現状、介護職員の賃金水準は低い。これを全産業平均並みに引き上げるとしたら、どのくらいの財源が必要となるか、試算してみた。
下の資料にあるように、厚生労働省「平成25年賃金構造基本統計調査」によると、「産業計」が32.4万円で、「ホームヘルパー」は21.8万円。その差額は10.6万円。
平成21年10月〜平成24年3月の2.5年の時限措置として、介護職員の月給を平均1.5万円引き上げる『介護職員処遇改善交付金』が実施された。この時の予算額は総額3975億円。
これは、全国平均で介護職員(常勤換算)1人当たり月1.5万円に相当する額として設定された。当時の厚労省の説明では、この1.5万円とは、あくまでも交付率を決定するために用いた指標であり、事業の規模や職員体制によっては全ての事業者に介護職員1人当たり月額1.5万円の助成が行われるわけではないとのこと。
精確性を追求せずに、あくまでも目安程度の概算で見積もると、介護職員1人当たりの給料を月1.5万円引き上げる予算額は、年間で1590億円(=2975億円/2.5年)となる。これを基にすると、次のようになる。
・介護職員1人当たり月3万円引き上げるのに必要な予算額:年間3180億円
・介護職員1人当たり月6万円引き上げるのに必要な予算額:年間6360億円
・介護職員1人当たり月9万円引き上げるのに必要な予算額:年間9540億円
但し、これは平成21年度での介護職員数141.3万人を対象としていると思われるので、直近の介護職員数(平成25年度で176.5万人)に補正すると、それぞれ以下の通りとなる。
◯介護職員1人当たり月3万円引き上げるのに必要な予算額:年間 3972億円
◯介護職員1人当たり月6万円引き上げるのに必要な予算額:年間 7944億円
◯介護職員1人当たり月9万円引き上げるのに必要な予算額:年間1兆1917億円
この試算方法を基にすれば、介護職員(平成25年度現在で176.5万人)1人当たり月10.6万円引き上げるのに必要な予算額は約1兆4千億円となる。この財源をどこから捻出するかが最大の課題となるが、それはまたいずれ。
こうした試算は本来、厚労省が実施しておくべきことだが、どうやら公式には実施していないようなので、私がここで一つの試算として呈示してみた。この試算の正否や適否に関して議論が起こることを期待したい。
<資料>
(出所:厚生労働省資料)