パリ中心部の風刺週刊紙「シャルリエブド」本社に7日午前、覆面をした複数の人物が押し入り銃を乱射し、同紙の編集長を含む少なくとも12人を殺害した。
銃を乱射した人物らは現在も逃走中。
警察および政府筋によると、警察はパリ周辺に住む兄弟と仏北東部ランス出身の男計3人の行方を追っている。3人全員がフランス国籍で、うち1人は過去にテロ関連の容疑で裁判にかけられたことがあるという。
シャルリエブドはイスラム教の預言者ムハンマドを題材にした風刺画などを掲載したことがあり、死亡が確認された12人のうち10人が同紙の社員。死者には編集長のステファン・シャルボニエ氏も含まれ、警察官2人も死亡した。
この他11人が負傷、うち4人が重体となっている。
今のところ犯行声明は出されていない。ただ、現場近くの建物の屋上から撮影されたビデオには、乱入した男の1人が銃を乱射しながら「神は偉大(Allahu Akbar)」と叫んだ音声が収録されており、警察が関連を調べている。
フランスのテレビ局iTELEが放映した映像には、「シャルリエブドを殺した。預言者ムハンマド(の冒涜)にかたきを討った」との叫び声も収録されている。
また、日刊紙20ミニュートが目撃者の話として報じたところによると、男の1人は乱射後車に乗り込む前に「イエメンのアルカイダとメディアに伝えろ」と叫んでいたという。
事件発生を受け、オランド大統領は現場に急行。パリ中心部で発生した事件について「信じがたく野蛮」と非難。犯人の身柄確保に全力を尽くすと述べた。政府は事態について協議するため緊急会議を開催する。
バルス首相によると、パリ市内の主要交通機関、宗教施設、報道機関の施設のほか、買い物客が集まるデパートなどで厳重な警戒態勢が敷かれている。
事件についてドイツのメルケル首相は、「報道の自由、および報道機関という、われわれの民主的な文化の根幹に対する攻撃」として非難。
米国のオバマ大統領も声明を発表し、「米国の最も古くからの同盟国であるフランスは、米国のテロとの戦いに寄り添ってきた」とし、「米政府は仏政府と連絡をとっており、テロ行為を行った人物に公正な裁きを受けさせるため、仏政府に必要な支援を行うよう指示した」と述べた。
また、仏イスラム評議会(CFCM)のダリル・ブバクール会長は今回の事件について、「民主主義、および報道の自由に対しても非常に野蛮な行為」と非難。実行犯は真のイスラム教徒を名乗ることはできないと述べた。
フランスは前年、テロ対策法を強化。イスラム過激派「イスラム国」への空爆にフランスが参加していることへの報復としてイスラム武装勢力がフランスに対し攻撃を加えると予告したことを受け、警戒を強めていた。
フランスでは極右政党の国民戦線(FN)が外国人移民に対する不満層を中心に支持を伸ばしており、今回の事件が反イスラム運動の推進に利用される恐れがあるとの懸念も一部で出ている。
国民戦線のルペン党首は、政治的な結論を出すには時期尚早としながらも、「今回の事件でイスラム教原理主義に関連するテロの脅威が増大したことは明白な事実だ」と述べた。
隣国ドイツの反移民運動団体も、今回の事件を受けイスラム教関連の暴力の脅威が浮き彫りになったとの見方を表明。同国でも、5日にドレスデンで開かれた反移民運動の大会に過去最多となる1万8000人が参加するなど、移民に対する不満が高まっている。