そのためレコード会社は、そういった地域でアルバムをリリースするときには2種類のジャケットを用意することがよくある。1つはセクシーなオリジナルのジャケット、もう1つは修正して肌の露出を抑えたジャケットだ。
その2つのバージョンを、デイリー・メール紙が紹介している。たとえばレディー・ガガの2013年のアルバム「アートポップ」の修正バージョンでは、元々は何も身に付けていなかったレディー・ガガの脚が服で覆われており、体の前にあったボールが大きくなって胸を隠している。
また、2001年のカイリー・ミノーグのアルバム「フィーヴァー」では、写真が加工され、彼女は全身を服で覆った姿にされている。
アメリカからサウジアラビアのジッダに移り住んだ、ブロガーのスージー・オブ・アラビアさんは、女性がうつっている写真の検閲は日常的に行われているが、対象は無作為に選ばれているようだとハフポストUK版に話してくれた。
「雑誌や製品パッケージ、CD、医学書など、女性の写真がメインで使われているようなものは修正されていることがありますが、ただいつも修正されているわけではありません」
ショッピングセンターで見かける写真のなかには、女性の顔写真にモザイクがかけられたり、ぼかされたり、ときには完全に消されていたりすることがよくある一方で、そのまま手つかずのものもあるそうだ。また、子供や男性の顔がぼかされていることがあるが、女性ほど多くはないという。
またデイリー・メール紙は、サウジアラビアには「勧善懲悪委員会」の名で知られる宗教警察があり、政府の資金援助を受けてCDジャケットを手作業で修正していると報道しているが、スージーさんも「女性の素肌に黒のマーカーを塗って、服を着せたかのようにしているものもあります」と説明する一方で、「修正方針には統一性がないので、やや戸惑いを感じます」とも話す。
なぜ検閲が無作為に行われているのか、ということについて、スージーさんは満足できる回答を得られたことは一度もないそうだが、たいていは宗教が理由に挙げられるという。
宗教が検閲に影響を及ぼしていることは驚くことではない、と女性の体に対する検閲の反対キャンペーン「Free The Nipple」を主催しているリナ・エスコさんは話す。
「何をポルノとみなすかについて、それぞれの文化や宗教で違います。ただ、社会が女性の体を恐れる風潮がいつかなくなることがあるのだろうか、と考えてしまいますが...」
検閲を男女平等の問題だと見る人もいる。フェミニスト活動を応援するウェブサイト「Soap Box Inc」を運営しているエイミー・リチャーズさんは、写真が修正されているのは女性ばかりであり、これは、女性差別の問題だと話す。
「私は検閲に反対です。写真が修正されているのは女性ばかりです。これは女性に対する差別であり、単なる言論の自由や表現の自由の問題ではありません。男性シンガーのCDジャケットも、果たして同じように検閲しているのでしょうか?」
このように検閲や写真修正を反対する声がある一方で、すべての人が検閲が悪いことだと考えてはいないようだ。
修正前と修正後のジャケット写真を載せているネット掲示板には、「修正されたCDジャケットの中には笑えるものもあるけど、中東の文化が尊重されているのはよいことだね」というコメントも書かれている。
「それに服を加えられるよりずっと悪いことをされることもあるんだし...」
この記事はハフポストUK版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]
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