スコットランド型自治を求める声がイギリス国内に広がる 格差拡大が原因

英国からの独立の是非を問う住民投票を実施するスコットランド。独立機運の高まりにより、英国の他の地域でも、自治の可能性拡大という望みに火が付いている。
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Reuters

英国からの独立の是非を問う住民投票を実施するスコットランド。独立機運の高まりにより、英国の他の地域でも、自治の可能性拡大という望みに火が付いている。

ロンドンに拠点を置く政治家たちは、18日に実施されるスコットランドの独立投票直前の世論調査で、独立賛成派が急伸したことに不意打ちを食らった。英北西部マンチェスター、北部ヨークシャー、南西部ウェールズは、スコットランドが英国に残留すれば、さらなる経済的意思決定を与えるとする約束を注視している。

英国では過去数十年、各地で格差が拡大。ロンドンと南東部で金融業とメディア産業が栄えた一方、北部と中部では製造業や鉱業が衰退し、「南北格差」が広がった。

ロンドンは多くの有権者にとって、経済的のみならず文化的にも他の地域とかい離し続ける都市国家とみなされており、それが嫌悪の原因となっている。アナリストらも、ロンドン以外の地域の沈滞は政府が招いたという見方に同調する。

エコノミストのジム・オニール氏が議長を務めた委員会の報告書は、「他国の地方政府は自由に主要都市に投資できるのに、英国の場合は中央政府の言いなりである」と指摘した。

英国は経済協力開発機構(OECD)の主要加盟国のなかで、公共財政制度が最も中央集権的である国の1つ。先の報告書によると、地方税収が国内総生産(GDP)に占める比率は英国が1.7%であるのに対し、フランスは5%、スウェーデンは16%となっている。

しかしスコットランドの独立投票で、地方の政治家や指導者、企業家たちは地域の成長促進に必要な自治を強く求めるようになっている。ITVニュースの委託で調査会社コムレスが行った世論調査では、回答者の48%がイングランドやウェールズの各都市や地域にもっと権限を移譲することに賛成している。

<まずはヨークシャーか>

英国最大規模の地域であるヨークシャーで、ビジネスアドバイザーのリチャード・カーター氏(48)は8月、「ヨークシャー・ファースト」というキャンペーンを打ち出し、地方自治政府への権限移譲を求めた。

同地域の人口はスコットランドとほぼ同じであり、経済規模はウェールズの約2倍。カーター氏はキャンペーンのウェブサイトで「欧州北部の最も貧しい10地域のうち9地域がある国に住んでいるというのは嘆かわしいことだ。もし英国の制度がうまく機能しているというなら、なぜロンドンが他地域の富や活力、エネルギーをむしばんでいるように見えるのか」と訴えている。

カーター氏はまた、ロイターに対し「英国全体の役に立つ国家が必要。スコットランドをめぐる議論を、今度はヨークシャーや他の北部地域について100年間はもうしたくない」と語った。

北西部グレーターマンチェスターの住民の多くも同意見だろう。

グレーターマンチェスターは北アイルランドよりも人口が多く、ウェールズよりも経済規模が大きい。シンクタンク「レスパブリカ」のフィリップ・ブロンド氏は、こうした点から同州は権限が委譲される最有力候補だと主張する。同氏は15日に発表した報告書で、マンチェスターに所得税率を引き上げる権限や公共支出の権限拡大を提案している。

一方、ウェールズ民族党の党首を務めたダフィド・ウィグリー氏は、同党がスコットランドの独立機運に後押しされると語った。

人口300万人超のウェールズはすでに独自の議会を持っているが、同地方の主要産業だった重工業や鉱業の衰退による経済的な不安から、さらなる権限移譲を支持する声はあまり聞こえてこない。

ウィグリー氏によると、独立を支持するのは有権者の10%程度で、独立はいまだ遠い目標だという。ウェールズ民族党は、スコットランドに認められているのと同じような条件で、ウェールズに増税や支出を決める権限が与えられるべきだと考えている。

JPモルガンは16日に発表したリポートで「スコットランドへの一段の権限移譲で、多くの人は英国がより明確な連邦政府的な構造となることを求めている」とし、「それは原則としては簡単なようだが、実際には多くの問題が生じる」と指摘している。

一方、前述のブロンド氏は、最近のスコットランドでの独立機運は、英国民に権限移譲がもたらす可能性を気づかせたと考えており、「権限移譲が再生を想起させるなら、(人々の意見を)変えられると思う」と述べた。

「われわれが目にしているのは、とてつもなく大きな未解決な反感であり、それにどう答えたらいいのかも分からない。だが、権限移譲は解決の一部であり、いずれ人々はそれを支持してくれるようになるだろう」

(Paul Sandle記者、Sarah Young記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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