本ブログは、世界最大の寺社フェス!【向源】のスタッフが書いています。たくさんの方々から聞かれる「向源ってなに? どんなことをするの?」という質問の答えとして、ここ3回ほど、昨年のワークショップを交えながら、今年の【向源】で体験できる日本の伝統文化について書いてきました。
今回は、ズバリ<檀家>というオリジナルゲームを手に、【向源】に登場するお坊さん、向井真人さんにお話をうかがいました。
■遊びから仏教が学べる?
仏教の教えを伝えるツールといえば、さてなんでしょう?
お経、仏像、曼荼羅、法具......など伝統的なモノがまずは思い浮かびます。
ここに<遊戯>、つまり現代でいう<ゲーム>もあったと言われているのをご存じですか?
お正月遊びの定番「双六(えすごろく)」は、新米のお坊さんが遊びながら仏教を学ぶために考案されたものがその起源といわれています。江戸時代には「浄土双六」と呼ばれる絵双六が流行しました。「南・無・分・身・諸・仏」の6文字が刻まれたサイコロを振り、悪い目を振ると地獄に落ち、よい目を振ると浄土に至るという遊びです。
つまり、日本では古くから仏教の入口として、ゲームがあったということが言えるわけです。
■ボードゲーム<檀家>ってなに?
今年の向源ではじめてお披露目されるボードゲーム、その名も<檀家>の開発者である向井さんは、【向源】ではスタッフとして運営にかかわっているお坊さんです。そんな彼に、お寺と檀家とゲームの関係についてお話をうかがいました。
「ボードゲーム<檀家>は、プレイヤーが「お坊さん」となり、サイコロを振って様々な活動をすることで、檀家を増やしていくゲームです。ご法事をしてお布施をいただいたり、修行をしたり、お寺を建てたり管理したりして、檀家さんを増やしていくのです。」
そこだけ聞くと「なんて世俗的な!」と感じてしまうかもしれません。しかし、それは私たちが檀家さん=顧客といった経済的側面からお寺と檀家さんの関係を見てしまうから。
向井さんはゲームの中で檀家をこう定義しました。
「檀家は、お寺のファンである」
そもそも檀家とは、お寺を支援してくださるお家の方のことです。仏教のはじまりの国インドで、"ほどこし"を意味する"ダーナ"という言葉が、檀那(ダンナ)や檀家となって日本に伝わりました。"お寺にほどこす"という意味で檀家さんというのですね。現代では、イエや世帯ごとに檀家さんとして、お寺とお付き合いをするケースが多く見られます。
Amazonが販売を開始したことでニュースでも話題になった、お葬式や法事にお坊さんを派遣する【お坊さん便】の登場は、このイエとお寺とのお付き合いが希薄になりつつあることが影響した、という見方もあるようです。
変化するお寺と日本人の縁に、向井さんも危機感を募らせているのかと思いきや、どうもそうではないよう。
「昨今、仏教、お坊さんやお寺とのご縁をいただく方が本当に増えているなと実感しております。 『○○宗のあのお坊さんのお話が聞きたい』『あそこのお寺の催しを手伝っている』など、宗派を越えて、お坊さんの話を聞く、お寺とお付き合いしている人がいらっしゃる。 心を開き、仏教を身近に感じながら生活していらっしゃる姿を拝見していて、彼ら、彼女たちは形は違えど、そのお寺の檀家ではないか。『お寺のファン』『お坊さんのファン』ではないかと思ったことがありました。」
つまり、お寺やお坊さんに対して新たなつながりを求める人が今、増えている実感があるということ。この実感に基づいてつくられた<檀家>というボードゲームだからこそ、プレイヤーが獲得する檀家とは、お寺のファンであるのです。
■なぜゲームなのか?
しかし、現代的に檀家さんを獲得する方法なら、SNSで情報を発信したり、お寺でのイベントを開いたり、他にもいろいろあります。その中でどうしてゲームだったのでしょうか。向井さんは、多くの人にお寺の文化へと触れてもらうにはどうしたらいいか試行錯誤を続けるなかで「ボードゲーム」にたどり着いたのだそうです。
「みなでゲームを遊ぶためには心をひらき、楽しむ気持ちがとても大切です。仏教やお寺をテーマ・ルール・ストーリーとしたゲームをプレイしていただけたなら、身構えることなくスッと理解していただけるのでは? しかも、ボードゲームならコンピューターも使わず、対面して家族や知らない人同士が遊ぶことができます。未知の領域への分かりやすく、親しみやすい入口としてアナログであることが適切だと思ったのです。」
筆者自身も向井さんがつくった最初のボードゲーム「御朱印あつめ」で遊ばせてもらったのですが、久しぶりのアナログなゲームに大興奮。楽しく遊ぶことができました。
一方、ゲームだからこその弱点もあります。
ゲームにすることで仏教を軽く扱っているように思われるのではないか。また、純粋に楽しんでもらうことができず、布教の一環や知育といった押し付けがましいものに見えてしまうのではないか。ハコモノを作ればいい、適当に人が集まるイベントをやればいい、...などと考えて活動しているお坊さんなど実際はいないのに、そう思われてしまうのではないかなどと心配は尽きないようです。
お寺や仏教について楽しんでファンになってもらう。その入口としてのゲーム。だからこそ、変なものは作らない。ちゃんと本当のことが感じられるように考えて作っている断言する向井さん。
「ゲームを体験した方があとでネットで調べたり、お坊さんと話をしたりというようなことをしてくれたなら、それは『このゲームが仏教やお寺の文化を伝えた』と言っていいと思っています」
いきなり仏教の教えを......では敷居が高いけど、楽しみながら、遊ぶようにちょっと触れてみる。
筆者は一昨年に一般参加者として【向源】を体験し、昨年からボランティアスタッフをしていますが、【向源】自体も<檀家>ゲームと同じく、ひとつの入口だなと感じています。
奇しくも今年の【向源】のテーマは「ニッポンを遊べ。」
面白そうだと思って触れてみた結果、ちょっと違ったなと感じるのも自由です。でもせっかく日本にいるのだから一度は体験してみてほしい。そんな想いから、先にご紹介した「浄土双六」も【向源】で販売されるとのこと。
難しいことは考えずに、仏教を楽しんでみる。そんなところから、お寺の、お坊さんのファンとしての檀家ライフがスタートするかもしれません。
(柳舘由香)
【向源からのお知らせ】
世界最大級の寺社フェス「向源 in 日本橋」ニッポンを遊べ。
チケット販売は3月中旬予定!
世界最大級の寺社フェス「向源」を4月29日から5月5日までの7日間、日本橋を含めた都内3カ所で開催します。
寺社フェス「向源」とは、宗派や宗教を超えて、神道や仏教などを含めたさまざまな日本の伝統文化を体験できるイベントです。6回目となる今年は、「ニッポンを遊べ。」をテーマに、日本橋を中心に100コマ以上(予定)の体験型ワークショップや公演などを実施します。ゴールデンウィークの連休はぜひ「向源」にご来場ください。
【開催期日】
2016/4/29(金)~2016/5/5(木) 11:00~20:00
【会場】※予定
2016年
4/29(金) 神田神社(神田明神)
4/30(土) 日本橋 各所 / 日本橋三井ホール
5/01(日) 日本橋 各所 / 日本橋三井ホール
5/02(月) 日本橋 各所 / 日本橋三井ホール
5/03(火) 日本橋 各所
5/04(水) 日本橋 各所
5/05(木) 芝大門 浄土宗大本山増上寺
詳細・お申し込みは向源HPをご覧ください