新興5カ国(BRICS=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)首脳は、アメリカ主導の国際金融秩序に対抗し、発展途上国や新興国へのインフラ開発を支援する独自の開発金融機関「新開発銀行」の設立と外貨準備基金の創設を決定した。
ブラジル北東部フォルタレザで7月15日に開かれたBRICS首脳会議で、各国が最終合意に達した。時事ドットコムなどが報じた。
開催国ブラジルのルセフ大統領は、約2年間にわたり議論を重ねた開発銀設置にめどが付き、「歴史的な決定だ。大きな一歩を踏み出した」と手応えを語った。
開発銀の資本は当初、500億ドル(約5兆円)で5カ国が均等に出資。最終的には1000億ドル規模への拡大を目指す。上海に本部を設置し、初代総裁はインドから出す。南アには開発銀行アフリカ地域センターを設置することを決め、各国のバランスに配慮した。
(時事ドットコム「BRICS開発銀設立で合意=均等出資、本部は上海-首脳会議」より 2014/07/16 09:04)
新開発銀行の設置は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)が主導する国際金融の枠組みである第2次大戦後の「ブレトンウッズ体制」への挑戦を意味する。
世銀やIMFは戦後、貧困国や金融危機に陥った国への資金支援を通じ、世界経済を安定させる役割を果たしてきた。一方、近年の経済成長が著しい中国など新興国の間では、欧米の発言権との格差が埋まらないことに不満も募っていた。
■ロシアと中国の主張、色濃く反映
首脳会議の後に発表された共同宣言には、軍事介入や経済制裁に反対する文言も盛り込まれるなどロシアと中国の主張が色濃く反映されている。欧米主導の国際秩序に異を唱え、新興国を軸とした新たな国際秩序を構築していく姿勢を鮮明にした。
また、ロシアが主要8カ国(G8)から排除されて欧米の経済制裁を受ける原因となったウクライナ危機に関し、共同宣言は「深い懸念」を表明。別条項で「一方的な軍事行動や経済制裁を非難」することで、間接的にロシアを支持した。
ロシアのプーチン大統領は首脳会議を前に14日、BRICSに対し、アメリカによる制裁に対抗する措置で合意を求める姿勢を示していた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)は首脳会議に先立つタス通信との会見で、BRICSの役割を新たな段階に引き上げ、米国の一極支配への対抗軸とすべきだと表明。ウクライナ南部クリミア併合で受けた米欧の制裁による国際的孤立を回避する考えを明確にした。
(サンケイビズ「BRICS首脳会議開幕 中露主導で開発銀新設へ 金融危機克服で自信 米覇権に挑む」より 2014/07/16 10:40)
■陰る成長力、G7に対抗「可能性は低い」
政治連携を強めるBRICS。しかし「非欧米」という主要な共通点しかなく、G7に対抗できるような政治グループになる可能性は低い。また、どこまで力を発揮できるかは不明だとも指摘されている。
印シンクタンク「ORF」のラジェシュワリ・ラジャゴパラン上級研究員は「印中間には国境問題がある。BRICSが政治組織として発展するのは難しい」と否定的だ。また、中国を除く4カ国は成長が鈍化し、経済力の差によってBRICS内で発言力の差が生じる可能性が指摘されている。さらに、5カ国は欧州連合(EU)のように地理的、文化的なまとまりがないためだ。
(毎日新聞「BRICS:金融改革、組織化は結実…政治力発展は困難 - 毎日新聞」より 2014/07/16 22:29)
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