉庫を設置できなかったような場所も絶好のポイントとなる、交通が便利になることで納期が大きく短縮されて競争力が出る、などの変化が生じます。
川越市もつくば市も物理的な距離は変わりませんが、移動に必要な時間が短くなることで事実上の距離が近くなる効果が生まれます。
想像してみてください。自分の住んでいる町の近くに大消費地ができたり、発注者の大きな工場が進出してきたりする。一夜にして、自社よりも有利な位置に強力な競争相手が多数進出してくるといった光景を。道路網の整備は、こういったことを広域で引き起こすのです。
■このときに事業者は何を考えればいいのだろうか?
そして、このように競争環境の前提が変わったときには、再度経営戦略を考えることが必要となります。
通常、経営戦略はターゲットとする顧客に対して自社が持つ優位点を最大限活用するような形で構築されます。
例えば自社は競合と比較して顧客のそばにいるため、より短納期での納品が可能となるといったことを一つの前提として、戦略を組み立てていくようなイメージです。
この場合は短納期での対応ができることを強みとして、特急案件を高単価で狙っていくと戦略が考えられます。遠隔地に安くて品質のいい競合がいたとしても、短納期という価値を打ち出して戦っていくことができるのです。
しかし競争環境の前提が変わり、自社よりも顧客のそばにいる競合が大量に発生した場合、経営戦略の前提条件が変わってしまいます。その場合、従来の前提に立った経営戦略はうまく機能しなくなるかもしれません。
良し悪しは別として、事実が変化したわけですから変化する前の事実から導き出された経営戦略は再考する必要があるのです。
もちろん品質面などの優位性が大きく、地理的な面があまり前提条件となっていない経営戦略を構築している企業にとってはそこまで大きな影響は出ないと考えられます。
しかし、競合が自社の優位性を打ち消すほど大きな優位性を手に入れている可能性もあるため油断は禁物です。
QCD(品質コスト納期)というぐらいですので、納期に余裕が出れば品質を向上させてくる競合が現れるかもしれません。また、顧客にとっての納期面のメリットが自社の品質面のメリットを打ち消す可能性も存在します。
■経営理念に立ち返って、戦略の見直しを行うことが大切です
さて、このように外環道千葉区間の開通によって6月2日以降は競争環境が大きく変化した可能性があります。
もちろん「では6月3日から新しい経営絵戦略を策定して......」といったことを慌ててする必要はありませんが、事実がどのように変化したかを冷静に見極めていく必要が出ていると考える必要はあります。
事実を冷静に見極め、経営戦略を見直すレベルの変化があると判断されたら、自社の経営理念に立ち返り戦略を練り直す必要が出てくるのです。
外環道千葉区間が開通することで、良くも悪くもほぼ確実に首都圏の、特に千葉埼玉エリアの競争環境は変化します。その変化をチャンスとするかピンチとするかはこれからの行動にかかっているといえます。
【参考記事】
■生き残るための経営戦略は経営理念から生まれる (中郡久雄 中小企業診断士)
■ANAが目指す「瞬間移動」が航空業界を破壊する (森山祐樹 中小企業診断士)
■将来の稼ぐ力のために今すべきことは、今しないことを決めることです (岡崎よしひろ 中小企業診断士)
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岡崎よしひろ 中小企業診断士