がん患者の私が、世界を受け入れる方法。それは......

ひとりのがん患者である私は、すべてをコントロールすることはできません。
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prudkov via Getty Images
Young woman suffering from cancer leaning on the hospital window.

私の家を見れば、私のことをコントロールフリーク(人間でもモノでも、自分の周囲のことはすべて思い通りになってほしいという支配的欲求を持つ人)だとは思わないでしょう。所定の場所に収まっているものよりも、別の場所に置かれているもののほうが多いくらいです。いくつかのものは、決まった置き場所なんてありません。服とか台所用品とか飾りがあちこちに転がっていて、置き場所はしょっちゅう変わります。それでも気にならないのです。

私はいつも、自分が身の周りのものをコントロールできないと分かっています。それよりもつらいのは、自分の中にあるものもコントロールできていないことなのです。

病気から勇気をもらう

私はリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん)と呼ばれる遺伝性の病気をもっています。乳がんを引き起こす遺伝子と同じくらい一般的なものです。リンチ症候群は、私が17歳と25歳のときに発症した大腸がんの原因となる病気です。この診断の背景に遺伝性疾患の存在があると分かって良かったと思っています。

私が正式にリンチ症候群だと分かったとき、逆に力が湧いてきました。自分が突然スーパーヒーローに変身したように思え、マントを探しに行きました。私は世界を救うためのミッションにとりかかりました。

そして、私はそのミッションに専念してきました。

私は、他のがんサバイバーや介護者、愛する人々とともに、大きな目的のために力を合わせてきました。私は毎日がん問題のために働き(実際、Fight Colorectal Cancerに勤めています)、自分のスキルを生かして目標に進んでいきました。若いがん患者のための組織をいくつかサポートし、研究のために寄付しています。検査を受けるように周りの人々に勧め、その理由を説明するためのキャンペーンを立ち上げています。セレブリティや政治家、企業の役員、トップリーダーたちと一緒に働き、大腸がんに関する彼らの情熱を世界に伝える活動をしています。本当の意味でスーパーヒーローのモデルとなることを目指し、すべての活動で私は自分のミッションに集中してきました。

あまりに集中しすぎてしまったためか、私自身のリスク、そして私ががん患者であるという現実は、なんだか消え去ってしまったように思うほどです。

現実を診断する

これは、何か目標に向かって活動しているときに起きる面白い現象です。食事や運動、交友関係、恋愛など、がんがもたらす苦痛を癒すことに没頭しているときにも同じことが起こります。

自分の周りには目に見えない変化が起きていると考えるようになり、あなたが行っている仕事や感じている愛情のすべてが、自分のために新たな現実を作ると信じるようになります。

あなたは、どういうわけかリスクを抱えていると感じなくなります。

もう一度病気になることはないと考えます(これは恐怖を乗り越えるための単純な希望なのかもしれません)。

困難の数々を予期しなくなります。

あなたは、痛みに通じるドアが開かないよう、鍵をかけます。かすかに、そしてたいていは無意識のうちに、あなたはなんとか支配権を握ったと思うようになります。これは、現実が再び襲いかかってくるまでのことです。

そこで、あなたはコントロールを失ったと気付くのです。

弱気が顔を覗かせる

しかし、入院しているときや、CTスキャンで疑わしい場所が見つかったとき、もしくは前がん性のポリープを抱えているときになると、心の片隅にある、コントロールフリークな人ならではの弱気が顔を覗かせるのです。

そして、疑わしい場所が何でもなかったと分かったり、ポリープが取り除かれた後でも、コントロールフリークのがん患者を襲った感情の嵐や、心をかき乱す狂気が取り除かれることはありません。そのうち、あなたの心の中に次のような感情が渦巻いてきます。

自分ががんや遺伝性疾患を選んだのではなく、そうした病気が自分を選んだことに対する怒り。

仲間のがん患者たちに別れを告げるときに感じる、深い喪失感や痛みを伴った悲しみ。

自分の配偶者や子供の目を見つめ、自分の病気が彼らにも影響を与えると知ったときに、じっくりと向き合えない罪悪感。

不安の影のなかに潜むものに対する恐れ。

自分のがんはコントロールできない、あるいは、実際にはあらゆることがほとんどコントロールできないことを知ったときに、心の底からくるフラストレーション。

こうした考えは頭の中を巡り続けます。あなたが手に入れられないもの、そして、あなたをここまで思い悩ますもの。それこそがあなたをこの状態から救い出してくれる唯一のものです。それがコントロールなのです。

自分が変えられるものを受け入れる

神よ、変えることのできないものを受け入れる冷静さを与えたまえ。

変えることのできるものは、それを変えるだけの勇気を与えたまえ。

そして、その違いを知る知恵を与えたまえ。

アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーが書いたとされる祈りの言葉「ニーバーの祈り」の一部です。この祈りは、映画や本の中、あるいは会議や軍隊などで使われてきました。簡単にいうと、この世の中にはコントロールできるものと、コントロールできないものがあります。コントロールフリークではないがん患者として私がこれを祈るとき、私はコントロールできるものとできないものを学ぶ必要があります。

ポリープができることや、遺伝子が変異することは自分の力では止められません。現在も将来も、どのような恐怖や現実が自分の身にふりかかるのか、あるいはふりかからないのかをコントロールすることはできません。

しかし、私は生き抜くために必要な身の周りのものはコントロールできます。

私は積極的に自分の研究を行ったり、今後の計画を立てたりすることができます。もし今日だけだとしても、この1日を良い気分で過ごすために健康的な生活を送れます。自分が考えることや、それに関して自分がどう思うかをコントロールできます。そして、自分の周りに誰がいてほしいかを選ぶこともできます。

大抵の場合、友人や家族からテキストメッセージや電話、メールをもらうと、不安な気持ちが和らぎます。愛情や友情、そして希望が心の安らぎをもたらしてくれます。

ひとりのがん患者である私は、すべてをコントロールすることはできません。でも、いくつかはコントロールできます。私はがんを克服する方法を知ろうとしているだけではなく、コントロールできるものとできないもの違いを知ろうと努めています。

このブログはハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。