バンクシーの新作は皮肉たっぷり。雪を喜ぶ少年の絵と思いきや…

作品のきっかけはある男性の切実な訴えだった
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バンクシーの新作
バンクシーの公式サイトより

覆面アーティストのバンクシーが12月19日、Instagramで新作の完成を明らかにした。

空から降ってくる白いものに喜ぶ少年の姿がガレージの壁に描かれているが、よくよく見ると、雪に見えた物体は実はごみの焼却施設から出た灰だったという作品。大気汚染の問題を皮肉たっぷりに表現しているようだ。

バンクシーは作品を撮影した動画をInstagramに投稿。「季節のご挨拶です」との文を添えており、クリスマスに合わせて作品を仕上げたとみられる。

動画は、ほのぼのとするBGMとともに、両手を広げて空を見上げる少年の絵がアップで表示される。口を開けて舌を出し、まるで雪を食べようとしているかのようだ。

カメラが作品の全体を映すと、絵は壁の端に描かれ、直角に交わる別の壁にも続きがあることがわかる。そこには、小さなごみの焼却設備が描かれており、雪だと思われた白い物体は、ごみの灰だったという「オチ」が付いている。

最後にガレージの向こう側にある大きな工場が映される。工場の煙突からは白い煙が上がっている。

作品があるガレージは、イギリス南部の工業都市ポートタルボットにある。特に製鉄会社「タタ・スチール」による鉄鋼業が盛んだが、それに伴って大気汚染が深刻な問題となっているという。

BBCによると、ここで長年暮らしてきたゲーリー・オーエンさん(55)が2018年8月、Instagramでバンクシーに「ポートタルボットで何か作品を発表してみませんか。ここは鉄鋼業によって毎日、たくさんの粉塵が飛び交い、地元民はうんざりしています」などとするメッセージを送った。

バンクシーからの返事はなかったが、約4カ月たった12月18日、作品が出現した。オーエンさんはバンクシーの投稿動画を見て、「信じられない」と思ったという。

一方、絵が描かれたガレージを所有するイアン・ルイスさんは連日、見物人が殺到して困っており、自家用車が壊されるかもしれないなどと心配で夜も眠れないという。

タタ・スチールの広報担当者は地元メディア「ウェールズ・オンライン」の取材に対し、「我々は現場での改善を模索し続けており、近隣住民や現場の取引業者、当局とも緊密に連携しています」と話したという。