七十二候「桜始開(さくらはじめてひらく)」。お花見シーズンの開幕です

いにしえより日本人に愛される桜。咲いてよし、散る姿よし。
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今年もいよいよ桜が咲き始めました。七十二候でも本日から第十一侯「桜始開(さくらはじめてひらく)」。開花宣言後、花冷えが続くここ数日ですが、いつ満開を迎えるかも気になるところですね。今年の桜、いつ、どこでお花見をしましょうか?いつか見た桜とともに心に刻まれた想いが、花とともに鮮やかに甦ってくるころです。

桜前線北上中!花冷えのおかげか、満開まで長く花を愉しめる春に

日本の春の主役・桜の花がほころび始めました。

待ちに待った春の開幕です。

本日から七十二候でも「桜始開(さくらはじめてひらく)」となり、古くから私たち日本人が愛する花・桜が咲く時季となりました。

今年の桜前線は、3月19日に福岡と名古屋でスタート。21日に東京、22日に熊本、長崎、和歌山。23日に広島、松江、大阪、京都、前橋、横浜と、各地ですでに桜が開花しています。満開になるのも今年は早くなるかと思いきや、ここ数日の寒気の影響で、やや足踏み状態。ですが、その分、桜の花が美しく咲いている「花時(はなどき)」を例年より長く愉しめるとの期待も。今年は、初花から三部咲き、満開と、ゆっくりと花の美を愛でる時間がとれそうですね。

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いにしえより日本人に愛される桜。咲いてよし、散る姿よし

「願はくは花の下にて春死なむ」という古歌の一節がある。むろん花は桜である。その桜の花のあまりの見事さに、「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる」と書いた作家もあった。「源氏物語」の巻名の一つ「花宴」も、桜の宴である。左近の桜をめでて夜更けまで続く物語の中の遊びでは、「春鶯囀」や「柳花苑」が舞われ、詩が披講されている。宴も果ててあたりがようやく静まった頃に、月の明るくさし出た風情は格別であったという。

古くは、花といえばまず桜か梅であった。前後の文章がいずれかを決めてくれる。つぼみがいいのは梅や海棠かとも思うが、咲いてよし散る姿よしとなるとやはり桜であろう。開きそろったこの花には、優雅と頽廃との神秘な調和がある。

~竹西寛子著「花宴(はなのえん)」より~

...これは、評論家でもあり小説家でもある竹西寛子さんが、桜に関して綴った一文。桜は、古来日本にあった花。中国渡来の梅がひと月ほど咲くのに比べ、花の時期は短く、それゆえに、古事記の木花開耶姫(このはなさくやひめ)の物語をはじめ、あまたの歌や物語に詠まれ、綴られ、桜の貴い美しさがたたえられ続けてきたのでしょうか。

そんな桜がとりわけ好きだったのが本居宣長で、還暦に際して詠んだのが、

~しき嶋の やまと心を 人問はば 朝日ににほふ 山ざくら花~

(没する前年には300首も桜の歌を詠み、墓の前には桜を植えよと遺言を残した)宣長によるこの一首は、大好きであった桜への率直な愛があふれているようです。

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岐阜県「根尾谷 淡墨桜」をはじめ各地にある一本桜の風情もまたよし

さて、今年のお花見、どこへ行きましょうか。(この「花見」という年中行事も、どうやら日本人独特なもののようですが)

いっせいに霞か雲か幻のように咲く染井吉野が連なるのもいいけれど、里山や野辺にすっと気高く佇む一本桜の風情はまた格別なものかもしれません。

「日本三大桜」と呼ばれている福島県「三春滝桜」(紅しだれ桜)、 山梨県の「山高神代桜」(江戸彼岸桜)、岐阜県「根尾谷 淡墨桜」(江戸彼岸桜)の開花予想も当サイトで発表されているので、ぜひ参考に名木をたずねてみてもいいですね。

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そんな名木とまではいかなくとも、毎年花の時期を待ち望む、身近に親しむ桜の木がある方も多いことでしょう。

故郷の桜は、今ごろ花開いているだろうか。

あの人と見た桜は、また今年も美しく咲くのだろうか。

心に映した桜の思い出も、歳を重ねるほどに増え、その思い出が花とともにいっせいに満開となる春爛漫。

魂を奪うような花の姿に、また出逢えたらと願う「桜始開」のころです。

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ゴトウヤスコ

ライター

広告コピー、雑誌記事、インタビュー記事などを多数執筆。カルチャー、ビジネス、日本の伝統文化・ものづくり、食など多岐にわたる分野に守備範囲を広げ、言葉で人と人をつなぎ、心に響くものごとを伝える。