韓国、朴大統領のBBCのインタビュー及び日本政府の対応

韓国の朴槿恵大統領は、BBCのインタビューに対して、日本が戦争中の「過ち」について謝罪しない限り、日本との首脳会談は意味を成さないと断定した。理由はというと、例によって「慰安婦問題」を筆頭に日本が従来の歴史認識に固執しているからだという事である。
|

韓国の朴槿恵大統領は、BBCのインタビューに対して、日本が戦争中の「過ち」について謝罪しない限り、日本との首脳会談は意味を成さないと断定した。理由はというと、例によって「慰安婦問題」を筆頭に日本が従来の歴史認識に固執しているからだという事である。丁度二か月前に公表した、何故日韓関係は悪化するのか? で説明した内容に頑なに拘っている訳である。本当に融通の利かない頑固な性格と思わざるを得ない。朴大統領に取って伝家の宝刀は「慰安婦問題」であるが、この問題の核心は日本軍による強制連行が果たして行われたのか? という点に尽きる。そして、その事実は確認されていないのであるから、一国の大統領が本来軽々しく口にすべきものではない事は明らかである。

一方、これに対し日本政府はBBCの伝えるところでは、Japan 'disappointed' by South Korea summit remarksという形で、政府が前面に出るのではなく外務省が事務的に対処する形で対応した。朴大統領のペースで韓国と泥仕合をしても日本として得るものはなにもない。国際的評価を下げるだけである。私は、対韓外交については外交のドアは開けておき、問題が生じる度に余り時間を空ける事無くタイミング良く対応する事が肝要と考えている。従って、今回の処置は時宜を得たものと評価している。BBCのインタビュー内容はBBC Newsとして世界に発信されてしまった訳である。ついては、「全世界」、当事国である「韓国」、今回批判の対象となった「日本」、朴大統領が訪問中の「欧州」、最後に在韓米軍のコストを負担する「アメリカ」の受け止め方について考察を試みたい。

■ 全世界

そもそも、BBCインタビューの骨子は、核開発を続ける北朝鮮の「悪循環」な行動(要は「核」と「ミサイル」で脅かした挙句最後には金をせびる)に対し、国際社会でどう取り組むべきか? という質問であったはずである。世界が期待した解答は当然、「日米との関係を強化、深化させた上で北朝鮮との交渉に臨む」といったものであろう。しかしながら、相変わらずの日本への謝罪要求と、それによって必然となる二国間の関係悪化は世界を失望させたに違いない。

■ 韓国

韓国国民は、果たしてこの朴大統領の頑固一徹な対日謝罪要求を支持しているのであろうか? 確かに「対日強硬発言」は今尚韓国では最も人気の高いパーフォーマンスの様である。しかしながら、韓国国民が朴大統領に対し期待するのは、傾きかけた「経済の立て直し」、「国民生活の改善」、李明博前大統領強硬路線の結果、暗礁に乗り上げてしまった「北朝鮮との関係改善」といったところではないのか? 

しかしながら、現実には韓国経済は成長が鈍化し、将来の展望が見えない。各企業も総じて不調でサムスンのみの一本足打法の状況と判断するが、何時までもスマホが売れ続けるとも思えず、近い将来の減速は覚悟せねばならない。仮にその様な展開となれば、韓国経済は袋小路に迷い込んでしまうのではないのか?

朴大統領は、選挙時に公約として掲げた老齢基礎年金増額の見直しについて、「(基礎年金を)高齢者の全員に支給できない結果となり申し訳ない」と謝罪し、保健福祉相は辞任に追い込まれている。看板政策の「国民生活の改善」についても視界不良といっても良いだろう。

そして、年末にかけて朴大統領を追い詰める事になるのが大統領選挙スキャンダルである。NIS(国家情報院)がネット上で、野党陣営の文在寅候補の誹謗中傷を組織的に行い、与党陣営が有利となるような世論操作等の選挙介入を行ったとの事である。大統領支持率が一カ月で10ポイント以上下落との事であるが、朴大統領に効果的な打開策がなければ任期を4年残し、一気にレイムダック化もあり得ると思う。

最後に「北朝鮮との関係改善」であるが、日本との関係を毀損する事に熱心なだけであれば、そこを北朝鮮に付け込まれ袋小路に迷い込むのが落ちではないだろうか? 朴大統領が職に留まる限り事態の進展はないと思う。

■ 日本

個人の感情がむき出しともいえる、今回の朴大統領のBBCインタビュー内容に対し、国内メディアの取り上げは実に抑制の効いたものであった。殆ど黙殺といっても良いのではないだろうか? 安倍政権はというと、どうも放置に徹する様で、「朴大統領任期中は日韓関係改善を諦めるしかない」と腹を括っていると見受けられる。朴大統領は当然この冷徹ともいえる日本政府の対応を不快に感じるに決まっている。その結果、対日批判をエスカレートさせ、日本政府は更に朴大統領を見限るという、日韓関係の「デフレスパイラル」が続くと思う。

■ 欧州

朴大統領が現在欧州を訪問中であるが、今回の対日批判は何のインパクトも与えないと予想する。欧州の抱える問題は大別して二つある。第一は、重篤を極める欧州債務危機である。日本は欧州を支援するためにIMFへ4.8兆円融資を実行している

今一つは、シリアが大変な状況で欧州としても、旧宗主国のフランスを筆頭に座視する事は出来ない。西アフリカ、サヘル地区の飢餓の状況も深刻で、サハラ砂漠を縦断して北アフリカを目指していた難民が途中で遭難した。北アフリカも状況は重篤でイタリアに向かった不法難民を輸送した船が座礁してイタリア沖で惨事が起こっている。欧州はアフリカ、中東からの難民の圧力に晒されている訳である。

シリア難民対策としては、安倍首相はシリア難民支援に全力をヨルダン議長に確約済みであると共に、先月イスタンブールを訪問時トルコ首相とも対応を協議している。一方、アフリカの飢餓問題対策としては、アフリカ全体で5年間に1兆4千億円のODAを表明している。日本は欧州を側面から力強く支援し、約束した事は必ず実行するが殊更その事を誇る事のない国である。そして、欧州主要国は日本を信頼し日本に感謝している。

■ アメリカ

アメリカの喫緊課題は債務問題の解決に向け舵を切る事である。そのためには歳出を削減せねばならず、軍事費削減は一丁目一番地という事になる。アメリカがアジア安全保障における負担の一部肩代わりを日本に求めている事は確実である。日本政府は以心伝心、自ら自発的に「集団的自衛権行使認可」をアメリカ政府に伝え、アメリカは当然の事ながらこれを歓迎した。

一方、朴大統領は殊韓国に関しては受け入れ難い様な事をいっている様子である。露骨にいってしまえば、韓国はこれから先もアメリカの防衛力にちゃっかりタダ乗りを続けるので嫌いな日本の関与は不要と主張している訳である。私は、如何にも子供じみた韓国の我儘にアメリカが何処まで寛容でいられるか興味をもって進展を注視している。