(株)東京商工リサーチは5日、2017年に老人福祉・介護事業の倒産が111件あったとするレポート(速報値)を発表した。00年の介護保険法施行以来、過去最多となった。介護職員不足が深刻化していることなどから事業者の淘汰の動きが進んでいると分析している。
倒産を経営主体別にみると株式会社が77件、有限会社と合同会社が各11件、NPO法人が8件、社会福祉法人が2件など。業種別では訪問介護と通所・短期入所介護が各44件で最多だった。
負債総額は16年比60%増の150億1100万円に上り、8年ぶりに100億円を超えた。負債10億円以上の大型倒産が5件あったことが影響した。
倒産の原因で最も多かったのは「販売不振」の51件だが、16年の69件に比べると26%減った。一方「事業上の失敗」は26件で、16年の18件から44%増えた。
このことからレポートでは、安易な起業や本業不振による異業種からの参入で事前の計画が甘く、経営に行き詰まったケースが多いとみている。
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社会福祉法人で倒産したのは千葉県佐倉市の眞榮会と、大阪府堺市の美亘会。
東京商工リサーチなどによれば、眞榮会は昨年8月に千葉地裁に民事再生法の適用を申請した。
眞榮会は13年3月に設立され、地域密着型特養、小規模多機能型居宅介護を運営し、16年には介護付き有料老人ホームを開設した。しかし施設開設で多額の借入金を抱え、先行投資に見合った事業収入を得られなかった。負債総額は約24億円に上る。
現在、有料老人ホームの営業は停止し、利用者は地域密着型特養か他法人の施設に移るなどした。他県にある営利法人のグループの社会福祉法人に事業譲渡することを含め、再生手続きに向けて準備している。
美亘会は昨年6月に大阪地裁から民事再生開始決定を受けた。負債総額は約8000万円。
美亘会は1997年12月に設立され、通所介護や訪問介護などを運営。2012年3月期には約1億3000万円の事業収入があったが、同業他社との競合激化に加え、人件費などが負担となり、赤字経営が続いていた。
昨年9月から堺市内の社会福祉法人風の馬(馬場武彦理事長)が事業を引き継いで運営している。
(2018年1月22日福祉新聞より転載)
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