ドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利して以来、カリフォルニア州の独立運動(カレグジット)を率いていた共同発起人ルイス・マリネリ氏が4月17日、カリフォルニア独立事前投票を求める自らの請願書を取り下げ、ロシアに永住すると明かした。
マリネリ氏に「イエス・カリフォルニア独立キャンペーン(YC)」のWebサイトに長文の決別声明を掲載し、自らの転向を発表した。「私はアメリカ国旗の下で暮らしたくない」とマリネリは綴った。「アメリカの政治体制の下でも、アメリカの経済システムの中でも生活したくない」
離脱運動が始まったのは、トランプ大統領が当選する前のことだった。しかしYCの共同発起人の1人マーカス・ルイス・エバンス氏(現在は別のグループと共に新しく独立運動を推進中)はロサンゼルス・タイムズの取材に対し、事前予想に反してトランプ大統領が誕生したため、独立を求める署名を集め、請願書を州司法当局へ12月に提出しようという運動は勢いを増したという。
マリネリ氏の声明を読んで驚いた人は多かった。しかし、マリネリの「カレグジット」運動の本拠地はサンディエゴとされていたが、本人は以前からシベリアの辺境にある町で暮らしており、ロシアとのつながりは深い。最初にロシアに引っ越したのは10年前のことで、ロシア人と結婚し、エカテリンブルグで教師として働いている。それ以前には、サンクトペテルブルク大学に留学している。
ニューヨーク州バッファロー生まれのマリネリ氏は、別れの挨拶文のなかで、いつの日か「占領下にあるカリフォルニアに戻り、アメリカ合衆国からカリフォルニアを独立させるために戦うつもりだった。そして我々の進歩的価値観を反映した国を構築する」計画だったと述べた。しかし今となって、マリネリ氏はアメリカに「幻滅」したので「新しい方向」に進むことに決めたという。
ロシアはマリネリ氏に「新しい幸せ、フラストレーションや自国に憤りを感じる必要のない人生」を用意してくれているという。さらに「大人になってからの自分の全人生をここまで巻き込んだ憎悪」について嘆いた。「ロシアの人々が私の永住を歓迎してくれるなら、ロシアを新しい母国にするつもりだ」と書き加えた。
マリネリ氏はかつて同性愛者の権利に反対する運動をしていたが、心変わりして同性婚を支持した経歴がある。またマリネリ氏は、地元メディアKQEDに、アメリカの国力を削ぐ戦略の一環として、ロシアのウラジミール・プーチン大統領が自らの運動を含むアメリカ国内の州独立運動を支援してくれていると語っていた。
「ロシア政府のことをあまり責められない。なぜならアメリカもロシアや、世界中の国々に対して同じことをしてきているからだ」と、マリネリ氏は語っている。しかし同時に、直接の支援は一切受けていないとも語っていた。だから、プーチン氏の「支援」が何を指しているのかはっきりしなかった。
マリネリが独立運動から降りたことに対する、SNS上での反応は様々だった。
進歩的価値観を植え付ける場所を必死に探していたはずの「カレグジット」のリーダーが...プーチン体制で暮らすことを選択する。
今回の出来事は、従来の辞書の定義からすると皮肉なものだ。
あらら!逃げちゃうんだ。爆笑だ!
カリフォルニアや西部の独立をそれでも支持するよ。このバカの色に染まらずに、運動を前進させられることになるから良かったと思う。
トランプ大統領が当選したことで、カリフォルニア州内では独立を後押しする意見が大きく増えた。1月の世論調査によると、州民の3分の1が離脱を望んでいるという。
マリネリ氏が起草した「2018年に独立を提案する事前投票を行い、2019年に住民投票を実施するよう求める請願書」を、当局に提出するための署名活動にはおよそ10万の署名が集まっている。しかし署名が有権者本人のものかを確認する必要があるため、計画を間に合わせるためには58万5000人分の署名を7月末までに集める必要がある。だが、請願書を取り下げるという正式な申し出がすでに出されている。
サンディエゴ・ユニオン=トリビューンによると、YCの副代表ルイス・エバンス氏は17日YCを脱退すると発表した。エバンズ氏は、地元紙サクラメント・ビーの取材に対し、マリネリ氏とロシアのつながりを知り、離脱支持者は「仰天」したと語った。
エバンス氏は別の独立運動グループ、「カリフォルニア自由連合」に加入し、5月1日に別な事前投票を求める請願書を提出することを望んでいると語った。
「『自由連合』は外国からの資金援助を一切受けず、他州からの寄付金はグループの理事会の審査を受けなければならない」と、広報担当スティーブ・ゴンザレス氏はサンフランシスコ・クロニクル紙に語った。
「カレグジット」運動指導者ルイス・マリネリ氏がたった今声明を出し、ロシアに永住し請願書を取り下げると発表。
以前から述べているように、私はアメリカの国旗の下で暮らしたくない。アメリカの政治体制の下でも経済システムの下での生活も望んでいない。それでも長らく、いずれは占領下のカリフォルニアに戻り、アメリカ合衆国からの独立のために戦う計画だった。我々の進歩的価値観を反映する国作りをするためだ。
しかし、アメリカ合衆国に対する私のフラストレーション、失望、幻滅が消えることはなく、この気持ちが積み重なって今や別の道を進むことにした。私はロシアに新しい幸せを見つけ出したのだ。フラストレーションや自国に対する恨みを感じずに済む生活、党派による分断のない未来、私が成人してからの全人生をここまで狂わせた憎悪のない未来だ。
結論をいうと、ロシアの人々が私の永住を歓迎してくれるなら、私はロシアを新しい母国にするつもりだ。
カレグジット事前投票を求める請願書提出のための署名活動が現在カリフォルニア内でなされている。しかしその産みの親である私がロシアに永住を目指し、カリフォルニアに当面の間戻らないと決断した。結果的に、署名活動を撤回するしか妥当な道はない。だから、別人の起草した、私と関わりのない新しい請願書を、自分たちで選んだ日に将来再提出するしか方法はない。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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