ヒトの前脳に類似した三次元的スフェロイドを、腹側前脳領域(左側)と背側前脳領域(右側)とで別々に作製し、合体させたもの。介在ニューロン(緑色)が腹側前脳から発生中の皮質(背側前脳)へと広がっていく様子が見て取れる。
Credit: Pasca Lab at Stanford University
GABA作動性ニューロンは、脳機能に重要な役割を持ち、多くの精神疾患に関係するとされている。GABA作動性ニューロンは、前脳の腹側から背側に長距離移動した後、皮質回路に統合される。こうした細胞間相互作用中のGABA作動性ニューロンの分化をin vitroでモデル化できれば、ニューロンの移動異常に関係したヒト脳障害の原因を研究できるだろうが、これまで難しかった。
今回S Paşcaたちは、腹側前脳または背側前脳に類似した三次元的スフェロイドを作る手法を開発した。これら2種のスフェロイドをin vitroで合体させると、ヒト発生で見られるのと同様な介在ニューロンの皮質への域間移動が起こり、背側の皮質グルタミン酸作動性ニューロンと機能的なシナプスを作った。この方法で、ティモシー症候群患者由来の介在ニューロンが、移動パターンの異常を示すことが分かった。
Nature545, 7652
2017年5月4日
doi:10.1038/nature22330
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