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アメリカのバイデン大統領は12月13日、同性同士および異なる人種同士の結婚を連邦政府が保護する「結婚尊重法案」に署名した。
バイデン大統領はホワイトハウスに集まった人々に「今日は良い日です」と語りかけ、法律は国にとって大きな前進だと強調した。
「アメリカは、一部ではなくすべての人の平等、自由、正義にとって必要不可欠な一歩を踏み出しました。良識や尊厳や愛が認められ、尊重され、保護される国に向かう一歩です」
さらに、「結婚するかどうか、そして誰とするかは、1人の人間にとって最も重大な決断の一つです」とした上で、次のように述べた。
「結婚はシンプルな判断です。あなたは誰を愛しているのか?その愛した人に忠実か?それ以上に複雑なものではありません」
「そして結婚尊重法は、すべての人に政府の介入なしにその質問に答える権利があるべきだ、と認めています。そして、結婚に伴う保護を連邦政府が保証します」
結婚尊重法案、どんな内容か
結婚尊重法案には民主党だけではなく、一部の共和党議員も賛同し、上院で61-36、下院で258-169で可決された。
この法律は、1996年に制定された「結婚防衛法」を廃止するもので、一つの州で認められた同性同士の結婚が、連邦政府や他の州でも認められるようになる。異人種間のカップルにも同様の保護が与えられる。
結婚防衛法は、連邦法での結婚を「男女」だけに限定していた。そして一つ州で認められた同性カップルの結婚の法的有効性を他州では認めなかった。
そのため、結婚した同性カップルが、他州に移動すると税金や社会保障上の優遇措置を受けられなくなるなどの問題が生じていた。
結婚防衛法は2013年に最高裁によって違憲と判断され、効力を失っていたものの、今回の結婚尊重法案成立で正式に無効となった。
なぜ今結婚尊重法案が必要なのか
アメリカでは、2015年の最高裁の「オーバージフェル対ホッジス判決」により、同性カップルの結婚が憲法で保障された権利と認められている。
しかし、これに疑問を呈したのが「ロー対ウェイド判決」を覆した最高裁の判断だ。
保守派の判事が多数を占める最高裁は2022年6月、連邦レベルで中絶の権利を保護していたロー対ウェイド判決を覆す決定をし、これによって複数の州で中絶禁止法が施行された。
この判決の多数意見で、クラレンス・トーマス判事は「ロー対ウェイドの法的な論拠が間違っているのであれば、オーバージフェル対ホッジス判決も含む、他の判断も見直す必要がある」という見解を示していた。
万が一最高裁でオーバージフェル対ホッジス判決を覆された場合、アメリカの複数の州で、同性間の結婚が認められなくなる可能性が高い。
このことに危機感を抱いた下院の超党派議員会が結婚尊重法の可決に向けて動き出し、今回の成立に至った。
ただし、結婚尊重法はオーバージフェル対ホッジス判決のように、アメリカ全体で同性同士の結婚を保障するものではない。
そのため、もし最高裁判所がオーバージフェル対ホッジス判決を覆した場合は、州は独自に同性同士の結婚を禁止する法律を導入できる。
しかし、結婚尊重法により、一つの州で成立した同性カップルの結婚は、連邦政府と他州でも認められることになる。
バイデン大統領は1996年、上院議員時代に結婚防衛法に賛成票を投じており、今回の署名は、LGBTQ+の権利を巡るバイデン氏自身の大きな変化を表すものにもなった。
バイデン氏は13日のスピーチで、法案成立に尽力した議員やLGBTQ+コミュニティに感謝し、その勇気を讃えている。
「私たちは彼らの勇気を祝うため、そしてこの日を可能にしたすべての人たちのためにここにいます。その勇気が、私たちがこの何十年で目にしてきた前進を率いてきました。その前進は、すべての世代がより完璧な合衆国に向かって進むという希望を私たちに与えてくれます」