キヤノン、下方修正でも「1400万台売れる」と強気 その理由とは?
キヤノンは24日、12月期の連結純利益(米国会計基準)の予想を2400億円と下方修正する発表をした。デジタル一眼カメラの販売台数も、2012年の820万台から、2013年は800万台と予想。
年間営業利益の見通しは、3800億円から、3600億円に修正した。この数字は、米大手情報企業、トムソン・ロイター・エスティメーツの専門家23人による予想平均の3785億円を下回っている。また、年間の売上は、3.85兆円から3.75兆円に減少する予想だ。
【下方修正の要因】
下方修正の背景には、コンパクト型デジタルカメラ市場の不振、中国市場でのレンズ交換式カメラ販売の鈍化などがあると報じられている。
ただ、ロイターは、一眼カメラ売上の伸び悩みについて、「市場飽和などの構造的な問題ではなく、世界経済の悪化が大きな理由だ」、との専門家の分析を取り上げている。
フィナンシャル・タイムズ紙も、ヨーロッパの不安定な経済情勢、アジア新興国の経済減速を、下方修正の要因と指摘している。なお同社の売上は、海外が約8割を占める。
またキヤノンは、「特に、個人消費者に狙いをさだめた年末商戦は、事業全体に大きく影響するが、見通しの不確実さが残る」と修正の理由を説明している。
この他、フィナンシャル・タイムズ紙は、コンパクトカメラが、スマートフォンとのきわどい競争にさらされているだけでなく、インクジェットの需要も主にアジア地域で減少することが予想され、この先も厳しい状態が続くとみている。
【利益回復に自信】
ところが、利益予想を下方修正したのにもかかわらず、コンパクトカメラの販売台数の見通しを1400万台と変更していない、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。
キヤノンの田中稔三副社長は、最近の売上の減少は、「一時的なものに過ぎない」と強気だ。同氏は、最新の一眼レフカメラ「EOS 70D」の堅実な売れ行きを指摘しながら、「日本では他の国に先がけ、経済回復に明るい兆しが見えている。カメラの売上も伸びを見せ始めている」と、話す。海外の市場についても、「経済の回復につれ、カメラの売上が増加することを期待している」と前向きだ。
実際、明るい数字もある。円安の影響が大きいのだが、キヤノンは、9月の第3四半期に純利益を500.14億円から、前年同期と比べると17%増しの、588.2億円としている。
フィナンシャル・タイムズ紙は、高品質カメラを開発し、マニアだけでなく一般の消費者にもその販売拡大を図ることに焦点を絞る同社の戦略が、最新機種の売れ行きを見る限り、功を奏しているようだ、と報じている。この新機種は、9月まで3ヶ月連続して売上が伸びているという。専門家は、「最高品質の一眼カメラに主眼を置くことは、スマートフォン市場との差別化をすすめる」有効な策だとみている。
また、キヤノンは、カメラやプリンターなどのハードだけではなく、印刷サービスなどのソフト分野への展開も図っているようだ。
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