トランプ大統領誕生の立役者だった参謀役が更迭された。
バノン氏(左)とトランプ大統領
アメリカのホワイトハウスは8月18日、トランプ大統領がスティーブン・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問を同日付で解任したことを明らかにした。ロイター通信などが報じた。
ホワイトハウスのサンダース報道官は「ケリー大統領首席補佐官とバノン氏は、今日がバノン氏の最後の勤務日になることで合意した。バノン氏の務めに感謝し、幸運を祈っている」と声明を出した。
■バノン氏とは? 入国禁止令、パリ協定離脱を主導してきたタカ派
時事ドットコムによると、バノン氏は保守系ニュースサイト「ブライトバート」を率いていたが、2016年8月にトランプ氏の選対本部に入り、ヒラリー・クリントン氏が有利という前評判を覆して、トランプ氏の勝利をもたらした。この貢献から、政権スタート時から首席戦略官・上級顧問を務めてきた。
バノン氏は、一部のイスラム圏からのアメリカ入国禁止や地球温暖化防止に向けたパリ協定からの離脱といった政策を主導したとされる。
そんな重要人物がなぜ更迭されたのか。明確な理由は公表されていないが、アメリカのメディアでも複数の説が乱れ飛んでいる。
その中でも特に目を引く3つをここで紹介しよう。
01.「北朝鮮問題など忘れてしまえ」と発言 ⇒ トランプ大統領が激怒?
弾道ミサイルの発射実験に立ち会う北朝鮮の金正恩氏
バノン氏は16日付のリベラル系メディア「アメリカン・プロスペクト」が掲載したインタビューの中で「毎日が闘いだ」として、以下のように対立する陣営の名前を挙げた。
「我々はまだ戦っている。財務省とゲイリー・コーン国会議長とゴールドマン・サックスのロビー活動に対してだ」
さらにバノン氏は、トランプ大統領が軍事作戦の可能性を示唆していた北朝鮮について「軍事的解決などない。忘れてしまえ。開戦30分でソウルの1000万人が通常兵器で死亡するという難題を一部でも解決しない限りは、意味不明だ」と主張していた。
CNNによると、このインタビューにトランプ大統領が腹を立て更迭を決断したという。
02.トランプ政権内でイバンカ氏らと対立
イバンカ氏(右)と夫のクシュナー氏
ホワイトハウス内では大統領の長女イバンカ補佐官とクシュナー上級顧問夫妻ら、中道派との対立がたびたび伝えられていた。国益を最優先することから、国際協調を重視するマクマスター大統領補佐官とも亀裂が生じていた。
7月末に就任したケリー大統領首席補佐官は、派閥争いで混乱するホワイトハウスの立て直しを図っていた。ワシントンポストは、バノン氏更迭はケリー氏が決めたと報じた上で、以下のように書いている。
ケリー氏に近い人物は「彼はホワイトハウスでの混乱をなくすだけでなく、特定のイデオロギーに操られないようにする意向だ」と話している。
03.シャーロッツビルの衝突との関連も?
シャーロッツビルでデモ隊に突っ込んだ乗用車
人種差別問題が関係したという説もある。
8月15日にバージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者らが開いた集会で、反人種差別派のデモ隊に乗用車が突っ込んで、1人が死亡、19人が負傷する事件が起きた。これに対してトランプ大統領が、白人至上主義者と反対派の「双方に責任があった」と主張。共和・民主両党から批判を浴びていた。