早期発見が難しく典型的な難治がんである膵臓(すいぞう)がんの目印となる血液中の物質を見つけたと、国立がん研究センター研究所の研究グループがこのほど発表した。神戸大学グループと共同でこの物質が膵臓がんに適した腫瘍マーカーとして検診に活用できるか近く検証する。有効であることが確認できれば早期発見につながると期待される。
膵臓は、膵液と呼ばれる液体を分泌して消化や血糖値の調節などに関わる大切な臓器。膵臓がんは、増加傾向にあり年間3万人近くが死亡。早期段階では症状がほとんどなく、進行も速いために早期発見が難しい。外科手術が基本的な治療法だが、膵臓付近は細い血管が複雑に絡んでいることなどから高度な技術が必要だ。5年生存率は約10%、2年以内の再発率は約7割という難治がん。現在人間ドックなどで使われている腫瘍マーカー「CA19-9」は早期膵臓がんの検出精度は高くない、と指摘されている。
研究グループは、米国立がん研究所との共同研究で、コレステロールの形成に関与するタンパク質(apoA2)の一種が、ステージ(進行度)1や2の患者の血液で健康な人の半分以上減少していることを見つけた。日本人の血液検体検査では、CA19-9と比べて高精度で早期膵臓がんを検出できた。研究グループは、既に血液検査用のキットの試作に成功。神戸大大学院医学系研究科と協力し、健康診断受診者のうちの希望者を対象にこのキットの実用化検証を近く開始する、という。
関連リンク
・国立がんセンタープレスリリース「膵がん早期診断発見の血液バイオマーカーを発見」
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