バンクシーの絵、1億5000万円で落札直後にシュレッダーで裁断。なぜ?

落札を示すハンマーが鳴らされた直後、装置が起動して、ズタズタに…。
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落札の瞬間、シュレッダーで裁断されるバンクシーの作品
Instragram/banksy

ストリートアートで世界的に有名なバンクシーの絵画が、オークションで落札された瞬間、自動的にシュレッダーが起動してズタズタに裁断されてしまった。

■「風船と少女」とは?

ニューヨークタイムズなどによると、それは10月5日、ロンドンのオークションハウス「サザビーズ」での出来事だった。バンクシーの絵「風船と少女」が、2人の電話入札者の競争の末、事前予想の3倍に当たる104万2000ポンド(約1億5500万円)で落札された。これは、過去のバンクシー作品の最高落札額と並ぶ額だった。

「風船と少女」は、赤いハート型の風船が少女の手を離れていく姿を描いたもの。バンクシーの代表作の一つとして知られ、2002年にロンドンの街中に描かれたのが最初と言われている。今回、落札された絵は、2006年にバンクシーから現所有者が購入したものだったという。

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競売にかけられた「風船と少女」
sothebys.com

■落札の瞬間にシュレッダー起動

5日のオークションでは、「風船と少女」を競売人がハンマーを叩いて落札が決定するのと同時に、会場にアラーム音が鳴り響いた。額縁に仕込まれていたシュレッダーが起動し、「風船を持った少女」の下半分が裁断された。サザビーズは落札者の名前を明かしていないが、今後について話し合いをしている段階だという。

バンクシーは自身のInstagramに「破壊の衝動は、創造的でもある」というピカソの言葉と共に、オークション会場で撮影された動画を投稿。「オークションで競売にかけられることに備えて、作品の中に数年前、シュレッダーを潜ませていた」と明かした。

バンクシーは、オークションに否定的なことで知られている。バンクシーの壁画がオークションにかけられることも多いが、「ストリートアートは最初の場所で販売用に描かれてない限り、誰も売り買いしないように忠告したい」とニューヨークタイムズに話していた

今回のパフォーマンスも、高値で美術品を取引するオークションに対するバンクシー流の挑発だったと見られる。

■逆に価値が上昇する可能性も

しかし、皮肉なことに「風船を持った少女」は、シュレッダーで裁断されたことで逆に価値が上昇した可能性がある。

MyArtBroker.comの共同設立者であるジョーイ・セイヤーさんはイブニング・スタンダード紙に対して「今回の騒動がメディアの注目を浴びたことで、この絵画は少なくとも50%以上は価値が上がり、おそらく200万ポンド(約2億9800万円)の価値があるでしょう」と話している。

サザビーズの運営側が、本当に額縁のシュレッダーに気付いていなかったかどうかは不明だ。サザビーズの欧州委員長で競売人のオリバー・ベーカーさんは「これは素晴らしいバンクシーの瞬間だ。誰が埋め合わせできるだろうか」と話している