石破 茂 です。
先週からまた一転、米朝首脳会談がシンガポールで開催される可能性が出てきました。これがトランプ流のゲームであり、ディールなのでしょうが、何度も指摘している通り、「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」の間にある乖離も、その「接点」が日本の安全保障に与える影響も、極めて大きいものです。
「北朝鮮の体制を保証する」ことは、北朝鮮国民の置かれている悲惨な状況を是認することにもなりかねない。また、日本国の国家主権の侵害であるとともに重大な人権侵害である拉致問題との整合が取れないことになる。我が国にとっての望ましい解は、他のどの国よりも難しいことを痛感しています。
今週久々に開かれた党首討論は、あまりに時間が短く、議論が交わらないままに終わってしまった感が致しました。与野党の話し合いの結果の時間配分なのでしょうが、もう少し長く、多くの国民が見られる時間帯に行なう工夫は出来ないものなのでしょうか。多様な意見の中から一致点を見出すのが議会の役割なのであり、それに資するような議論を心掛けねばと思います。
参議院の合区解消に向けて、自民党内で一定の方向性が出つつあります。
公職選挙法の改正によって、埼玉県の定数を2人増加させて選挙区間の最大較差を3倍未満とするとともに、参議院比例区で拘束名簿式の特定枠制度を導入することにより、合区によって候補者を出せない県の者を優先的に当選させるという内容で、現時点においては憲法を改正して参議院の独自性を明記するまでの緊急避難措置として、万やむを得ないものと考えます。
「合区自体は解消されていない」「定数を増やすのは行革の趣旨に逆行する」「法の下の平等をどう考えているのだ」という批判も多く見られますが、憲法改正の発議に必要な衆・参全議員の3分の2の賛成が得られる状況にはなく、大都市部の定数を増やして格差を3倍以内に収めるためには40議席以上を増やさねばならず、比例区を削って都市部増の議席数とすることにはどの党の賛成も全く見込めず、結局これ以外に方法はないということでしょう。
憲法改正以外に抜本的解決の道はありませんが、時間をかけてでも抜本的に改正すべき第9条と決定的に異なるのは、来年の7月には間違いなく参議院議員選挙が行われるという時限性です。
仮にこの改正案が成立しても、東から西まで東京・名古屋間よりも長く、隠岐諸島という離島地域までを含む広大な鳥取・島根合区選挙区や徳島・高知合区選挙区は依然として残るということであり、暗然たる思いです。
「政党のご都合主義」という定型的な批判は、実際に政治に携わることなく、責任を負うことのない立場だからこそ言えることです。暑いさなか、広大な選挙区を走り回る候補者や、その姿にほとんど接することも出来ない過疎地の有権者の辛さや悲しさをわずかでも斟酌する思い遣りを持って頂きたいと切に思います。
2年前の参院選において、選挙区すべてを回れない青木一彦候補に代わって私も鳥取県内各地を回ったのですが「一度でいいから候補者を見たかった、話が聞きたかった」と言われた高齢の有権者の声が耳朶に残って離れません。
常に最善の結論が得られるものではなく、時間も手間も経費も掛かる民主主義とは本当に難しいものだと思います。最近は「独裁の何が悪い」といったような言説も見られますが、私は決してそうは思いません。やはり「民主主義は最悪の政治制度である。ただし、今まで存在したあらゆる政治制度を除けば」(チャーチル)なのであって、その意味で「民主主義はやっぱり最高の政治制度である」(橋爪大三郎著・現代書館)、近著では「多数決を疑う 社会的選択理論とは何か」(坂井豊貴著・岩波新書)は示唆に富みます。前者は既に絶版になっているのかもしれませんが、後者は2015年以来10刷を重ねており、きちんと本を読む人もまだ多くおられるのだと少し安堵したり致します。
河合雅司氏(産経新聞論説委員)が、昨年45万部のベストセラーとなった「未来の年表」の続編「未来の年表2 人口減少社会であなたに起こること」を上梓されました(講談社現代新書)。これからの人口急減社会において、それぞれの身の周りに何が起こるのかが具体的に描かれているのですが、末尾に記された「『豊かな日本』を作り上げてきた大人たちへ」からは、我々、ならびにその上の世代に対する著者の強い思いが感じられ、胸に突き刺さります。是非お読みいただきたいと思います。
30日に開催した政策集団「水月会」のパーティにはおかげさまで会場いっぱいの方にご参加いただき、盛会のうちに終えることができました。ご参加いただいた方、ご厚志を賜りました方に心より厚くお礼申し上げます。
第一部の私の講演にも大勢様お越しいただきましたが、席が足らずに立ったままお聞きくださった方には深くお詫び申し上げます。
週末は、自民党鳥取県連青年局・女性局大会の諸行事のため、選挙区に帰ります。残余の時間は、水月会セミナーにおける講演をはじめとする最近お話しした内容の精査と手直しに充てたいと思っております。
事前にそれなりの準備は行うものの、原稿なしの講演はどうしても即興的・瞬間芸的になってしまい、時間を経ないうちによく見直す必要を感じております。
6月初日の都心は、心地良い晴天となりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
(2018年6月1日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)