『人活』〜ミドル人材の転職に政府が大型予算=政府主導の転職時代がやってくる

政府主導でミドル人材(団塊ジュニア世代含む)の転職を促す時代がやってくる。厚生労働省は、転職支援の助成金を大幅に増額しする。いっぽう、解雇を防ぐために支給している補助金は削減するという。
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London, England.
Getty

政府主導でミドル人材(団塊ジュニア世代含む)の転職を促す時代がやってくる--。

厚生労働省は、転職支援の助成金を大幅に増額し、およそ300億円を来年度予算案の概算要求に盛り込んだ。NHKニュースによると、解雇を防ぐために支給している『雇用調整助成金』は昨年の1100億円余りを来年度予算案では545億円と半減させる一方、『労働移動支援助成金』は昨年度の2億4000万円から301億円として、概算要求に盛り込んだという。この補助金では昨年は744人が転職したが、来年度は、およそ7万人分として要求するということだ。

なぜ政府が、わざわざ民間人の転職をテコ入れをするのか。

みずほ情報総研の田中文隆氏は、政府が掲げる「健康」「クリーンエネルギー」「次世代インフラ」などの成長戦略分野における即戦力を獲得するためと分析している。

戦略市場を拓いていくためには、教育戦略も含めた若年者の育成・入職支援が重要であるが、即戦力としては、経験とスキルを有するミドル層の労働移動が求められている。

(みずほ情報総研「ミドル層の労働移動―再興戦略にみる雇用政策の転換の意味」より。 2013/08/06)

田中氏は、アベノミクスの成長戦略では、「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」が掲げられていることをあげ、即戦力の獲得のために、民間における転職を支援する策として、経済産業省がスタートさせた『人活』という支援制度を紹介している。

『人活』制度は、「多様な『人活』支援サービス創出事業」と呼ばれ、特定の条件を満たす“企業”に対して、補助金を出すというもの。その特定の条件として上げられたのが、簡単にいえば「“スキルと経験をもつ社会人”に対し、再教育からマッチングまでを支援するサービスを提供する」というものだ。

経産省では“スキルと経験をもつ社会人”の目安を35歳から65歳としている。まさに団塊ジュニア世代も該当する。

この事業には、パソナテンプスタッフ・ピープル株式会社などが採択され、それぞれ、35歳以上の“ミドル人材”の転職支援のために様々なサービスを提供するとされる。

例えば、株式会社walkntalkでは、育児等で一旦キャリアが中断している人を対象に、現業を続けながら参加可能な3ヶ月間の『社会人インターン』制度を創設。インターン参加者は、インターン先企業から出されるテーマを元に、“企画書”を提出する。その間のサポートをwalkntalkが行うが、最終的には企業と参加者との間で採用が決定される。

また、パソナインテリジェンスでは、“出向”という形で企業人材を橋渡しする。出向元企業から人材を受け入れ、戦略立案やリーダーシップなどの各種教育を行った後に、出向させる。出向期間が経たあとは、本人の意思や企業側の評価によって、受け入れ先に転職するか、元の企業に戻るかを決めるという。

しかし、いくら政府が主導すると言っても、転職希望者が増えなくては意味が無い。現状における転職希望者は、増えているのだろうか。

完全失業率(季節調整値)は6月の時点で3.9%となり、安倍政権が発足した昨年12月の4.3%比べて0.4ポイント改善。転職希望者も、石川県では前年同月比0.9%増、栃木県でも15.1%増と報じられている。

転職求人も増えており、株式会社リクルートキャリアが8月20日に発表したプレスリリースによると、同社が運営するリクルートエージェントにおける求人数は、右肩上がりで推移しているという。なかでも、インターネット専門職(Webエンジニア含む)や、医薬品・医療機器の研究開発従事者、営業などの求人数が増えているが、逆にオフィスワーク事務職や編集職・ライターなどの職は伸びが鈍く、転職求人倍率(求人数÷転職希望者数)が1倍を切っている。

また、35歳以上の転職について、興味深いデータがある。35歳以上になると転職時の年収アップは、さほど望まないという調査結果だ。インテリジェンスが8月26日に発表した調査によると、転職での年収アップ希望額は、平均で約100万円であることがわかっているが、直近の2013年4月~6月調査について年代別に見ると、24歳以下は135万円、25~29歳は72万円、30~34歳は74万円と比較的高額なのに対し、35歳以上は38万円、40歳以上は25万円となっていたとのことだ。同サイトは「40歳以上になると、自分の経験やスキル、また職種や業界の相場観が分かるようになることなどから、大幅アップよりも現状維持にシフトするようです」と分析している。

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安倍政権では、ジョブ型正社員制度や、労働者派遣法の大幅な見直しがあると言われている。自分のこれからのキャリアをどう作ってゆくか、団塊ジュニア世代も考える時期ではないか。

雇用環境の変化と各種の政策について、あなたはどのように考えますか。特に団塊ジュニア世代の方、ぜひ意見をお寄せください。

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