超党派の国会議員でつくるスポーツ議員連盟が4月14日、スポーツ振興くじの制度改正に関するプロジェクトチーム(PT)の会合を実施し、プロ野球を新たにくじの対象として検討することを決めた。野球くじの発売で売り上げを伸ばし、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の改築費などに充てる狙いがある。
スポニチによると、議連はくじを「非予想系くじ」にして八百長を防ぐとしており、5月上旬までに日本野球機構(NPB)や日本プロ野球選手会などと協議した上で、今国会中に議員立法で関連法の改正法案の提出を目指す意向だという。
「非予想系くじ」とは、購入者が勝敗を予想する「toto」などとは異なり、コンピューターがあらかじめランダムに予想した勝敗結果の書かれたくじを買うもの。「BIG」がこの方法をとっており、ホームチームの勝ち=「1」、その他(引き分け・延長)=「0」、負け=「2」の三択で、コンピュータがその日の14試合全てを予想。全て的中したら「1等」、1つ外したら「2等」というように当選が決まる。
「BIG」どうなったら当選?
「非予想系」との方針に、ネットからは「自分で予想できないのは面白くない」「つまらない」などの意見も出ているが、PTが非予想系とするのは、1969年に起きた「黒い霧事件」が影響しており、球界に八百長に対する懸念があるためだ。
■球界に衝撃を与えた「黒い霧事件」とは
黒い霧事件は、暴力団にそそのかされた西鉄ライオンズ投手ら6人の野球選手が、八百長行為に関与し永久追放(現在の野球協約では永久失格)になった事件。「黒い霧」とは松本清張の「日本の黒い霧」(1960年)に由来する語で、背後に不正や犯罪などが隠されていることのたとえ。誰が関与したか見えにくいことから、この名がついた。
事件のきっかけは、西鉄のカール・ボレス外野手が「チームにわざとエラーする選手がいる」と漏らした一言だった。この言葉を元に調査を行った読売新聞・報知新聞が1969年10月、西鉄投手の永易将之(ながやす・まさゆき)さんが八百長を行っていたとスクープ。その後、各社により大体的に報じられ、西鉄は監督やオーナーが辞任した。
永易さんは八百長を否定するも、その後、八百長をした疑いのある西鉄の6人の選手を列挙。このとき名前が上がった選手の中に、西鉄エースの池永正明さんがいた(68)。池永さんは西鉄に入団した1965年から20勝をあげ、パ・リーグ新人王となっており、1967年にはパ・リーグ最多勝のタイトルも獲得していた。
1965年度のパ・リーグの新人王に選ばれ、表彰される西鉄の池永正明投手(1965年11月30日 東京・千代田区のホテルニューオータニ)
池永さんは同僚から現金100万円を預かったことは認めたが、八百長行為に関しては一貫して否定した。しかし、現金を受け取ったことを報告しなかったことで、野球協約にある「敗退行為」(故意に負けようとプレーすること)にあたるとされ、2005年4月に解除されるまで、失格処分となった。
不祥事は他球団にも広がり、中日、東映の投手、近鉄の球団職員が永久失格になり、その他、期限付き出場停止などの選手も含め、複数球団で20人が処分を受けた。西鉄は選手の放出で人気と実力を失い、3年連続で最下位に低迷。1972年シーズン終了後に身売りが発表され、「太平洋クラブライオンズ」となった。
■専門家からは当時と背景が違うとの指摘も
野球くじが黒い霧事件の再来になるかもとの懸念があることについて、スポーツ政策に詳しい専修大学教授の久木留毅(くきどめ・たけし)氏は、現在はスポーツがデータ化される時代だとして当時と今とでは背景が違うと指摘する。「投手の投げたコースやマウンドへの入り方などもすべてデータに残される。不可解な行動をすれば疑惑の対象となる。こうした監視の目をしっかり入れれば、八百長行為は高いレベルで防ぐことが可能になる」と述べた。
一方である球界関係者は、「反社会的勢力の対策をどうするのか。いったい誰がやるのか。そんなに簡単なことではない」と語ったという。
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