ビールで景気を読み解く〜需要回復の動きも、まだまだ弱い【争点:アベノミクス】

ビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)市場では、外食需要の改善や高級ビールの需要増に支えられ、ビールに回復の兆しが見え始めた…
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Reuters

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ビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)市場では、外食需要の改善や高級ビールの需要増に支えられ、ビールに回復の兆しが見え始めた。

景気回復の動きに加え、今年は猛暑という追い風も吹く。ただ、家庭で定着した安価な新ジャンルからビールへの回帰というドラスティックな動きにはつながっておらず、8年連続で過去最低を更新しているビール類総需要のプラス転換には、もう一歩力不足のようだ。

<震災後の内食シフトに変化>

「やや高価格帯の商品も受け入れられるようになっている。居酒屋の客単価も上がっていると聞いている」―――。アサヒグループホールディングス

東日本大震災後、自宅で食事をする内食・中食化傾向が一気に強まった。ただ、今年に入り、この傾向にも変化がみられる。

日本フードサービス協会が発表した6月外食売上高では、客数、売上高ともに前年比3.6%増でぞれぞれ2カ月連続して増加した。休日が1日多かったことからファミリーレストランが好調だったほか、天候に恵まれたこともあり、パブ・ビアホールの売上高が同4.7%増と伸びた。

サッポロホールディングス

キリンホールディングス

一般的に、自宅での飲酒は安価な新ジャンル、外食ではビールが中心となる。大手5社が公表しているビール系飲料の課税出荷数量でも、新ジャンルの構成比は、30%台後半が続いており「新ジャンルが増えてビールが減るという構図がずっと続いてきたが、そうではなくなってた。ビールが安定してきているという傾向が出ている」(サッポロビールの野瀬裕之ブランド戦略部長)。

1―6月期の新ジャンルの構成比は37.5%。アサヒの「クリアアサヒプライムリッチ」やキリンの「澄みきり」など新商品が出たにもかかわらず、前年同期比2.1ポイントの上昇で、大きな変動とはなっていない。

ビールの販売数量は家庭用と業務用でほぼ半々で、外食の動向はビールの販売動向を大きく左右する要因となる。1―6月期のビール出荷が1.9%減となる中、同期間中の業務用ビールは0.9%減にとどまっている。

今年、アサヒは中元商戦にスーパードライのプレミアム版を投入した。6月末までに中元ギフトは前年比16%増となっており「ギフト市場で相当大きなシェアを取っている」(奥田取締役)という。

プレミアムビール「エビス」の拡販を今年の重点戦略としているサッポロでは、1―6月期にエビスの販売数量が1.5%増となり「順調に推移している」(上條努社長)。エビスの販売計画は前年比5.8%増の1000万ケースで据え置き、2010年以来の1000万ケース回復を狙う。

<消費活性化には本格的な景気回復が必要>

ただ、現段階では、こうした動きがビール類の総需要を押し上げるには至っていない。アサヒは年初のビール販売計画を150万ケース下方修正。一方で、発泡酒を100万ケース、新ジャンルを50万ケース上方修正し、販売数量合計は1億6400万ケースで据え置いた。昨年新発売しヒット商品となったスーパードライの派生商品「ドライブラック」の反動が出た一方で、今年新発売した新ジャンル「プライムリッチ」が好調なためだ。

業界関係者は「新ジャンルは改良を重ね、品質が相当上がり、家庭用に定着している」と話しており、新ジャンルからビールへの回帰はなかなか難しそうだ。

キリンの場合は、ビールの計画を引き上げた一方で、新ジャンルの計画を引き下げ、合計の販売数量計画は据え置いている。三宅占二社長は「業務用の樽詰め生ビールは昨年末からプラスで推移しているが、家庭用市場は低価格の新ジャンル中心という傾向は続いている。景気が本格回復すれば、家庭用市場も活性化するだろう」と述べており、アベノミクスで総需要をプラス転嫁させるには、現段階では力不足の状況と言えそうだ。

(清水 律子 編集;田巻 一彦)

[東京 2日 ロイター]

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