取材・執筆・撮影:雷 国悦
早稲田大学のキャンパスを回るツアーは、年間1万5千人が参加する国内最大規模の人気ツアーだ。1989年のスタートから25年。これまでの参加者数は23万人を超え、質の高い学生ガイドに支えられている。
ツアーは、大学を開放する取り組みの一つとして、より多くの人々に大学に親しんでもらおうと企画された。早稲田キャンパスのほか、戸山、西早稲田、所沢の各キャンパスでも行われている。
早稲田キャンパスでは、国の重要文化財に指定されている大隈講堂から始まり、坪内博士記念演劇博物館、中央図書館、大隈銅像などを90分で回る。キャンパス内に見どころが多いのに加え、インフォメーションスクエアでツアーを担当している吉光崇裕さんは「質の高い学生ガイドの案内も、人気や好評をいただく理由ではないか。やはり25年の歴史と伝統がありますから」と話す。
ガイドを担当するのは、すべて現役の早大生だ。この25年で計300人以上の学生がガイドの仕事をしてきた。現在、ガイドに登録しているのは27名だ。
ガイドになるには、大学に誇りを持っていることはもちろん、先輩の指導と計18時間以上の研修を受けなければならない。正規なガイドとして参加者を案内するためには、大学に関する豊富な知識など必要な技術は多岐にわたる。新人1人が模擬ツアーを行い、先輩2人がそれを厳しい目で確認し、足りない知識や技術を指摘し、改善を促すという個別指導のかたちの研修が行われている。
ツアー参加者は、入学をめざす高校生や、東京への観光客などが多い。高校生にとっては、ガイドをする現役の大学生から話を聞くことで大学への憧れや勉強の励みにつなげる役割を果たしている。海外からの参加者には、「アジアを代表する大学」であると認知してもらう機会になるという。
政治経済学部3年のドイル彩香さんは2012年3月に正式のガイドとなり、これまで様々なツアーを担当した。「ツアーに参加する方の側からすると、(大学の側は)私一人じゃないですか。私を通して、早稲田像や学生像ができるかと思うと、すごく重い責任を感じます。そういう意味で、自分の成長にもなると思います」と話し、「おもてなしのキャンパス案内」を意識している。
中国・貴州大学1年の張婷さんは、中国でも有名な早大の雰囲気を体験したかったため、短期交換留学の期間中、ツアーに加わった。「参加する前は、『有名な大学』としか知らなかった。実際に回ってみて、学術的な雰囲気がすごくあるし、ベンチで読書をしている学生がいるのにも驚いた。なぜ早稲田が一流の大学なのか、何となく分かった気がする」と語った。
今後は、新3号館が完成すればツアーコースに加わりそうだ。さらに、ガイドなしで見学したい人たちに向け、案内板の整備などサービスの充実も検討しているという。
(2014年9月7日「Spork!」より転載)