史上初めての米朝首脳会談(6月12日)に臨んだアメリカのトランプ大統領が、大統領専用車「ビースト」の内部を、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長に見せていた。
ビーストは大統領専用機「エアフォースワン」と同様、大統領の身を守りつつ、中で職務が遂行できるよう、セキュリティー上の観点から内部はあまり知られていない。
「マル秘」とも言える車内を対立国のリーダーに見せる異例の措置に踏み切ったのは、会談の成功を印象付ける狙いがあるとみられる。
この日、ワーキングランチが終わった後、トランプ、金両首脳は会談の会場となったホテルの外に姿を現し、待ち受ける報道陣に近づいてきた。
「素晴らしい会談だった。署名する」。トランプ氏はそう短くコメントすると、金氏とともに再びホテルに戻った。
サプライズが起きたのはその後だ。両首脳はすぐさまホテルに入ろうとせず、話しながらアメリカの大統領専用車「ビースト」に向かって歩いて行った。
車両の前で2人は軽く立ち話をしたかと思うと、トランプ氏の警護担当者とみられる人物がビーストのドアを開け、両首脳は話をしながら短時間、中をのぞいた。
2人の間でどんな会話があったかは不明だが、両首脳の表情は終始和やかだった。
「獣」を意味するビーストの性能はすさまじい。「キャデラックワン」とも呼ばれるこの車は、大統領を保護するための様々な機能が備わっている。
銃器などの攻撃に備えて、ドアは分厚く、通常車とは違った特殊な素材を使用。生物兵器などからの攻撃にも耐えうる機能もあるとされ、「動く要塞」の異名を持つ。