連載「世界の家庭料理をめぐる旅」、今回はロシア!
あけましておめでとうございます!
食を旅するイラストレーターの織田博子です。
寒い季節がやってきたので、寒い国の家庭料理を食べたい!ということで、
日本在住のロシア人・イリーナさんの食卓にお邪魔しました。
世界一寒い国、ロシアの家庭料理とは?
ロシアは、世界最大の面積を持つ国です。
国土のほとんどが北海道より北に位置し、マイナス71度(!)になったことがあるという記録があるほど寒い土地。
長く厳しい冬を乗り越えるための、暖かいスープ「ボルシチ」や
肉や野菜をつつんで焼いた小さなパイ「ピロシキ」がロシアの家庭料理です。
一方で、多民族国家であるロシアでは、様々な文化や家族の好みをふんだんに取り込んだ
多種多様な家庭料理が楽しめる国でもあります。
笑顔が素敵でおちゃめなイリーナさん!
お昼ご飯づくりを手伝うつもりで、朝10時に到着。
すぐに、イリーナさんがやってきた。
「今日はとっても天気がいいですね!空を飛びたい気分!」
ロシアの人は不愛想で口数が少ない印象があったので、笑顔と明るい声が印象に残った。
近くの市場で新鮮な野菜や肉を買い込み、さっそく料理をはじめる。
9歳になる娘さんも、子ども用包丁でせっせとお手伝い。
手間と時間をかけて作るロシア料理
「ロシア料理は、作るのにとても時間がかかるんです。週末にたくさん作って、一週間かけて食べるのがロシア流。」
とくに「ボルシチ」は、寝かせるほどコクが増して美味しくなるのだとか。
「日本でも、カレーは寝かせるほどおいしいでしょ?おんなじです」
まずは、一番時間のかかるという「ボルシチ」から準備を始める。
意外とおちゃめなイリーナさん。
「私は、ボルシチを作るときはかならず野菜を炒めます。その方が味にコクが出るし、いい香りがする。
そのあと、野菜をやわらかく煮るけど、キャベツだけはシャキシャキしているのがいいから、ほとんど煮ません。」
お母さん直伝の、ボルシチのレシピですか?と聞くと、
「お母さんのボルシチは、キャベツをグジャグジャに煮るところは嫌いだったので、レシピを変えました」とのこと。
ロシアの小さいパイ「ピロシキ」は、生地を作るところから!
ボルシチを煮込んでいる間に、「ピロシキ」を作る。
生地から作って、一つ一つ丁寧に包んで焼くのだとか。
ピロシキの生地をこねている時、今まで笑顔だったイリーナさんが
「もう、10年もロシアに帰ってない。たまに、リャーゼンカがとっても飲みたくなるよ」
とポツリ。
※リャーゼンカ...コーヒー色になるまで煮込んだ牛乳を発酵させたヨーグルト飲料。とろっとして甘みがある。
久しぶりにピロシキを作ったら、昔を思い出して懐かしくなったのかな。
ロシアの話、料理のコツやこだわりについて聞きながら一緒に料理を作っていると、
気づくと5時間も経っていた。
お昼ご飯を作ると思っていたけど、実は夕ご飯を作っていたのだった!
う~ん、ロシア料理は時間がかかるって本当なんだなぁ。
いよいよ、ロシアの家庭料理をいただきます!
家族4人と私で食卓をかこむ。
ロシアの家庭料理の代表、「ボルシチ」。
塩や砂糖だけのシンプルな味付けなのに
鶏肉のブイヨンと、野菜のコクと、ビーツのどっしりとしたうまみと甘み、ハーブの香りで繊細かつ多彩な味わい。
それにスメタナ(サワークリーム)がさわやかさを加える。
シャキシャキした食感のキャベツがアクセントになっている。
タマネギ、キノコと鶏肉を炒め、生クリームで煮た「チキン・ストロガノフ」と、
ビーツの赤紫色が美しい「冬のサラダ」。
「冬のサラダ」の名前の由来は、ファソーリ(金時豆)や酢漬けのキャベツなど、野菜が不足しがちな冬にも使える食材を使っているから。
ビーツは甜菜の一種で、かじると独特の甘みがある。なんだか懐かしいような味。
食後のデザートには、リンゴのピロシキ。
工芸品のお皿もカワイイ。
おいしいピロシキを作るために、大切なこと
ピロシキを焼いている時、厳しい表情でイリーナさんが言った言葉が印象に残っている。
イリーナさんも、お母さんや、おばあちゃんに言われた言葉なのかもしれない。
ボルシチのレシピや、住んでいる国や、時代が変わっても、きっと変わらずに受け継がれてきた言葉なんだろうな。
すっかり長くお邪魔してしまったけど、
とても思い出ぶかい時間になった。
イリーナさん、ごちそうさまでした!
レシピ
手軽にできてロシアらしい味わいの「チキン・ストロガノフ」を紹介します。
チキン・ストロガノフ
- 鶏肉は皮を取り、3cm幅のあつさで切る。
- バターをフライパンで温め、鶏肉を入れる。表面の色が変わったら一度取り出す。
- 同じフライパンでタマネギ、マイタケを炒める。
- いい香りがしてきたら生クリームを注ぎ、肉を戻して炒める。
- 塩・こしょう・レモン汁を加え、ひと混ぜして出来上がり。
- Приятного аппетита !(プリヤートナヴァ アピチータ:めしあがれ!)
食を旅するイラストレーター・織田博子
ユーラシア大陸を一人旅し、家庭料理や人を描いています。
著書「女一匹シベリア鉄道の旅」(イースト・プレス)。
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(2015年1月11日「KitchHike マガジン」より転載)