撤去の少女像、再び設置 釜山の日本総領事館前
韓国南部・釜山の大学生や市民団体が30日午後、日本総領事館前に旧日本軍の慰安婦問題を象徴する「少女像」を設置した。31日夜、像の除幕式を行う。日本政府は像を設置させないよう韓国政府や釜山市に繰り返し求めてきた。
韓国外交省は30日夜、「外国公館への国際儀礼や慣行を考える必要がある。我が政府や当該機関が慰安婦問題の歴史の教訓を記憶する適切な場所について知恵を絞ることを期待する」とのコメントを発表した。「日韓合意を着実に履行するという我が政府の立場に変わりはない」とも記し、少女像の設置を歓迎しない立場を示唆したが、撤去については言及を避けた。
韓国政府は、日韓外交を維持する必要に迫られる一方、対日批判で燃え上がった世論との間で板挟みの状態に陥っている状態だ。
市民団体は慰安婦問題の日韓合意から1年となった28日に像の設置を試みたが、道路の管理権限を持つ釜山市東区と警察当局によって強制撤去されていた。
市民団体関係者によれば、団体は30日午前に東区関係者と面会。区側は強制撤去を謝罪し、設置を妨げない考えを示したという。
東区には28日の強制撤去後、苦情や抗議の電話が殺到していた。市民団体は30日、フェイスブックを通じて「国民の勝利だ」と報告。同日午後、総領事館前で記者会見を開き、「歴史をただし、民族の自尊心を打ち立てる市民の偉大な勝利だ」などと主張した。
市民団体は31日午後6時から市内で集会を開いた後、午後9時から正式に像の除幕式を行う。
韓国では、世論調査で日韓合意の破棄を求める声が6割近くに上り、朴槿恵(パククネ)政権を批判する野党も世論に便乗。黄教安(ファンギョアン)首相が29日、日韓合意の順守を改めて訴えたが、稲田朋美防衛相が29日に靖国神社に参拝したこともあって、対日批判の雰囲気が高まっている。
慰安婦問題を象徴する少女像は、ソウルの日本大使館近くにも設置されており、日本政府が移転を求め続けている。日韓合意では、韓国政府が「日本政府が公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知」したうえで、「解決されるよう努力する」としている。(ソウル=牧野愛博)
■日本政府は抗議
釜山での少女像設置について、日本外務省は30日、韓国政府に「日韓合意の精神に反しており、極めて遺憾だ」などと抗議し、早急に撤去するよう申し入れた。
申し入れは、杉山晋輔外務次官が李俊揆(イジュンギュ)駐日韓国大使に、長嶺安政駐韓大使が林聖男(イムソンナム)韓国外交省第1次官に対し、それぞれ行った。
(朝日新聞デジタル 2016年12月31日 00時42分)