「女性への勝手なジャッジや期待は本当にイヤ」 CHAIのパンクマインドは愛せる自分になること

「もしもブスという言葉に傷ついてしまった時には、私はブスじゃない「NEOかわいい」だよって思って欲しい。」『コンプレックスはアートなり』をコンセプトに掲げる4人組のバンドCHAIは語る。
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左からマナ(Vo,Key)、ユナ(Dr,Cho)、ユウキ(Ba,Cho)、カナ(Vo,Gt)
井手野下 貴弘 / IDENOSHITA TAKAHIRO

「コンプレックスはアートなり」をコンセプトに掲げる4人組のバンドCHAI。

2015年より本格的に活動を開始し、その個性的な音楽とビジュアルは多くのメディアで話題となった。

そんな彼女たちが先月発売した2ndアルバム「PUNK」のテーマは、「なりたい自分になる」。そこに込められた思いについて聞いた。

 

いろんな顔があって当たり前なんだから

ーー「ブス」という言葉について皆さんはどんな印象を持っていますか?

ユウキ:私たちこの言葉を使わないよね。そもそも存在を消してしまっているから意識もしない。この言葉を使ったり使われたりして幸せになれる人なんていないと思う。

ユナ:本当に言葉の暴力だっていう感じがするね。無差別に暴力を受けるような気持ちになる。ブスだとかそうじゃないとか、一体何が基準で決めるんだろう。

マナ:「ブス」も「かわいい」も、褒めるか、けなすかっていう、女性だけに向けられた言葉だという気がしてしまう。なんで女性だけが勝手にジャッジされなきゃいけないんだろうと思うし、かわいくいることへの勝手な期待も本当に嫌。いろんな顔があるなんて当たり前なんだから。その疑問とか憤りを私たちは歌詞にしてる。ちょっぴり皮肉も込めて。

「かわいいひとは

すぐにみあきてしまうものよ

かわいいひとは

すぐにみあきてしまうものよ

だからこそではないけど

ちょっとブスなひとのほうが

かわいいぶぶんをみつけるのに

じかんがかかるからみあきない」

―CHAI「かわいいひと」 

「つまんないなんて変じゃない?

全部同じ顔なんて変じゃない?

キレイキレイしすぎ

個性はどこにある?

 

つまんないなんて変じゃない?

全部同じ顔なんて変じゃない?

そのままがずっと

誰よりも可愛い」 

―CHAI「N.E.O.」

 

男性基準の美意識への反発とモテたい気持ち

――モテたいという気持ちから、男性基準の美意識を完全に無視できない女性もいると思います。どう折り合いをつけていますか?

マナ:もちろんモテたいっていう気持ちもめちゃくちゃよくわかるけど、それを一番にしてしまうと、自分の人生なのに常に他人に左右されてしまって、それが本当に自分の気持ちなのか見失ってしまわないかな? でも、男性にモテる自分が好きだっていう女性もいると思うから、それはその道を突き進んでいけば素敵だと思う。

ユナ:モテるモテないって、顔面のことについての基準だという固定概念がどこかある気がして。でも、そこじゃないよねって思うんだよね。内面でモテるとかもいいんじゃない? って。モテるにもいろいろあるから。もはや、そこを見てくれない人は恋愛対象外でもいいくらい。

 

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井手野下 貴弘 / IDENOSHITA TAKAHIRO

 

 

「かわいい」という言葉にも、日本の女の子は苦しんでいる 

ーー最新の2アルバム「PUNK」は、CHAIのパンク精神がテーマになっていますが、ここで掲げたパンク精神とは何か、聞かせてください。

ユナ:自分の気持ちに正直に、なりたい自分になるっていうこと。決して音楽ジャンルの話じゃない。でも、それがすごく難しいことだということはわかってて。私も今まで、学校とかバイトとか、組織の中に入る度に、そこにはすでに模範解答やお手本が用意してあって、それに従っているうちに自分の気持ちを曲げたり無くしたりしてきた経験はたくさんあるから。そんな中でも、まずは自分の気持ちに素直になることから始められたらいいなって思ってる。

カナ:私たちはやっぱりライブの時が一番パンクだと思う。4人でしか出せない音と、歌えない歌があって、唯一無二の存在でいられる。私たちの好きなウルグアイ代表のサッカー選手、ルイス・スアレスは、試合中、闘志のあまり敵に噛み付いちゃうぐらいなんだけど、その噛みつきたいくらい勝ちたい、という気持ちには愛も感じるし、すごくパンクだと思っていて、ライブの度に彼を思い出すんだよね。

 

 

ーーそんなパンク精神があれば、女性たちはこれからより自分らしく生きることができるでしょうか?

マナ:女性も男性もみんな生きたいように生きてほしいって思う。だって、人生は一回しかないから、なりたい自分にならなきゃもったいない。でも、私たちは普段、人生が一回しかないってことをつい忘れてしまっているんだよね。

カナ:生まれた時から絶対みんな強さを持ってると思うんだよね。時間はかかるかもしれないけれど、自分のしたいことや、好きなことをやっていくうちに「私って強いんだ」ってことに必ず気づけると思う。

ユナ:私たちはいつも何かに比べられて生きているじゃない? だからありのままでいられなくなって、自分の気持ちにも素直になれなくなっちゃう。まずは自分を一番最初に認めてあげてほしい。誰とも比べずに、自分で自分を愛せたら幸せに生きられると思うな。

ユウキ:もしもブスという言葉に傷ついてしまった時には、私はブスじゃない「NEOかわいい」だよって思って欲しい。

日本の女性たちは、「ブス」と同じくらい「かわいい」に苦しむと思う。その言葉は魔法みたいに嬉しいけれど、同時にもっとかわいくならなきゃ、かわいくなくちゃいけない、という呪いになって私たちに付きまとってくる。CHAIが作った「NEOかわいい」という言葉は、生まれた姿そのままの個性がかわいいんだよっていうこと。それがずーっと私たちを守ってくれる本当の魔法の言葉になると思ってる。 

 

自分のコンプレックスを褒めてあげることが大切

 

ーーそうはいっても、自分に自信を持つということはなかなか難しい。どうすればいいでしょうか?

カナ:CHAIはみんなやっているんだけど、毎日鏡を見ながら「私はここがかわいい」とか、「自分の顔が好きだ」とか、おまじないみたいに言い続けていると、だんだん勘違いできてくるんだよね。そうやって毎日自分を肯定し続けることで、少しずつ自信がついてくるんじゃないかな。

ユナ:自分を褒めてくれる人を周りに見つけることも大切だと思う。日本人は他人を褒めるのが少し下手なところもあるから、そういう人を見つけるのは苦労するかもしれないけれど……。

ユウキ:自分が褒める人になったらいいよ。褒められたら誰でも嬉しい。まず他人を認められたら、自分も認めてもらえるんだと思う。

マナ:コンプレックスを自分で認めたり、口に出したりすることって、なかなかできないよね。「私、目が小さいんだよね」とか。

ユウキ:だからやっぱりまずは鏡に映る自分に向かって口に出してみる。それで「私の目、すごいかわいい」とか「私の眉毛、今日も素敵」とか、そのコンプレックス一つ一つを自分自身で逆に褒めてあげる。

もちろん私たちも完璧にコンプレックスがゼロになることはないし、むしろこれから歳を重ねていけば、違うコンプレックスもどんどん増えてくると思うし、でもそれをちゃんと自分で認めたいと思ってる。

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井手野下 貴弘 / IDENOSHITA TAKAHIRO

 

「俺の彼女は、NEOかわいい」海外で感じた個性を認めない日本

ーー昨年は、海外に行かれる機会も多かったかと思うのですが、日本と比較して感じるルッキズムなどはありましたか?

ユウキ:どんな国の人にもコンプレックスはあるし、それぞれの国の価値観があった。日本は、女性に対してのわかりやすい褒め言葉の一つとして「かわいい」があるけど、アメリカだったら「ビューティー」とか「セクシー」とか。そしてそれに対しての苦しみがやっぱりあって。

でも、特に日本は個性を認めない国という気がする。ライブのノリ方にしても、みんな同じがいい、という感覚があると思う。

マナ:アメリカで、自分の彼女を「俺の彼女はNEOかわいい」って褒めてる男の子がいたよね。彼女は隣でそれをとても嬉しそうにしていて、日本ではなかなか見られない光景だなと思った。

ユナ:そんな彼氏、本当に素敵だよね。

ユウキ:でも、最近は日本も「多様性」ということが浸透してきていると思うから、これからどんどん変わっていくといいなと思うな。

(取材・文:秦レンナ 編集:泉谷由梨子)

 

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