先日、東芝の不適切会計事件に関して新聞記者さんの取材を受けた時に、
「東芝の経営者が文系ばかりだったのが悪かったのではないですか?」
と聞かれて、しばらく考え込んでしまいました。
最近の東芝の社長さんのバックグランドを見ると、確かに技術系よりも、営業などのスタッフ部門の出身の方が多いのです。
西室さん(営業)→岡村さん(営業(ですかね?))→西田さん(営業)→佐々木さん(技術)→田中さん(調達)→室町さん(技術)
今回の不適切会計事件の背景には、原発などエネルギー事業への過大な投資が裏目に出たと言われています。
技術の将来を見通す仕事なのに、技術を専門としない経営者で良いのか、というのが記者さんの疑問だったわけです。
よく会社の「文系支配」などと言われたり、組織ですから当然派閥的なものもあるでしょう。ただ、そういったものだけが文系社長を輩出した理由だとは思えないのです。
これは自分もそうなのでしょうが、技術者たちの経営スキルが未熟すぎた、あるいは技術者に経営の力を身に付けさせる人事システムになっていなかったのではないか。
今や東芝のような技術を中心とする企業だけでなく、IoTと言われるように、かつては技術と無縁と思われたサービスにもITを中心とした技術が使われています。
技術の知識なしには経営戦略さえ立てられない時代に、技術をわからない人が経営者にはなり得ません。
文系、理系という言葉が死語になるくらい、融合が必要なのです。
しかし、いきなり技術も経営も両方理解しろ、というのも難しいので、大学で学んだりキャリアの最初の段階では、いわゆる理系の職場と文系の職場に分かれてしまうのも仕方ないことでしょう。
文系の人も理系の人も、最初の持ち場でひと仕事をした後に、それぞれ越境して経営も技術も理解するようにする。
その時に、技術部門の(理系の)人が経営を学んだ方が良いのか、スタッフ部門の(文系の)人が技術を学んだ方が良いのか、明確な答え・指針はまだ無いと思うのです。
ですから、記者さんから「理系が経営者になれば良かったのではないか?」と聞かれても、しばらく考え込んでしまいました。
おそらく正解は、技術の素養を深めた文系の人と、経営を学んだ理系の人がチームを組む、ということなのでしょう。
このように答えが見つかっていない状態は、若い世代にとってはチャンスです。
大学生はこれから就職活動なわけですが、文系の学生にとっても、理系の学生にとっても、文系・理系で人事が固定化している職場よりは、文系と理系が入り混じる職場、文系と理系の境界線上にこそチャンスがあるのではないでしょうか。
(2016年1月28日「竹内研究室」より転載)