激震の「新卒採用」 「変革期」のADKは個性重視、CAは500人にインターン必須化

ADKは「スタメン採用」、サイバーエージェントは「全員インターンシップ」を導入する。

人手不足で「超売り手市場」と言われる大学生の就職戦線。有能な人材を確保しようと、広告大手も従来型の採用手法を変える動きが出ている。

アサツー ディ・ケイ(ADK)は2020年卒採用から、"一芸"を重視した「スタメン採用」を始める。

学生は設定された9つのタイプの中から、自分の強みに最も近いひとつを選び、エントリー。エントリー後は、自分と同じ分野を選んだ学生と選考に進む。

同じ人材像を目指す学生同士が競争することで、全方位型の学生ではなく、9つの領域それぞれに特化している『トガった』人材を採用する方針だ。

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スタメン採用ビジュアル
ADK提供

同社によると、9つの人材像は約100名の現場で活躍する社員にアンケートをした結果を基にした。「THE INNOVATOR:世の中に大きな影響を与えたい。野心家」や「TECH-GEEK:目新しいテクノロジーやデータを扱うのが好き」など、少し極端に見えるほど個性的なものが並ぶ。

ADKは2017年、アメリカの投資ファンド・ベインキャピタルによるTOBが成立している。その後、上場を廃止し、組織体制も一新する中で、なぜ「スタメン採用」なのだろうか。

TOB後について、殿村良彦人事・総務本部長は「社内は期待に満ちています。新しいことにチャレンジできる環境が整いました。これから変わるタイミングです」と語る。

採用担当者は「ビジネスモデルが曲がり角を迎える広告業界の中でも『新しいことをしようとしている企業』と認知されている実感があります」と胸を張る。ここ数年でエントリーする学生の数は急増したという。

「スタメン採用」の意図については「『変革期』の弊社に一番合う個性的な人材を採りたいんです。」と明かした。

しかし、個性の強い学生を採用すれば、現場で衝突が起こらないのだろうか。

今回の企画を手がけたクリエイティブディレクター/プランナーの才川翔一朗さんは「スタメン採用で入社する人は『優秀だけど型にはまらない人』が増えると思う。でも、そういう人を扱えなければ会社は変われない。現場で衝突が起きた時は先輩が自分を省みる必要があると思う。その人が、変わろうとしていないということだから」と説明した。

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左から、アートディレクターの野村緑さん、人事・総務本部本部長の殿村良彦さん、クリエイティブディレクター/プランナーの才川翔一朗さん
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一方、サイバーエージェントは2020年卒採用から、総合職の選考を受ける全員に「インターンシップ」として働くことを経験してもらう。

選考で実施されるのは、最大で3日間のインターンシップ。大学生に擬似的な就業体験をさせるこれまで通りの方法と、社員の元で実際の職場に入って仕事に携わる「弟子入り」の2種類。どちらも朝から夕方まで丸一日かけて人物や能力などをみる。

同社の広報担当者はインターンシップについて「学生は『面接対策』をしてきます。短時間の面接ではお互いに、本当の人柄などはわからない。入社後のミスマッチによって離職してしまうのを防ぐため」と導入の意図を説明した。

3度の面接を経て、4次選考での導入だが、想定では500人がインターンシップをすることになる。

同担当者は「正直、コストは大きい」と率直に語る。「しかし、我々は『カルチャーに合うか』を採用において重視しています。当社に合う人材かを見極めるためと考えれば、決して無駄ではない」と話した。

リクルートキャリア就職みらい研究所所長の増本全さんによると、最近の新卒採用の傾向として、大手企業でさえ採用予定数を満たしているのは約半数という厳しい現実がある。

さらに、レビューサイトやSNSが発達したことから、「採用側が耳障りの良いことを言っても、学生にはすぐにバレてしまう。むしろ実情をさらけ出して、入社後のギャップをなくすことが重要」と指摘した。