バイデン大統領「気候変動は緊急事態」と対策発表。でも「気候非常事態宣言」は見送り

「バイデン氏が気候非常事態宣言の発令や、気候危機に対応するための権力を使うのを先送りにしている間に、地球は燃えており、干ばつ、熱波、山火事がほとんど全ての大陸で飢餓と死の原因となっている」と環境団体は述べる。
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マサチューセッツ州サマセットで演説するバイデン大統領(2022年7月20日撮影)
Anadolu Agency via Getty Images

アメリカのバイデン大統領は7月20日、地球規模で起こっている気候変動の影響に立ち向かうため、いくつかの行政措置を発表した。しかし大統領と民主党上院議員らは、気候変動とクリーンエネルギーに対するさらなる立法措置に行き詰まっている。

バイデン大統領は、マサチューセッツ州サマセットにある閉鎖された石炭火力発電所を訪問し、取り組みの詳細について説明した。

この発電所は現在、東海岸沖で開発中の洋上風力発電所で使用される海底ケーブルの製造拠点に生まれ変わろうとしている。

バイデン氏は地球温暖化を「明確かつ現在の危機」と呼び、「緊急性と決意を持って行動する責任がある」と述べた。

「はっきりと言う。気候変動は緊急事態だ」とした上で、「今後数週間のうちに、大統領の権限を行使し、ここでの発言を正式で公的な政府措置に変えていく。それは適切な宣言や大統領令、大統領が持つ規制の権限を通じたものになる。気候変動との闘いにおいて、私は『ノー』という返事は受け入れない」と述べた。

今回の行政措置には、急成長中のアメリカの洋上風力発電産業のさらなる発展や、猛暑の影響を受ける地域社会のより安全な保護のための支援が含まれる。

しかしこれは、国家の非常事態宣言や、進歩主義の議員や気候変動タカ派がここ数日要求してきたより積極的な大統領権限の行使には程遠い。

ホワイトハウスの高官は、バイデン大統領の演説に先立って行われた記者とのブリーフィングで、「我々の焦点は、行動の緊急性と目の前にある機会の明確性の間で、今私たちが何ができるか、ということだ」と述べた。

内務省は今回初めて、テキサス州とルイジアナ州のメキシコ湾沖合に、広大な2つの洋上風力発電区域の設置を提案するという。バイデン氏は、大西洋岸の中・南部と、フロリダ州の湾岸でも洋上風力発電を推進するよう内務省に指示した。

またバイデン大統領は、インフラなどの強化に23億ドルの資金を提供することを発表。猛暑や干ばつ、洪水から山火事まで、多くの気候変動の影響に立ち向かう地域社会を支援すると述べた。

そして、保健福祉省は低所得者の住宅へのエネルギー支援プログラムを通じ、地域での冷房センターの建設や、家庭用エアコンの購入を可能にするため資金を活用できるよう、新たなガイダンスを発表する予定だ。

7月中旬、民主党のジョー・マンチン上院議員(バージニア州選出)が、気候変動対策への法案を支持しないと発言。その後、気候変動対策費を含むより大きな法案にはまだ前向きだが、7月のインフレ率を確認してからにしたい、と述べたものの、国民の怒りはすでに爆発していた。

気候変動活動家や環境保護団体は、マンチン氏が不誠実な交渉をしていると非難し、バイデン大統領に対し、温室効果ガスの排出を抑制するために、直ちに気候非常事態宣言を含む行政権を行使するよう求めた。

ワシントン・ポスト紙や他のメディアによると、バイデン大統領は早ければ20日にも非常事態宣言に署名する可能性があると伝えていたが、少なくとも一時的にはその考えを見送った。

ホワイトハウスは、バイデン大統領が今後数日から数週間のうちに、気候変動対策に関する追加の行政措置を発表する予定であることを示唆した。

バイデン大統領の演説や政権の発表への気候変動や環境保護団体からは賛否両論の反応があった。 多くの人は措置を歓迎したが、化石燃料を抑制するためにさらに前進するよう要求した。

環境保護団体350.orgの上級政策キャンペーン担当者であるJL Andrepont氏は声明の中で、「バイデン氏が気候危機を緊急事態と感じていることは評価するが、今こそ彼が行動する時だ」と述べ「バイデン氏が気候非常事態宣言の発令や、気候危機に対応するための権力を使うのを先送りにしている間に、地球は燃えており、干ばつ、熱波、山火事がほとんど全ての大陸で飢餓と死の原因となっている」と話した。

「今必要なのは、言葉ではなく行動だ」

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。